病院で出会った天使に感謝 今尾直樹の私的10大ニュース2025
2025.12.24 デイリーコラム日産の開発陣はがんばっている
10位:6月3日、千葉のTHE MAGARIGAWA CLUBにて「ロールス・ロイス・スペクター」に試乗した。「ポルシェ・タイカン」にも驚いたけれど、スペクターにも驚いた。電気があればなんでもできる。とはいえ、こんなにも静かでモーレツに速くてゴージャスな自動車が世に生まれるとは! すべての高級電気自動車(BEV)の新たなベンチマークになることは疑いない。マガリガワという浮世離れした舞台もヨカッタ。
9位:7月18日、1966年に発売された初代「日産サニー」と「スバル1000」、初代「トヨタ・カローラ」の3台に試乗した。徳大寺有恒さんが『ぼくの日本自動車史』のなかで、サニーはバランスのよい小型車、カローラは見た目はよいけれど、ハンドリングがダメ。スバルは先進的で理想主義的な設計だったけれど、当時の大衆にはそれが理解できなかった。という趣旨のことを書いておられて、乗る前から興味津々。で、私的には、カローラがいちばん楽しくてスポーティーだと思った。「プラス100ccの余裕」がプラス300ccぐらいの余裕に感じたのだ。なるほど、私は大衆なのだ。ということをあらためて自覚した。韓流ドラマに夢中なのもむべなるかな。コクチョンハジマ。ケンチャナヨ。
8位:11月5日、webCGにも書いたけれど、「アウディA6アバントe-tron」を充電中、コネクターが抜けなくなった(参照)。このまま置いて帰ろうかと思った。2028年から「EV重量税」なる新たな税制が導入されるそうで、BEVの未来は、電気ですかーっ、といくら叫んでも、元気になるにはもうちょっとかかるかも……。それは地球にとってよいことなのか、それともよくないことなのか、いまだ判然としない。
7位:7月22日、神奈川県の追浜にある日産グランドライブにて「エクストレイル」のマイナーチェンジ版の事前取材会に参加する。世界初の量産可変圧縮比エンジン「VCターボ」を発電に使うe-POWERは「技術の日産」を象徴するメカニズムなのに、それをアピールしきれていないのではあるまいか。エスピノーサ新体制の発足は3月、追浜工場の閉鎖の発表は7月のことである。新方針のRe:Nissanでは人員を2万人減らし、生産工場を17から10に削減するというけれど、そもそも自動車メーカーなのに新型車を出さなかった理由が私には分からない。秋冬の新作を出さないファッションブランドがありますか? 八百屋が旬の野菜を並べないで商売が成り立つわけがない。コメをこれ以上つくるなという日本政府のやることも分からん。前政権が打ち出したコメ増産をやめにして……。ということで、7位はRe:Nissanなのですけれど、ゴーン以来の日産再生、再びである。これを最後の再生にしてほしい。エクストレイルの「AUTECHスポーツスペック」も、グランドライブでしか乗ってないけど、開発陣はがんばっている。
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200円貸してください
6位:2024年4月に私の手元にやってきた1985年式「シトロエン2CVクラブ エルメスと呼んでくれ号」、略称「エルメス」。前オーナーの趣味で内装がレザー張りになっている。そのエルメスが「YouTube」の『CG on the Air』で動画デビューした。取材は8月26日、夏の盛りのことだったけれど、明治神宮外苑(がいえん)を元気に走りまわった。♪オーシャンゼリゼ。
5位:11月24日、トダクラシックカー同窓会にその2CVで参加した。埼玉県戸田市の荒川河川敷の道満グリーンパークで開かれているこのイベントには100台以上の古いクルマが集結。私の隣は真っ赤な「フェラーリ328GTB」で、オーナー氏によると10年落ちを800万で手に入れ、30年近く持ち続けているという。おそらく、こういうピュアなクルマ好きは日本全国にいらっしゃることだろう。クラシックカーのイベントはますます盛り上がるにちがいない。
4位:天使は実在する。12月13日の朝、奥さんの「N-ONE」を借りて、前日出せなかった検診の提出物を病院に持っていく。N-ONEを病院の駐車場に止めたのはよかったし、病院で駐車サービス券をもらったのもよかった。そのサービス券を駐車場の精算機にかざすと、駐車代400円が0円になるのではなくて、200円になった。200円は払う必要があったのだ。知らなかった……。このとき、私は財布も携帯も持ってきていないことに気づいた。どうすべきか。病院の受け付け、あるいは交番まで行って200円借りるか。はたまた30分歩いてウチに帰るか。ちゃんとした靴を履いてこなかったことが悔やまれた。う~む。同じ駐車場にいる白い軽ハイトトールワゴンのなかに人影があった。思い切ってコンコンと窓ガラスをたたくと、車内の人は不安な表情を浮かべつつ、窓を開けてくれた。マスクをしていても若い女性であることが分かった。「財布を忘れました。携帯か、200円貸してください」とお願いした。見知らぬ老いた物乞いを彼女がどう思ったのかは定かではない。怖かったではあろう。黙って差し出された100円玉2枚を、私はありがたく受け取り、「家に帰って戻ってきて返します。どれくらいまでここにいますか?」と尋ねた。すると彼女は、「分かりません。返さなくてもいいです」と、弱々しい笑顔でいった。私はその200円で精算を済ませ、N-ONEに乗り込むと、日ごろから奥さんが緊急時に備えて、グローブボックスに小銭入れを潜ませていることを思い出した。あ、あった。そういうわけで、無事に200円返した。それにしても、ああ、人情地に落ちず。自助より共助。お礼に500円あげようかとも思ったけれど、ケチな性分ゆえ、できなかった。
あらためて知るトヨタのすごさ
3位:10月29日、ジャパンモビリティショー2025のプレスデーで、トヨタグループの展示に衝撃を受ける。センチュリーのブランド化に「レクサス・スポーツコンセプト」、ダイハツの後輪駆動「コペン」のプロトタイプにもビックリした。12月5日には「GR GT」「GR GT3」、そして「レクサスLFAコンセプト」の3モデルが一挙世界初公開となり、あらためてトヨタのすごさを思った。新開発のV8ツインターボのハイブリッドに、ノンハイブリッド、それにBEV! 筆者なんぞの想像力をはるかに超えている。しかも、これら3台のスポーツカーは、レクサスは退屈なブランドだ、とアメリカ人ジャーナリストから豊田章男会長が直接言われた悔しさから生まれたという。いまどき、こんな私的怨念を物語にする大企業があるなんて! 世の財閥の御曹司は、プーチン、習近平よりモリゾウを目指すべきである。
2位:筆者の2002年式「ルノー・ルーテシア2.0RS」のカギ問題である。メインキーをなくしてはや幾とせ。残るはスペアのキー1コのみ。そのスペアのキーのプラスチック製の持ち手の部分が一部欠けて割れてしまった……。近くのルノーディーラーに、キーを新たに注文したい、と電話で問い合わせたところ、そのおクルマに乗ってお店にきてください。ということだった。スペアキーを注文するには、オーナーであることを証明し、前金で支払わねばならない。費用は5万~6万円、だそうである。本社に発注するゆえ、出来上がりには1カ月以上かかるという。う~む。悩ましい。私がとりあえずやったのは、近所のスーパーに行って丈夫そうな文具のテープを買い、それでもって、2つに割れた持ち手部分をぐるぐる巻きにすることだった。これでしばらくは大丈夫……。持ち手が完全に壊れたときに備え、カギの部分だけでも回せるようにペンチも買った。備えあれば憂いなし。
1位:私的10大ニュースの第1位。それはこのルーテシア2.0RSの外見がどんどんボロくなっている一方、2025年は一度もエンジンの調子がおかしくならなかったことである。エンジン不調の原因は不明ながら、現象としては高速走行のあと、渋滞に巻き込まれると突如、回転数が不安定となり、アクセルを踏んでも加速しなくなる。という厄介なもので、今年はこの発作のような症状が出そうになったことはあるものの、結果的には一度も出なかった。じつは高速道路に足を踏み入れなかったこともあるにせよ、無事これ名馬である。この名馬を2026年、車検があるうちになんとかしたい。TBSのドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』ではないけれど、継承したいと名乗り出る方、いらっしゃらないでしょうか。というところで、玉置浩二の『ファンファーレ』が聞こえてきた。それではみなさん、よいお年を。
(文と写真=今尾直樹/編集=藤沢 勝)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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