ハーレーダビッドソン・ファットボブ(MR/6MT)
週末のアウトロー 2017.12.15 試乗記 スポーティーな走りがウリの体育会系モデルが、伝統を重んじる文化系の一族に養子入り!? ハーレーの新しいラインナップ戦略にのっとり、新たにソフテイルファミリーの一員となった「ハーレーダビッドソン・ファットボブ」の出来栄えをリポートする。世界一律義な不良?
ハーレーダビッドソンといえばいまだにアウトロー的イメージが拭えないかもしれないが、個人的にはメーカーまたはブランドとしての生真面目さに頭が下がる思いでいっぱいだ。
何しろ毎年夏の終わりごろになるときっちり翌年(2017年なら2018年)モデルをリリースする。そのイヤーモデルも、時にはエンジンの刷新といった大きなトピックを披露したり、あるいは前年型と中身がほぼ同じモデルでもカラーリングやグラフィックを変える小技を用意したりと、ファンを飽きさせさない企業努力はほとんどエンターテインメントの領域だ。その上で、大排気量2気筒エンジン/ロングホイールベース/ロー&ワイドシルエットという伝統的なスタイルを保つなんて、この世界にここまで律義な不良がどこにいるんだ! と叫びたくなる。最近の女子高生じゃないが、ハーレー、マジ卍(まんじ)ですよ。
そんな地上最大級のリスペクトを胸に紹介する最新のファットボブは、まさにハーレーのエンターテインメント力を象徴する一台と言っていい。とにかくハーレーのデザイン力は大したものだ。ここまで違和感なくLEDを仕込ませたヘッドライトは他に類を見ないし、ボディー右サイドにはうマフラーのくねり方も、「こういうのお好きですよね?」と訴えかけてくる姿態そのもの。そうした演出を理解できないやからはオートバイを降りたほうがいいぞ、マジ卍……。
新しい家族に“養子入り”したものの……
直感的なカッコよさを言葉に代えるなんて野暮(やぼ)だと思うのだけど、ここで説明をやめたら編集部出禁になるので情報を加えます。
2018年モデルのファットボブ、実は大変身です。まずハーレーのラインナップには“ファミリー”という区分があり、昨年までのファットボブは“ダイナ”に属していた。そのダイナファミリーが2017モデルで消滅。ファットボブは“ソフテイル”という新しい家族に引き取られることになった。
ダイナとソフテイル。その違いの代表例はフレーム。ビッグツイン×スポーティーをコンセプトにしたダイナは、一般的なオートバイと同じようにリアショックが外から見える形だった。対してソフテイルは、リアショックをエンジンの下に配置し、かつてのショックなしリジッドフレームをほうふつとさせてきた。それゆえソフテイルファミリーはクラシカルなシルエットが家風だった。
そんな文化系の家で過ごすことになったダイナは、ひとまずソフテイル流儀に従ってみたが、やはり体育会系のヤンチャな血筋は隠し通せなかった。フロントまわりに倒立式フォークと4ピストンのデュアルディスクブレーキ。リアまわりに至ってはショックこそフレーム内に収めたものの、プリロード5段階調整可能なアジャスターを「いくらでも触りな」と言わんばかりにシート下に露出してみせたからソフテイル家は大慌て。
「けどさ、フレーム自体の剛性を34%も高めた上に約16kgも軽くする大改良をソフテイルさん自身がやったわけじゃん。エンジンにしたってデカいのくれただろ? それってオレに自由に暴れていいっていう意味じゃないのか?」と、語気も荒めにファットボブが言ったとか言わないとか。そして、「でも、本当はいい子なんです。それに、私たち家族にも新しい風が必要な時期でした。なぁ母さん」とソフテイルファミリーの家長が言ったとか言わないとか……。
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少々ヤンチャですが、いい子です
え~と、ソフテイル自らフレームを改めたのも、デカいエンジンをあたえたのも事実です。2018年モデルのソフテイルファミリーは、2017年に登場した「ミルウォーキーエイト」と呼ばれるエンジンを採用。この9世代目のビッグツインには「107」と「114」の2種類あるが、なんとファットボブはどちらも選べる。ちなみに107/114はキュービックインチの排気量で、なじみ深い単位に換算すると1745cc/1868ccになる。ダイナファミリー時代のファットボブはツインカム103エンジンで1690ccだったから、そりゃもう家長さん、甘やかしすぎですわ……。
というような家族愛憎劇的表現はもうやめます。そんなわけでファットボブのビッグツイン×スポーティーコンセプトはソフテイルに属そうとも変わらず、というか外見も中身もより個性を増した。それがこのモデルの最もカッコいいところ。
今回試乗したのは107だが、だいたいにおいて1745ccの二輪のスロットルを開けるなんて神スイングのインパクトだ。後頭部を持っていかれるくらいドカンと出る。これが114ならと考えたら、それ相応の自制心が必要になってくるだろう。
フレームや足まわりを一新した乗り心地だが、これは前年モデルと直接対決させないと発展度合いは正しくわからない。ただ、スムーズさは強く感じる。これほどの大柄かつ大排気量モデルながら街乗りでわずらわしさを感じないところは、115周年を迎えたハーレーの進化そのものといえるだろう。
相変わらずの威風堂々たる風格と、場所によっては攻めの姿勢を楽しめるファットボブは、理想的な週末アウトローだ。そのキモは、ハーレーの意外性でもある律義さ。ウイークデーはパリッとしたスーツでしっかり働き、ウイークエンドは体になじんだ革ジャンをまとう。そんな切り替えができる方にぜひ。少々ヤンチャですが、いい子です。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2340×--×--mm
ホイールベース:1615mm
シート高:710mm
重量:306kg
エンジン:1745cc 空冷4ストロークV型2気筒 OHV 4バルブ
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:155Nm(15.8kgm)/3000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:218万8000円

田村 十七男
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