未来の交通手段の実証実験が始まった!
日産とDeNAが協業する「イージーライド」って何だ?
2018.03.12
デイリーコラム
横浜・みなとみらい地区で実証実験を開始
日産自動車とDeNAは2018年2月28日、日産のグローバル本社(神奈川県横浜市)で新しいモビリティーサービス事業「Easy Ride(イージーライド)」の共同記者発表を行った。
イージーライドは、日産が開発中の完全自動運転の技術を、DeNAが開発するモビリティーサービス事業と連動させるものだ。
ここでいうモビリティーサービス事業とは、郊外型住宅在住で免許を返納した高齢者やインバウンドの外国人観光客、そして電車の駅やバス停と自宅との間を結ぶ、短距離移動のラストワンマイルなどに向けた交通のことで、さまざまな可能性を秘めている。
第1段階の実証試験では、3月に横浜・みなとみらい地区の約4.5kmのルートで先代「日産リーフ」をベースとした完全自動運転車を運行させる。
では、イージーライドとは具体的にどのようなサービスなのか。
今回、日産の協力を得て、実際に体験することができた。まずは日産のグローバル本社前で、専用のスマホアプリを立ち上げる。すると、最初の画面に「何しに行く?」と表示が出た。「ハンバーガーを食べたい」と音声入力すると、みなとみらい地区で人気のハワイアン・ハンバーガーショップを検出し、そこまでのルートや所要時間が検出された。
次に、車両に迎えにきてもらう時間を設定して準備完了。しばらくすると、目の前に先代リーフがやってきた。スマホのアプリでドアロックを開錠して後席に座る。後席の中央にはタブレットがあり、走行中に周辺の観光情報が提示され、イージーライド限定の各種クーポンをスマホにダウンロードできる。そうこうしていると、目的地に設定したハンバーガーショップの最寄り施設であるワールドポーターズに到着した。
完全自動運転はもう完成している?
今回の走行ルートは約2km。交差点で右折するシーンなどがあったが、自動運転は的確に作動した。なお、警察庁による公道での自動運転の実験ガイドラインに従って、運転席には日産のエンジニアが待機し、万が一の場合に備えていた。
イージーライドで使用する日産リーフをベースとした車両は、画像を認識するための単眼カメラやアラウンドビューモニター、自車の周囲の状況を3D画像で表示するレーザーレーダー(通称:ライダー)、そして赤外線センサーなどさまざまなセンサーを装備する。
自車の位置はGPSで確認して、産学官が連携して開発している高精度3次元地図「ダイナミックマップ」と照らし合わせることで位置の精度を上げている。さらに、イスラエルの画像認識ソフトウエア開発企業のモービルアイ(米インテルによって買収された)が開発した、自車カメラで撮影した映像を基に地図を作製する技術も活用している。
記者会見で流されたビデオでは、商用車の「NV」を使ったイージーライドも紹介されており、日産関係者によると「今後、リーフ以外にNVの導入も考慮中」という。
実際に体験してみて、イージーライドは消費者にとって、とてもありがたいサービスだと感じた。しかし一方では、「事業者はどうやってもうけるのか?」という疑問を持った。その点についてDeNAは、大きく2つのケースを示した。ひとつは、車両を日産からDeNAが買い上げて、自社がモビリティーサービスプロバイダーとして各種サービスを連携させて収益性を高めるケース。もうひとつは、日産が第三者に車両を販売した後、システムの運営者としてDeNAが関わるケースだという。
イージーライドは、2020年代早期の事業化を目指す。自動運転や電気自動車、そして人工知能など、次世代の自動車技術が融合することによって、イージーライドのような未来系の交通手段が続々と登場しそうだ。
(文と写真=桃田健史/編集=藤沢 勝)
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桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。