復活したホンダのビッグネーム
新型「シビック」に注目せよ!
2017.11.24
デイリーコラム
これ抜きにホンダは語れない
久々の日本市場投入となる、新型シビックの試乗会に参加した。待合スペースにある大きなモニターには、新型シビックのプロモーション用の動画が流されていた。ぼんやりと眺めていると、おや? そこに出演しているのは、ロックバンド「ONE OK ROCK」のメンバーではないか。おやおや、アニメーターの庵野秀明まで出ている……と驚いた。若い世代にカリスマ的な人気を誇る大物2組の起用に、新型シビックにかけるホンダの本気度がうかがえた。気になる方は『YouTube』のホンダのオフィシャルチャンネルを。「Go, Vantage Point.」のタイトルで公開されている。
試乗の後には、新型シビックの開発メンバーと懇談する機会を得た。そこで感じたのは、スタッフ自身のシビックに対する強い思いだ。「シビックが売れなくなると、ホンダは本当にまずいことになる」「シビックは保守的になったのではないかとよく聞かれる」「危機感がある」「チャレンジしなくてはならない」という言葉を何度も耳にした。2010年に販売が終了していることを知る国内ユーザーの目線からすれば、「もう終わったクルマに、何をいまさら?」という感もなきにしもあらず。
しかし、ホンダの側からすれば、シビックは今もバリバリの最重要車種なのだ。シビックは日本での販売が終了した後も世界170カ国以上で販売されているのであり、2016年にホンダが達成した「世界生産累計1億台」のうち4分の1がシビックだったのだ。
実際に海外のモーターショー取材をすると、どこでもシビックは主役の扱い。今はまだ世界で売れているシビックだが、万が一かつての日本国内のように衰退するならば、ホンダは死活問題に直結するほどのダメージを受けることになるだろう。それだけに、ホンダにとってシビックにかける熱量はいやがうえにも大きくなる。また、ホンダの主力モデルであるシビックを知ることは、そのまま今のホンダを知る大きな手掛かりとなる。逆に、シビック抜きでは、ホンダの真の姿を見失ってしまうはずだ。
若い世代にも支持されている
開発責任者は、「シビックのDNAは、“キビキビした気持ちよい走り”と“かっこいいデザイン”。そして、この新型が目指すのはCセグメントトップクラスの“操る喜び”です」と説明する。デザイナーは「シビックはもっと自由でヤンチャであるべき」だという。
Cセグメントのトップとは、目標としてはそうとう大きく出たものだが、確かに軽快で俊足な走りを楽しめた。また、デザインは(筆者の好みではないけれど)確かに若々しい。日本国内では発売から2カ月半で1万2000台以上の受注を獲得していて、そのうち3割ほどが20~30代だという。しっかりと若者世代に認められているのだ。ちなみに、20代のホンダのスタッフによれば、「若い世代にとってシビックは、売っていなかったので知らないクルマ。新型をまったくのブランニューカーとして見る人もいる」というのだから驚く。ハッチバックモデルの受注台数のうち、MT車が35%を占めるというのも印象的だ。
若々しいデザインと軽快な走りのシビック。これにスーパースポーツの「NSX」や、「CR-V」「リッジライン」といったSUVが加わる。それがグローバルでいうホンダの姿に近いのだろう。日本市場とは、大きな違いがある。しかし、むしろ日本が特殊なのだ。主力車種であるシビックが存在せず、軽自動車やミニバンといったユーティリティーカーばかり。肝心のシビックも、「絶版となってしまった、ちょっと前の地味で格好悪いセダン」のイメージが根強い。これでは、ホンダの真の姿をイメージできないのも当然だ。
しかし、晴れて新型シビックが国内に投入された。この新型シビックに触れれば、ホンダのいまが見えてくることだろう。走らせてみれば、きっと目からうろこが落ちるように感じるはずだ。
(文=鈴木ケンイチ/写真=鈴木ケンイチ、本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)
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鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
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