実はこんなに面白い!
日本勢も活躍する「ダカールラリー」の“今”を語る
2018.01.31
デイリーコラム
いまやゴールはダカールではない?
世界最大のクロスカントリー競技である「ダカールラリー(Dakar Rally)」。いまや、このネーミングと実体とは、大きく乖離(かいり)している。
ルーツは1979年にパリをスタートし、西アフリカのダカールを目指していた「パリ-ダカールラリー」、通称“パリダカ”である。当時は「三菱パジェロ」の活躍もあって日本での認知度は高かった。バブル景気の後押しもあって、テレビ番組やコマーシャルで多く取り上げられ、日本国内では4WDのSUVが爆発的に売れた。イベント効果と販売がシンクロし、パリダカの名前は一気に浸透した。
本来はアマチュア主体の冒険的な意味合いが強かったイベントだが、知名度が上がり自動車メーカーがワークス参戦し始めると、その様相は様変わりする。同時に、アフリカ諸国に潜む局所的な混乱因子(テロや犯罪組織)がその知名度を利用しようとして加わり、大会は大混乱に陥った。誘拐、爆破、死亡事故などなど、事態はもはやモータースポーツの範疇(はんちゅう)を限りなく超えたものとなってしまった。
それに対処するために、主催者は一度だけ中止になった2008年大会を境に、開催地を新たに南米大陸に求めた。この時から「パリダカ」は「ダカールラリー」となった。しかしその行きつく先に、いま「ダカール」はない。また「ラリー」と称しているが、正確にはダカールラリーは「クロスカントリーレイド」というカテゴリーに属する。道だけを走るラリーと、ありとあらゆる場所を走り抜けるレイドとは、競技形態も違う。
とはいえ、「ダカールラリー」というネーミングが、かつての冒険へのオマージュとしてとても大切にされているのがわかるだろう。
有終の美を飾ったプジョーのしたたかさ
2018年大会に目を向けてみると、四輪のトップカテゴリーマシンはここ10年で大きく変化してきているのがわかる。いまや最速を誇るのは、まるでバギーのような後輪駆動シャシーにディーゼルエンジンを搭載した、プジョーのスペシャルマシンなのである。
2WD車は重量的に有利なうえ、4WD車より大きなタイヤを装着できる。戦略にたけ、レギュレーションに精通したプジョーの面目躍如である。4WDとの差を足し算引き算しながら導き出した速さの答えが「3008DKR Maxi」なのだ。常識的に考えれば、砂の中を走るのには4WDが有利なはずだが、それを覆すだけのマシンが生み出されるのだから“車両規則”というマジックは面白い。
これが最後のダカール挑戦となるプジョーに、今回、唯一肉薄したのが「トヨタ・ハイラックス」である。エンジンをミドシップ搭載した4WDマシンは南アフリカで製作されたもので、こちらは純ワークス体制ではない。これに対し、フルワークスのプジョーは4台のマシンに“パリダカマスター”のステファン・ペテランセル、同じくダカールラリー優勝経験者のシリル・デプレ、WRC(世界ラリー選手権)チャンピオンのセバスチャン・ローブとカルロス・サインツを乗せるという、隙のない体制だった。
また、このイベントの特殊なところはチーム同士で修理を手伝ったりパーツの貸し借りをしたりでき、日程後半になるとチームワークで1台をサポートできる点にある。そのあたりもプジョーは万全で、2位と健闘したトヨタは3台体制と1台少ないだけだったものの、「時として1台が速く走りペースを乱す」といった陽動作戦の融通性を含め、不利は否めなかった。この結果、2018年のダカールラリーはWRC王者のサインツが優勝、プジョーの3連覇という結果に終わった。
ただ、ダカールではWRCで認められているレッキ(事前走行)が無いだけに、目視による全開走行には常に危険が伴う。経験に即した予知と抑えた走りが求められるため、“速すぎる”WRCチャンピオンたちにはなかなか栄冠は訪れない傾向があるのだ。今回の勝者であるサインツにしても、11回出場してこれが2度目の優勝。実に8年ぶりの勝利だった。
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精力的な挑戦を続ける日本勢
市販車無改造部門では「トヨタ・ランドクルーザー」がほぼ無敵を誇っており、24回目のダカールラリーでは日本人ドライバーの三浦 昴組が優勝した。レーシングトラックともいえるカミオン部門には日野自動車が精力的に参戦していて、27回目の参戦でも手堅くクラス優勝を遂げている。巨大なトラックがジャンプしながら爆走するシーンはこのイベントならではの迫力だ。
コドライバーのコース案内がある四輪と違い、たった1人で9000km先のゴールを目指す二輪ライダーはまさに鉄人。想像を絶する世界である。そんな二輪部門にも、80年代、90年代には日本からヤマハやホンダが積極的に参戦していた。
その後、長いブランクを経てホンダが再び挑戦を開始。2018年は復帰してから6年目にあたり、パワー、耐久性、メンテナンス性を重視した「CRF450RALLY」で砂漠に挑んだ。王者はオーストリアのKTM。ここ最近で16連勝を誇り、そこへ立ち向かうホンダはまさに挑戦者である。両者の戦いは、ホンダがあと少しのところまで王者を追い詰めたものの、ミスコースが響き、結局はKTMが17度目のシャンパンファイトに酔いしれた。
やや日本では影が薄くなりつつあるダカールラリーではあるが、ステージのシチュエーションはダイナミックで、ロングディスタンスのイベントだけに多くのドラマがステージごとに生まれている。この正月のビッグイベントは、もう少しテレビカバレージがあってもいいと、個人的には思うのである。
(文=三好秀昌/編集=堀田剛資)

三好 秀昌
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