ボルボXC40 T5 AWD R-DESIGN ファーストエディション(4WD/8AT)
若さがあふれてる 2018.04.13 試乗記 ボルボが初めて手がけたプレミアムコンパクトSUV「XC40」とは、どんなクルマなのか。装備満載の限定車「XC40 T5 AWD R-DESIGN ファーストエディション」に試乗して、その仕上がりを確かめた。そんなに小さいわけじゃない
ボルボ初のコンパクトSUVが、XC40である。2017年10月にミドルサイズの「XC60」が国内導入されてから、半年もたたずにもっと小さいのが出た。最近のボルボの多産ぶりはびっくりだが、まちがいなくSUVが“来ている”いま、「ボルボの小さいSUV」はアクセス数が多そうだ。
だが、試乗会場で初めて見たXC40は、そんなに小さくなかった。たしかに4425mmの全長はXC60より265mm短いが、1875mmの全幅は25mm小さいだけ。1660mmの全高は同寸である。全長を短くしたために、むしろワイドさと背の高さのほうが強調されている。しかしそれもボルボの狙いだろう。
「XC90」とXC60はサイズの柔軟性を持つSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)を共用するのに対して、XC40はCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)と呼ばれる新しいプラットフォームを初採用する。ユニークな複合素材の横置きリーフスプリングを使うリアサスペンションは、すべてコイルスプリングのマルチリンク式に変わり、フロントもダブルウイッシュボーンからマクファーソンストラットに改められた。「XC60の弟」ではないと主張するゆえんはこうした中身にもある。
一方、パワートレインはすでにおなじみの直噴ガソリン2リッター4気筒ターボ+8段ATで、エンジンは190psと252psの2チューンが用意される。今回試乗したのは、T5 AWD R-DESIGNのファーストエディション(559万円)。最もパワフルでスポーティーなグレードに、通常はオプションとなるガラスサンルーフや電動テールゲート、20インチホイールなどを加えた、いわば発売記念高付加価値モデルである。
視点の高いホットハッチ
「XC40って、こういうの!?」 試乗基地のホテルを出て走り始めると、まずそう思った。箱根強羅のかなりきつい上り坂だったが、まるで下り坂みたいにスピードを上げる。力があるのだ。それも、カルくて、速い。動的キャラクターは、アイポイントの高いホットハッチである。「ボルボの最小SUV」というインプットから勝手に想像していたイメージとはだいぶ違っていたので、面食らった。
でも、考えてみればあたりまえだ。半年前、出たての「XC60 T5 AWDインスクリプション」に乗って、「SUVのスポーツカー」と呼びたくなるような運動性能に感心したばかりなのに、このXC40は同じ252psユニットを積んで、車重(1710kg)がさらに150kg軽いのである。
ただ、ここまで力があると、ネガも感じた。スポーティーに走ってスロットルオンオフのピッチが激しくなると、アイシン・エィ・ダブリュ製8段ATの変速に粗さが出る場面がある。R-DESIGN専用スポーツサスペンションに4WDの組み合わせだから、オンロードでトラクションが破綻することはないものの、荒れた舗装路だと、245ヨンゴーの「ピレリPゼロ」がバネ下で多少バタつく。20インチのフットウエアが、骨太のロボット犬のようなルックスに、さらにいっそうの押し出しを与えているのは間違いないが。
でも、このファーストエディションの走りについてあまりくわしく書いても意味がない。ボルボ・カー・ジャパンが確保した300台はすでに売り切れだからだ。
居住空間がユニーク
ボルボの特徴ともいえる居心地のいい、イイカンジの内装は、XC40でも受け継がれている。XC90/XC60よりもシンプルになったが、より若向きでポップだ。
ジュエリーのようなエンジン始動/停止ノブやドライブモードのセレクターはなくなった。エンジンはプッシュボタンでオンオフし、ドライブモードも小さなボタンになった。これはちょっとザンネン。でも、スピーカーの位置を変えて、前席ドアのポケットは大きくなった。カップホルダーをゴミ入れにさせないために、取り外せるゴミ箱が付いた。
後席もおもしろい。座ると、ドアの敷居に対して、床は低く、天井がほどよく高い。リアドアのウエストラインをキックアップさせたので、部屋はちょっと暗くなったが、シート座面が高いので、見晴らしはいい。レッグルームは十分である。もうちょっと背もたれが寝ていてもよかったが、それも含めて、アップライトで座らせる感じの楽しい後席である。
ボディー全長はXC60より26cm短くなったのに、荷室の奥行きは5cmしか短くなっていない。外寸が小さくなると、スペース効率は上がるというクルマの法則は、XC40にもあてはまりそうだ。
エントリーモデルに期待ふくらむ
早くほかのXC40にも乗ってみたい。今回、ファーストエディションを正味2時間味わって、そう思った。このクルマはXC40のデザインとスポーツ性を強調する広告塔的なモデルだが、シリーズの主流や本命ではない。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」がフルチェンジして新型になり、ファーストエディションが「ゴルフR」だった、みたいな感じに近い。
2018年夏からの納車になるレギュラーモデルを見ると、R-DESIGNを含めた「T5 AWD」系が500万円台、400万円台に「T4」の2WDと4WDが揃う。190psのT4のほうがXC40の“らしさ”が より味わえるような気がする。
日本仕様の導入は未定だが、2リッターのモジュラーエンジンから1気筒をマイナスした1.5リッター3気筒がガソリンとディーゼルの両方にあり、欧州ではすでにスペックも公表されている。3気筒ガソリンハイブリッドやEVの計画もある。これからが楽しみな、一番若いSUVボルボである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
ボルボXC40 T5 AWD R-DESIGN ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4425×1875×1660mm
ホイールベース:2700mm
車重:1710kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:252ps(185kW)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1500-4800rpm
タイヤ:(前)245/45R20 103V/(後)245/45R20 103V(ピレリPゼロ)
燃費:12.4km/リッター(JC08モード)
価格:559万円/テスト車=561万5000円
オプション装備:“Lava”オレンジカラー・フロアカーペット&ドア内張り(2万5000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1296km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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