スバリストが心をつかまれて離れない理由 「フォレスター」の安全機能を体感
2025.12.25 デイリーコラム「2030年に死亡交通事故ゼロ」が目標
2025年12月4日、2025年の国内クルマ賞レースの最後を飾る「2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」が発表された。ご承知のように、その“2025年の年グルマ”に輝いたのは、「スバル・フォレスター」だ。
日本COTY実行委員会が発表した新型フォレスターの授賞理由をまとめると、走り、実用性、快適性、悪路走破性、そして安全性を高い次元で融合したSUVであることが高く評価された。さらに、長年スバルの弱点とされてきた燃費性能も、新開発ストロングハイブリッドの「S:HEV」によって大きく進化。「アイサイトX」という先進運転支援技術だけでなく、歩行者やサイクリストなどの加害性の低減にも独自に踏み込んだ衝突安全思想も評価された。
かくいう筆者も、今回のCOTY選考委員をつとめさせていただいた。あらためて周囲の選考委員のフォレスター評を聞いてみると、こうした充実した内容でありながら、ほぼフル装備の「X-BREAK S:HEV EX」の本体価格が447万7000円、「プレミアムS:HEV EX」のそれが458万8000円という“コスパ”の高さが決め手という声も多かった。実際、その本体価格は、たとえば同じく電動技術や先進運転支援技術が満載の「日産エクストレイルG e-4ORCE」のそれより36万~47万円ほど安い。
さらには、スバル独自の歩行者保護エアバッグをより進化させて、サイクリスト対応にした取り組みを高く評価する選考委員も少なくなかった。スバルの歩行者保護エアバッグは衝突基準のためではない。これがなくても、すべての国の基準をクリア可能で、スバルが独自に掲げる「2030年に死亡交通事故ゼロ」の実現に向けたアイテムなのだ。とくに自転車乗車中の交通事故が多い日本の実情をくんでの技術だという。
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「ドライバー異常対応システム」を体感
というわけで、今回はフォレスターのCOTY受賞記念という意味も込めて、スバルが一部メディア向けに開催した、新型フォレスターのメダマ安全技術をあらためて体感する「総合安全体感試乗会」の模様をご報告したいと思う。
まずは新型フォレスターでさらに機能アップした「ドライバー異常対応システム」の体感である。ドライバー異常対応システム自体は、伝統のステレオカメラに、広角単眼カメラやレーダー、高精度地図データを組み合わせたスバル自慢の「アイサイトX」に以前から備わっている機能だ。新型フォレスターでは、グレード名の末尾に「EX」がつくモデルがアイサイトX装着車で、そこには自動的にドライバー異常対応システムもつく。
アイサイトXといえば、世界でもトップクラスの衝突軽減ブレーキ機能や、渋滞時ハンズオフ運転も可能な「ツーリングアシスト」も自慢だが、新型フォレスターではドライバーモニタリングシステムを活用したドライバー異常対応システムの機能アップに注目である。
ドライバー異常対応システムは、アイサイトXによる渋滞時ハンズオフアシスト制御中に長時間ステアリング操作がなく、運転手の顔の未検知状態が続いて、運転手が“居眠り”や“失神”していると判断したときなどに作動する。
具体的にはメーター表示や音などで何度か警告しても、運転手がステアリング操作に戻らない場合に、減速やハザードランプの点滅、ホーンの吹鳴……などで後続車や周囲の車両へ運転者の異常を知らせながら、クルマを車線内で停車させる。その後、すべてのドア(リアゲートを含む) を自動で解錠するという。で、新型フォレスターでは、そのドライバー異常対応システムに、走行中に異常を感知したときの2度目の警告から、断続的にブレーキをかける「パルスブレーキ」で運転手に刺激を与える機能が追加された。
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実ケースの蓄積も生かされている
試乗会におけるデモでは、運転手(役の担当者)が目を閉じた無反応状態になると、まずはメーターと音で警告。さらに2度目の警告からパルスブレーキが追加される。同乗体感した印象では、それは「通常の居眠りなら、これで間違いなく起きるだろう」というくらいには頭が揺すられるブレーキングだ。
今回は運転中の失神を想定したデモなので、運転手はそれでも反応しない。すると、フォレスターはハザードとホーンを作動させながら、(後続に急ブレーキを誘発しないよう)ゆっくりと停車。間もなくコールセンターと自動的につながり、オペレーターの「どうかしましたか?」という声が車内に響く。
これは「先進事故自動通報(通称:ヘルプネット)」によるサービスで、スバルの場合はオプションの「つながる安心ベーシック」以上のコネクトサービスに加入すると付帯される。新型フォレスターでは、エアバッグが作動するような事故が検知された場合のほか、今回のようにドライバー異常対応システムが作動した場合にも自動通報されるようになった。
新型フォレスターに追加された今回の新機能には、2020年の現行「レヴォーグ」で初めてアイサイトXが搭載されて以降の、実ケースの蓄積も生かされているという。
というのも、担当者によればアイサイトXの登場以降、国内のヘルプネットへの自動発報は1カ月平均十数件ほど。そのときにオペレーターが3回声をかけても応答がない場合には、救急車などの緊急要請をすることになっているが、スバル車でそこまで至ったケースは、今のところ把握されていないとか。というわけで、新機能のパルスブレーキで普通の居眠り運転を早期に撃退できれば、万が一のために用意されるヘルプネットに無用な負担をかけることもなくなるというわけだ。
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走る楽しさも忘れていない
続いて体験したのは、スバル自慢の4WD技術である。これも第一義は安全である。今回の試乗会は“日本最北端のテストコース”ともいわれる「スバル研究実験センター美深試験場」で実施されたのだが、2025年11月中旬の取材日にはちょうど降雪もあり、走行時にはウエットの砂利路面が白く薄化粧したようなコンディションだった。つまり、非常に滑りやすかった。
現在のスバルの主力システムである「アクティブトルクスプリットAWD」は、センターにデフギアをもたず、一般にはオンデマンド式あるいはスタンバイ式といわれる構造である。でありながら、実際にはおよそ60:40の前後トルク配分を基準とするフルタイム制御になるのが特徴である。
新しいS:HEVでは「Iモード」選択時にかぎって、低負荷走行時にFWDになる制御が追加されたが、それでも、そうした特定のコンディション以外は基本的に4WDで走るのがスバルらしい。また、「Sモード」あるいは「X-MODE」を選ぶと、もはやFWD制御がキャンセルされて、完全なフルタイム4WDになる。
今回は1.8リッター水平対向4気筒ターボモデルとS:HEVモデルのオフロード試乗ができた。前記のとおり、こうした場面での走破性や走行特性はほぼ同じ。アクセルペダルを踏むかぎり、しっかりと前に進むのはもちろんだが、わずかにアンダーステアを感じても、アクセルを戻すか、軽くブレーキングするだけでノーズが素直にインに向いてくれるので、とにかく運転が楽しい。
同様の場面で安定したアンダーステアを堅持して、しっかり速度を落とすことをうながす特性を是とするメーカーもあるが、スバルは伝統的に、積極的にアクセルを踏んでコントロールできる特性をうりとする。具体的にはサスペンションの調律がキモらしい。安全・安心を絶対的な社訓としつつも、こういう走る楽しさも味わわせてくれるところが、スバリストが心をつかまれて離れない理由のひとつなのだろう。
(文=佐野弘宗/写真=スバル/編集=櫻井健一)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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