第1回:いま「V40」はこうなっている!
価格以上の価値がある 2018.03.30 ボルボV40 解体新書 デビューから5年。日本の道でも多く見られるようになったボルボのコンパクトハッチバック「V40」。進化を重ねたいま、これまでの変遷を振り返りつつその本質に迫る。コンパクトカーのトレンドセッター
日本の輸入車マーケットにおいて、特に人気が高いのがコンパクトカーのセグメントだ。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「BMW 1シリーズ」「メルセデス・ベンツAクラス」「アウディA3」など、その顔ぶれからもわかるように強豪がひしめくマーケットである。
そんな輸入コンパクトカーマーケットに“異変”を起こしたのがボルボV40である。2013年2月に日本で発売されるやいなや、そのスタイリッシュなデザインや優れた内外装のクオリティー、スポーティーな走り、そして、ボルボ自慢の安全性が大いに注目を集め、新しい輸入コンパクトカーの選択肢として、確固たるポジションを手に入れたのだ。
2012年に誕生したV40は、ボルボが“プレミアム・スポーツ・コンパクト”と呼ぶ、同社のラインナップでは最も小さなモデルだ。このセグメントの定番である2ボックスのハッチバックとしながら、流麗なルーフラインを持つクーペフォルムを与えることで、スポーティーかつスタイリッシュなエクステリアを実現した。
一方、モダン・スカンジナビアンデザインを実践するインテリアは、クラスを超えた上質さとクオリティーを誇ることに加えて、「Elegance」「Eco」「Performance」の3テーマから好みのデザインを選ぶことができるカラー液晶メーター、7色の中から好みの色が選べるアンビエントライト、フレームレスルームミラーなどをいち早く採用するなど、コンパクトカーセグメントのトレンドセッターとしての役目を果たしている。「2013年度グッドデザイン賞」を受賞したというのも、大いに納得がいく。
ボルボV40のボディーサイズは、全長×全幅×全高=4370×1800×1440mm。2645mmのホイールベースにより、大人4人が快適に移動できる空間が確保されている。ラゲッジスペースは335リッターで、後席を倒せばステーションワゴン並みの広いスペースが手に入る。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式でリアがマルチリンク式。シャシーにアルミと高張力鋼板を多用することで軽量化を図り、また、コーナリング時にフロント内輪から外側にトルクを配分し自然なハンドリングをもたらす「コーナー・トラクション・コントロール」を採用するなどして、ダイナミックなドライビングを実現する。
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選べるパワートレイン
デビュー当初は、最高出力180ps(132kW)、最大トルク240Nm(24.5kgm)の1.6リッター直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン「T4」を用意。これに6段デュアルクラッチトランスミッション「パワーシフト」を組み合わせて前輪を駆動することで、スポーティーな走りと16.2km/リッター(JC08モード。以下同じ)の低燃費を両立させた。ラインナップは、標準モデル「V40 T4」に加えて、装備を充実させた「V40 T4 SE」が設定されていた。
程なくして4月には、最高出力213ps(157kW)、最大トルク300Nm(30.6kgm)の2リッター直列5気筒直噴ガソリンターボエンジン「T5」を積むスポーティーグレード「V40 T5 R-DESIGN」を追加。R-DESIGN専用の内外装やスポーツサスペンションなどにより、さらにエキサイティングなクルマに仕立て上げられた。その結果、V40は2013年2月から12月までの累計受注台数が1万台を超え(「V40クロスカントリー」を含む)、好調な滑り出しを見せることになったのだ。
翌2014年には、新パワートレイン「Drive-E」の搭載をこのV40シリーズでもスタート。手始めに、2014年11月には、V40 T5 R-DESIGNに、新開発の2リッター直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン「T5」を採用。最高出力は245ps(180kW)、最大トルクは350Nm(35.7kgm)と、ともに旧型を上回りながら、8段ATとの組み合わせで燃費(JC08モード)は従来の13.2km/リッターから15.1km/リッターへと向上した。
そして2015年7月には、「Drive-E」の2リッター直列4気筒直噴ディーゼルターボエンジン「D4」を追加。最高出力190ps、最大トルク400Nmという力強さと、20.0km/リッターというクラストップレベルの低燃費を両立した。また、同年9月には従来のT4エンジンに代えて、152ps/250Nmの1.5リッター直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン「T3」を採用することで、全エンジンが「Drive-E」となった。なおこのT3には6段ATが組み合わされている。
デビューから3年後の2016年7月には、内外装のデザインを変更。新世代のボルボを象徴する「トールハンマー」と呼ばれるT字型のLEDヘッドライトをV40にも導入したのが新しい。エンジンは1.5リッターガソリンのT3、2リッターディーゼルのD4、2リッターガソリンのT5と変わりないが、グレード展開は標準の「キネティック」、ワンランク上の装備を誇る「モメンタム」、さらに高いクオリティーを有する「インスクリプション」をT3とD4に設定。T5にはスポーティーさと上質さを兼ね備えたR-DESIGNが用意された。そして2017年2月には、122ps(90kW)/220Nm(22.4kgm)の1.5リッター直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン「T2」を搭載するエントリーグレード「V40 T2キネティック」を導入。さらなるユーザー獲得を狙う。
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先進安全装備が満載
ところで、ボルボといえば高い安全性が大きな魅力であり、その向上のためにたゆまぬ努力が続けられている。2020年までに、新しいボルボ車での交通事故死亡者や重傷者をゼロにする「VISION 2020」もその取り組みのひとつだ。当然、V40にもボルボの安全理念は受け継がれており、事故の際に乗員を保護する衝撃吸収ボディーやエアバッグなどに加えて、先進の安全機能である「インテリセーフ」がV40の全グレードに標準装備とされている。
例えば、前面衝突に対しては、ミリ波レーダー、デジタルカメラ、さらに赤外線レーザーの3つを使って衝突の危機を検知する自動ブレーキシステムを搭載。これにより、前走車だけでなく、歩行者や自車と同方向に走っている自転車との衝突被害を回避または軽減する。また、ボルボが世界に先駆けて実用化した歩行者エアバッグにより、歩行者の負傷を軽減する。
ほかにも全車速追従機能が付いたアダプティブクルーズコントロールや、車線逸脱を防ぐレーンキーピングエイド、後退時に車両の接近を知らせるクロストラフィックアラート、自動的にロービームとハイビームを切り替えるアクティブハイビーム、車線変更時の事故を防ぐレーンチェンジエンド/ブラインドスポットインフォメーションシステムを装備。道路標識をカメラで読み取りメーターパネルに表示するロードサイドインフォメーション、LEDヘッドライト/LEDデイタイムランニングライトといった機能が標準で装備されるのも、うれしいかぎりだ。
インフォテインメントシステムでは、テレマティクス機能の「SENSUS CONNECT」を標準で搭載。180Wアンプと8スピーカーのハイパフォーマンスオーディオシステムがキネティックとモメンタムに、karman/kardonが手がけるプレミアムサウンド・オーディオシステムがインスクリプションとR-DESIGNに標準装着されるのも、音楽好きには見逃せないポイントである。
このように、デザイン、走り、安全性、装備などのあらゆる部分で、クラストップレベルの性能を誇るV40。その内容を考えると、価格以上の価値が見いだせるに違いない。
現在日本市場で販売されているラインナップは以下の通り。
V40 T2キネティック(FF/6AT):299万円
・1.5リッター直4ガソリンターボ
・最高出力122ps、最大トルク220Nm
V40 T3キネティック(FF/6AT):339万円
・1.5リッター直4ガソリンターボ
・最高出力152ps、最大トルク250Nm
V40 T3モメンタム(FF/6AT):384万円
・1.5リッター直4ガソリンターボ
・最高出力152ps、最大トルク250Nm
V40 T3インスクリプション(FF/6AT):414万円
・1.5リッター直4ガソリンターボ
・最高出力152ps、最大トルク250Nm
V40 D4キネティック(FF/8AT):364万円
・2リッター直4ディーゼルターボ
・最高出力190ps、最大トルク400Nm
V40 D4モメンタム(FF/8AT):409万円
・2リッター直4ディーゼルターボ
・最高出力190ps、最大トルク400Nm
V40 D4インスクリプション(FF/8AT):439万円
・2リッター直4ディーゼルターボ
・最高出力190ps、最大トルク400Nm
V40 T5 R-DESIGN(FF/8AT):455万円
・2リッター直4ガソリンターボ
・最高出力245ps、最大トルク350Nm
(文=生方 聡/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
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生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。