あなたの地元の交通事故は……?
愛知のキャンペーンから安全運転を考える
2018.04.13
デイリーコラム
まずはみんなの自覚から
小学校低学年の頃、学校でよく交通安全指導が行われていたことを覚えている。自動車事故が増加し、“交通戦争”と呼ばれるほどの社会問題となっていたからだ。いつも不思議に思っていたのは、愛知県は交通事故死が全国一多いから気をつけましょう、と言われていたこと。住んでいた名古屋は大都市ではあったが、東京や大阪のほうがもっと大きいことぐらいは知っていた。クルマもたくさん走っているはずなので、愛知県が不本意なナンバーワンであることに納得がいかなかったのだ。
今もまだ汚名を返上できていないらしい。愛知県では2018年4月5日、春の全国交通安全運動に合わせて「“AICHI 脱ワースト”交通安全キャンペーン」が開始された。特設サイトには悲痛な決意をつづった“宣言”が書き記されている。
「知っていますか。愛知県は交通事故死者数が全国ワーストです。それも15年も連続で。この不名誉な事実をなんとかしたい。そのために、そのことをみんなが強く自覚することから始めましょう」
2017年の愛知県内の交通事故死者数は200人。177人の埼玉県、164人の東京都を引き離して唯一の200人台だ。警察庁交通局による47都道府県の集計データを示そう。
平成29年中の都道府県別交通事故死者数
※多い順に1位から47位まで(単位:人)
1位:愛知県(200)
2位:埼玉県(177)
3位:東京都(164)
4位:兵庫県(161)
5位:千葉県(154)
6位:大阪府(150)
7位:神奈川県(149)
8位:北海道(148)
9位:茨城県(143)
10位:福岡県(139)
11位:静岡県(128)
12位:岡山県(97)
13位:栃木県(95)
14位:広島県(91)
15位:三重県(86)
16位:新潟県(85)
17位:長野県(79)
17位:山口県(79)
19位:愛媛県(78)
20位:岐阜県(75)
21位:熊本県(73)
22位:福島県(68)
23位:群馬県(67)
24位:京都府(66)
24位:鹿児島県(66)
26位:岩手県(61)
27位:滋賀県(55)
28位:宮城県(51)
29位:香川県(48)
30位:長崎県(47)
31位:福井県(46)
32位:大分県(44)
32位:沖縄県(44)
34位:青森県(42)
34位:宮崎県(42)
36位:奈良県(40)
37位:山形県(38)
37位:和歌山県(38)
39位:山梨県(37)
39位:富山県(37)
41位:佐賀県(36)
42位:石川県(34)
42位:徳島県(34)
44位:秋田県(30)
45位:高知県(29)
46位:鳥取県(26)
47位:島根県(17)
計3694人
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ルールやマナーの徹底あるのみ
調べてみると、愛知県が交通事故死者数ワーストだったのは1968年、1969年、1986年、1991年、そして2003年以降。どうやら筆者の記憶が間違っていたようで、愛知県のワーストが連続するようになったのは21世紀になってからだった。交通事故死者数が突出していたのは北海道である。1970年に初めてワーストになり、2002年までの33年間、3回を除いてずっとその座を保ち続けた。
2017年は北海道の交通事故死者数は148人で、全国6位。事故を減らすためのさまざまな対策が功を奏したようだ。愛知県が何も手を打たなかったわけではないだろうが、数字を見れば結果が出ていないことは一目瞭然。なんとか状況を打開しなければならないと焦るのもわかる。
“脱ワースト”のために提唱されているアクションは5つ。
1. 夜間の歩行時は、反射材をつけて身を守ろう!
2. 夜間走行時はスピード減速&ハイビームが基本
3. ながらスマホは絶対にやめよう
4. 横断歩道は歩行者優先!
5. 高齢者の交通安全をみんなでサポートしよう!
とりたてて目新しいことは書かれていない。ルールやマナーを守るよう、地道に呼びかけていくしかないのだろう。“名古屋走り”という言葉があるくらいで、愛知県の交通マナーが悪いのは有名だ。信号無視は多く、黄色信号で停車しようとすると後ろのクルマから激しくクラクションを鳴らされることがある。「車線変更でウインカーを出すのは負け」という妙な考え方が広がっているのも困りものだ。横断歩道を渡ろうとする歩行者がいても、停止するクルマはほとんどいない。
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結局はドライバー次第
愛知県の名誉のために言っておくと、マナーが悪いといわれる地域はほかにもある。山梨県の道で信号待ちをしていると、信号が青になった途端にいきなり右折車が発進して驚かされることが多い。同様の現象は、愛媛県や長野県にもあるそうだ。ウインカーを出さない習慣は岡山県でも広まっている。2017年の交通事故死者数を見ると、山梨県が37人で39位、愛媛県が78人で19位、長野県が79人で17位、岡山県が97人で12位となっている。順位には人口やクルマの数が大きく影響するので、マナーの悪さがそのまま表れるわけではない。愛知県は自動車保有台数が全国最大の約527万台だから、それだけ多くなる傾向はあるのだ。
警察庁交通局の「人口10万人あたりの交通事故死者数」を見ると、ワースト(1位)は福井県の5.88人。愛媛県が2位、岡山県が4位だから、やはり交通ルールが守られていない、ということはあるのだろう。愛知県は2.66人で39位と健闘しているが、クルマで移動する機会が多いので交通事故が増えてしまう。一方、10万人あたりの交通事故死者数が最も少ないのが東京である。1.20人と断トツに少ないため、最大の人口を擁するにもかかわらず交通事故死者数の合計は3位なのだ。
日本全体の交通事故死者数が最も多かったのは、1970年の1万6765人。2017年は3694人なので、4分の1以下にまで減ったことになる。モータリゼーションの進行とともに交通事故が増えたが、自動車の安全装備が進化したことで死亡者を減らすことに成功した。シートベルトやエアバッグが普及し、ABSやESCが当たり前の装備になったことも大きい。1995年からはJNCAPが始まり、消費者の安全意識も高まっている。
もちろん、究極の目標は交通事故死者数ゼロである。失われた命は、統計の数字で語れるものではない。事故撲滅に向けて期待が高まっているのが、先進安全装備とその先にある自動運転だろう。しかし、ウーバーとテスラの自動運転車が死亡事故を起こし、まだまだ発展途上の技術であることがわかってしまった。遠い将来はともかく、今は交通ルールとマナーを守ることが、事故を起こさないために最も有効な方法である。
(文=鈴木真人/写真=webCG/編集=関 顕也)
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鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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