販売台数は日本の5.6倍!
世界最大の規模を誇る中国市場の今
2017.11.06
デイリーコラム
アジアの自動車産業界の中心は、日本から中国へ
世界最大の自動車市場は、中国だ。
世界自動車工業連合会の発表データによると、2016年の国別販売台数では、中国が2802万8175台で第1位。そこから1000万台以上引き離されて、アメリカ合衆国が1786万5773台で続く。さらにそこから大きく差があり、日本が497万0260台で第3位にいる。
中国市場は日本市場の5.6倍という巨大な存在であり、今後についても中国の着実な経済成長と日本の少子高齢化を鑑みるに、両市場の差がさらに広がることは間違いない。
その中国だが、自動車メーカーの数は中小を含めると数百社あるといわれている。ただし、上海、北京、広州などといった中国国内の大手モーターショーに出展しているものは、商用車メーカーを含めて30社程度だ。その中で、大手メーカーは、第一汽車、東風汽車、上海汽車、広州汽車、北京汽車、長安汽車などで、それぞれが海外の自動車メーカーとの合弁企業を持っている。
そもそも海外メーカーが中国国内で自動車を製造・販売する場合、中国の地場メーカーとの合弁企業を介する必要がある。例えば、トヨタは一汽トヨタと広汽トヨタ、ホンダは東風ホンダと広汽ホンダなど、複数の中国地場メーカーとの合弁を組む。
そしてこの合弁について、中国では法律によって、海外メーカーの持ち株率は最大で50%と規定されている。経営判断は海外メーカー側と中国側の総意によってのみ行われるため、事実上、中国側に有利な仕組みとなっているのだ。そこで海外の自動車メーカーは、経営リスクを考慮して複数の中国地場メーカーと連携しているのである。
それとは逆の発想のもと、東風日産として中国側1社だけと連携しているのが日産である。中国側への“誠意”を示すことで、東風汽車の中国政府に対する影響力を全面的に享受しているのだ。
中堅メーカーは海外展開に積極的
中国地場の大手が中国国内での地盤を固める一方、中堅メーカーたちは海外での事業展開に積極的に取り組んでいる。中堅メーカーは中国国内では大手と真っ向勝負できないため、海外へ目を向けざるを得ないのだ。
その中でも目立つ存在なのが、吉利汽車だ。1987年に冷蔵庫メーカーとして出発し、二輪車製造を経て1997年に自動車の製造販売を開始。その13年後の2010年には、スウェーデンのボルボを買収するという驚きの行動に出た。当時、リーマンショックの影響で業績が急激に悪化していたフォードは、高級車プランドを取りまとめていたPAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)の各ブランドをバラ売りすることで、フォードの家計の穴埋めを図っていた。ジャガーとランドローバーはインドのタタに、アストンマーティンがクウェートの投資ファンドに、そしてボルボが吉利汽車の手に渡ったのだ。
買収から7年がたった2017年の今も、吉利汽車はボルボに対して投資家としての立ち位置を明確とし、その商品戦略やデザイン戦略に対して大きく口出しをすることはないという。吉利汽車が自らの立場をわきまえることで、ボルボという商品に“中国色”が見え隠れすることを防いでいるといえる。
また、吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団は2017年5月、マレーシアの国民車メーカーであるプロトンの株式の49.9%を取得したと発表。これとあわせ、プロトンが所有する英国ロータスの株式の51%も手に入れ、実質的な経営権を手に入れたことを明らかにした。
さらに、世界の自動車産業界に衝撃をもたらしたのが、中国でのSUVブームに乗って人気急上昇中の中堅地場メーカー、長城汽車が、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)を買収、またはFCAが所有するブランドを買収するのではといううわさについてだ。本稿の執筆時点ではこのうわさの真相は不明だが、「火のない所に煙は立たない」と筆者は見ている。
NEV法の実施で存在感はさらに増す
こうして、大手と中堅のそれぞれが別々のやり方で自動車業界への影響力を拡大している中国自動車メーカーだが、足元ではさらに大きな話題がある。それが、2018年に施行され、2019年から実施されるNEV(新エネルギー車)に対する法律だ。
これは、米カリフォルニア州のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)法に準じて中国政府が設けたもので、自動車メーカーは電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車、そして燃料電池車の販売台数の義務を負う。昨今における世界的なEVブームの要因のひとつが、このNEV法なのだ。
ここまで紹介してきたように、国策として積極的に成長戦略がとられている中国の自動車市場。日系メーカーにとっても、日本市場が今後急速に収縮する可能性が高い中、さまざまな中国市場対策を打つことが必須となってきている。
(文=桃田健史/写真=桃田健史/編集=堀田剛資)

桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。
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