【東京モーターショー2017】マツダはエンジン技術と“美”で勝負
2017.10.26 自動車ニュース 拡大 |
東京モーターショーに、「魁(カイ)コンセプト」と「ビジョン クーペ」という2台のコンセプトモデルを出展したマツダ。自動車の電動化や自動運転技術をアピールする他メーカーとは一線を画し、エンジン技術の追求とクルマの“美しさ”で勝負するその姿勢に、同社の気概と心意気を感じた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
シックなブースのイメージに見る意気込み
他の国内メーカーが比較的明るいイメージでブースを構築しているのに対し、マツダはブース全体を黒で統一。照明もどちらかといえば落とし気味であった。なにもこれは今回の東京モーターショーに限ったことではなく、この9月にドイツで開催されたIAA2017(フランクフルトモーターショー)でもブースは同じイメージでデザインされていた。そこから感じられるのは、日本の量産メーカーとしてグローバル展開を行うマツダではあるが、「走る楽しみ」を前面に出しながら未来に向けて徐々にプレミアムなイメージも浸透させたいという意気込みである。
現在のマツダは、魂動デザインと同時にSKYACTIV技術を採用した新世代のラインナップが出そろい、2012年から推進しているブランド再建の第1フェーズを終えた。上述の意気込みについては、プレスカンファレンスにおける小飼雅道社長兼CEOのコメントを借りれば、マツダが「構造改革の第2ステージとして“開発から販売までの質的成長”と“ブランド価値向上”に取り組んでいる」という段階に入ったことも大いに関係しているはずだ。
EVやAIではなく、理想の内燃機関で未来を切り開く
このプレスカンファレンスにおいてマツダは、クルマの電化も重要視しながら、今ある技術の進化――つまり内燃機関の技術革新を同時に行い、適材適所で対応するパワートレインの「マルチソリューション」を提案した。その具体例が、ガソリンエンジンで世界一を目指した「SKYACTIV-X」の開発だ。
小飼社長兼CEOはこのSKYACTIV-Xを「夢のエンジンだ」と紹介。「マツダ独自の燃焼方式、SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition=火花点火制御圧縮着火)によって、ガソリンの希薄混合気を広い走行範囲で圧縮着火させる技術の実現化に、世界で初めてめどを付けた。ガソリンエンジンの高回転域までの伸びのよさと、ディーゼルエンジンの優れた燃費、トルク、レスポンスといった双方の利点を兼ね備え、優れた環境性能と出力、動力性能を両立している」と、その実用化が近いことをうかがわせた。
他の国内メーカーがEVをはじめとしたクルマの電化や、AIによる自動運転を前面に押し出してきたのとはいささか対照的で、内燃機関の可能性をまだまだ諦めないという、過去ロータリーエンジンを唯一量産化した技術屋としての魂や矜持(きょうじ)を垣間見たような気がしたのは私だけではないだろう。現在の技術を培ってきたノウハウや英知で、次世代のパワートレインを作り上げるという気概の背景には、マツダの提唱する「クルマによってもたらされる『走る歓び』や『人生の輝き』」というテーマが垣間見られる。
2台のコンセプトカーが放つマツダの気概
いっぽう、今回のショーで初公開された次世代商品群の先駆けとなるコンパクトハッチ、魁コンセプトと、デザインコンセプトとなるビジョン クーペは、そうしたマツダの哲学や改革の第2ステージを象徴する具体例だ。
小飼社長兼CEOはこれらの出展車両について、「魂動デザイン哲学をベースに、より自然な生命感を感じさせるエレガントで上質なスタイルに深化させた。無駄な要素を極力そぎ落としたところに美しさを見いだす、日本独自の美意識をクルマのデザインに表現している」とビジョン クーペを、「次世代ガソリンエンジンのSKYACTIV-Xと、人間中心の思想を突き詰め、各機能を最適化した次世代SKYACTIV-Vehicle Architectureに加え、深化した魂動デザインを搭載したコンパクト ハッチバック」と魁コンセプトを紹介。両モデルのアンベールを行った。
魁コンセプトは、SKYACTIV-Xをパワーユニットに採用した、次世代「アクセラ」のプレビューとみるのが妥当だろう。前後のオーバーハングを切り詰め、塊から削り出したようなフォルムは、これまで以上にスポーティーな走りを期待させる。いっぽうのビジョン クーペは、魁コンセプトが量産車の予告編だとすれば、こちらはその次の世代のデザインテーマを表現したスタディーで、前回2015年の東京モーターショーで登場した「RXビジョン」の進化版と捉えるべきだろう。
フロントミドシップを思わせる後退した4ドアのキャビンが、エレガントなクーペスタイルを形作る。EVやAIで未来を表現し期待感をもたらす他のメーカーとは真逆ともいえる、デザインだけでワクワクさせるアプローチには、会場に足を運ぶ「走る歓び」をクルマに求めるファンに、「マツダはどこか違う」と必ず感じさせるはずだ。
(文=櫻井健一/写真=webCG)

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
-
アルファ・ロメオの「ジュリア」「ステルヴィオ」にアクティブサス付きの限定車「インテンサ」登場NEW 2025.11.26 ステランティス ジャパンは2025年11月26日、アルファ・ロメオの「ジュリア」と「ステルヴィオ」に特別仕様車「INTENSA(インテンサ)」をそれぞれ設定し、前者が73台、後者が12台の台数限定で発売した。
-
ヒョンデが高性能EV「アイオニック5 N」の改良モデルを発売NEW 2025.11.26 ヒョンデモビリティジャパンは2025年11月26日、運転する楽しさをさらに追求すべく一部改良を施した、ハイパフォーマンスEV「アイオニック5 N」の最新型を発表。同日、販売を開始した。
-
【F1 2025】第22戦ラスベガスGPでフェルスタッペン今季6勝目、マクラーレン2台とも失格でタイトル争いは混迷のラスト2戦へ 2025.11.23 F1世界選手権第22戦ラスベガスGP決勝が、2025年11月22日(現地時間)、アメリカはネバダ州のラスベガス・ストリップ・サーキット(6.201km)を50周して行われた。レースの結果とポイントランキングを報告する。
-
ロールス・ロイスが“8ビット アーケードゲームの世界”を投影したワンオフモデル「ブラックバッジ ゴースト ゲーマー」を発表 2025.11.21 ロールス・ロイス・モーター・カーズは2025年11月19日(現地時間)、ビンテージビデオゲームの“8ビットの世界”を投影したビスポークモデル「ロールス・ロイス・ブラックバッジ ゴースト ゲーマー」を発表した。
-
ポルシェジャパンがBEV「カイエン エレクトリック」と「カイエン ターボ エレクトリック」を導入 2025.11.20 ポルシェジャパンは2025年11月20日、電気自動車の新型「カイエン」を国内に導入すると発表し、同日、予約注文受け付けを開始した。エントリーモデル「カイエン エレクトリック」と高性能モデル「カイエン ターボ エレクトリック」が販売される。
-
NEW
ロイヤルエンフィールド・ハンター350(5MT)【レビュー】
2025.11.25試乗記インドの巨人、ロイヤルエンフィールドの中型ロードスポーツ「ハンター350」に試乗。足まわりにドライブトレイン、インターフェイス類……と、各所に改良が加えられた王道のネイキッドは、ベーシックでありながら上質さも感じさせる一台に進化を遂げていた。 -
NEW
ステアリングホイールの仕様は、何を根拠に決めている?
2025.11.25あの多田哲哉のクルマQ&A「どれも同じ」というなかれ、メーカー・ブランドによりさまざまな個性が見られるステアリングホイールの仕様は、どのような点を考慮して決められているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
ホンダ・ヴェゼル【開発者インタビュー】
2025.11.24試乗記「ホンダ・ヴェゼル」に「URBAN SPORT VEZEL(アーバン スポーツ ヴェゼル)」をグランドコンセプトとするスポーティーな新グレード「RS」が追加設定された。これまでのモデルとの違いはどこにあるのか。開発担当者に、RSならではのこだわりや改良のポイントを聞いた。 -
2025年の一押しはコレ! 清水草一の私的カー・オブ・ザ・イヤー
2025.11.24デイリーコラムこの一年間で発売されたクルマのなかで、われわれが本当に買うべきはどれなのか? 「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」の正式発表に先駆けて、清水草一が私的ベストバイを報告する! -
アルファ・ロメオ・ジュニア(後編)
2025.11.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「アルファ・ロメオ・ジュニア」に試乗。前編では内外装のデザインを高く評価した山野だが、気になる走りのジャッジはどうか。ハイブリッドパワートレインやハンドリング性能について詳しく聞いてみた。 -
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.11.22試乗記初代モデルの登場からわずか2年半でフルモデルチェンジした「三菱デリカミニ」。見た目はキープコンセプトながら、内外装の質感と快適性の向上、最新の安全装備やさまざまな路面に対応するドライブモードの採用がトピックだ。果たしてその仕上がりやいかに。










































