第3回:「XT5クロスオーバー」の走りに宿る
プレミアムブランドとしての矜持
2018.01.11
キャデラックXT5クロスオーバー解体新書<PR>
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キャデラックが誇る最新SUVの魅力を、全4回に分けて紹介する「キャデラックXT5クロスオーバー解体新書」。今回はシチュエーションを問わない快適性とドライバビリティーを通し、広大なアメリカの大地が鍛えたプレミアムSUVの地力をリポートする。
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とにもかくにもストレスを感じない
ガチガチのSUVスタイルではなく、どちらかといえばクーペライクなデザインを持つ「XT5クロスオーバー」(以下XT5)。その雰囲気は都会的かついかにも“走りそう”なもので、シンプルにスポーティーと言い換えてもいい。同時に、全米に張り巡らされたフリーウェイによって鍛えられたその走りは、長距離移動も大いに想定したものとなっている。直進性が良く、ストレスのない快適なドライブが信条なのだ。
総排気量3649ccのV6エンジンは、最高出力314ps、最大トルク368Nmと、取り立てて数値をアピールするものではない。しかし、アクセルへの反応や、そのアクセルを踏み込んだ際のトルクの出方はドライバーの意思に忠実で、ジワリとした……例えば高速コーナーをクリアする際にクリッピングポイントで右足に少し力を加えるような操作にも、パワープラント全体がその通りに反応する。4輪が路面をしっかりつかみながら軽いロールを伴って回るそのソリッドな感覚には、安心感と同時に美しさすら覚える。この動きをもって、ドライバーは間違いなく「スポーティーだ」と感じることになる。
しかし、真骨頂はやはり長い直線が続く高速道路だ。XT5では、フロントサスペンションにマクファーソンストラット、リアサスペンションにマルチリンクを採用。上級グレードの「プラチナム」には、路面状況に応じて減衰力を自動調整するリアルタイムダンピングシステムが搭載されている。その足まわりはしなやかで、高速道路の継ぎ目や段差を乗り越えた際にはピタリとボディーの揺れを収める。
高速走行でのロードノイズや風切り音もしっかりと抑え込まれており、そんな状態で窓の外を流れ飛ぶ景色を眺めていれば、このクルマがクロスオーバーSUVの形をしたラグジュアリーモデルであることを実感させられる。今回の試乗車には、ノーマルタイヤに比べて一般的にノイズや乗り心地の面で不利とされるスタッドレスタイヤが装着されていたが、それでもロングドライブでストレスをほとんど感じなかったのは、ノイズや振動、専門的にいえばNVH(ノイズ/バイブレーション/ハーシュネス)への対応がしっかりとなされていたからだろう。
乗ればキャデラックであることを実感する
さらに今回のロングドライブでは、SUVとしての出来栄えを試すべく雪道にも挑んだ。今シーズンは例年より雪の降り始めが早く、降雪地の方々はへきえきしていることだろう。しかし、XT5はそうした悪条件下でも遺憾なく力を発揮。前後軸間に加えてリアの左右輪間でもトルクを適切に配分するフルタイム4WDシステムは、滑りやすい路面でも安心感のある走りを実現する。さらには、単に走りが安定しているというだけではなく、凸凹の多い踏み固められた圧雪路でさえ快適性を損なわないのがXT5の美点。乾燥路面から雪道まで、シチュエーションを問わない懐の深さにこそ、このクルマがキャデラックであり、世界有数のラグジュアリーブランドの作であることが表れている。
ワインディングロードでの身のこなしも見どころで、XT5は気持ちよく、そしてドライバーの操作に対してリニアな反応を示す。しかし同時に、それはスポーツカーのようにリニアリティーを追求したものではない。もちろん、ステアリング操作にボディーやアシがシンクロする感覚は十分にスポーティーと表現できるものだが、そうした運転の楽しさを持ち合わせながらも、極上ともいえる快適性を「イイ感じ」でバランスさせているのだ。多少なりともクルマを知っている方であれば、このキャデラック風味満点の味付けを、手応えのしっかりしたステアリングを握った瞬間に理解できるはずだ。
誤解を恐れずにいえば、XT5のドライブフィールはメルセデス・ベンツ(AMG以外)とBMW(M以外)の中間で、少しBMW寄りというのが個人的な印象だ。タッチは重厚だが軽快感があり、反応はスポーティーだが必要以上にナーバスではない。分かりやすいであろうとつい欧州ブランドを例に出してしまったが、そうした定番にしか興味のない方々にもぜひ今のキャデラックを知ってほしい。このブランドはなかなかに先進的で、デザインや質感、走りにおいてもライバルに決してひけを取らないのだ。
(文=櫻井健一/写真=荒川正幸)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。