第1回:BMWの超ド級マシンとドゥカティのスポーツモデルに試乗
2018.04.26 JAIA輸入二輪車試乗会2018個性的なマシンが多い二輪の世界でも“キャラの立った”モデルがそろう輸入バイク。その中で、いま注目すべきは? 今回はモーターサイクルジャーナリストの後藤 武が、BMWやドゥカティの旬のモデルに試乗。その走りをリポートする。
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初心者から達人まで楽しめる
BMW R nineTスクランブラー……183万3000円
伝統のボクサーツインエンジンをレトロなデザインの車体に搭載した「R nine Tスクランブラー」は最近人気上昇中のモデルだ。そのスタイルはとても美しいのだが、このマシンの本当の魅力は実を言うと見た目よりも走りにある。
一番の特徴は伝統のフラットツインエンジン。レスポンスが鋭く、はじけるように吹け上がるのだけれど、実際に乗ってみると過敏さがない。フライホイールマスが大きく、コンピューターによる制御ではなく、エンジンの設計そのもので穏やかな特性を生み出しているのである。
クルージングしている時も落ち着いているし、スロットルを開けた瞬間、柔らかく、それでいてとても力強く加速していく。そこにフラットツインの歯切れのいい排気音が響いてくるのだから、楽しくないわけがない。
縦置きのエンジンのため、ハンドリングも独特だ。横置きに搭載された通常のマシンの場合、クランクシャフトやトランスミッション、クラッチなどが高速回転することで生み出されるジャイロ効果が、安定成分として働く。つまり、車体を傾かせる(バンクさせる)動きを止めようとするのだけれど、縦置きにエンジンを搭載しているこのマシンにはそれがない。だから通常の横置きエンジンのマシンとは違った自由自在感が生まれる。
このエンジンとハンドリングのよさが最大限に生かされるのはストリート。ノンビリと街を走っているだけでもバイクを操る楽しさを感じさせてくれる。
バイクは理屈よりも感覚に影響される乗り物だから、こういうフィーリングはとても大事で、ライダーが安心して大胆に操作できるようになる。難しいテクニックなど覚えなくても上手に操れるようになるわけだ。ビックバイクビギナーからエキスパートまで、走りを楽しむことができるマシンである。
猛烈にエキサイティング!
BMW K1600B……344万9000円
直6エンジン搭載の超ド級マシン。おとなしいのかと思って乗ってみるとこれが大違い。さすがBMW。走る喜びにあふれたマシンだった。
低回転で走っているときはスムーズで静かなエンジンだけれどスロットルを大きく開けた瞬間、レーシングマシンのような排気音と加速でダッシュしていく。回転が上がってきたときの排気音はバイクというより四輪のスポーツカー的。
おまけにギア比がクロスしていて、しかもセミオートシフターが装着されているものだから、足を動かすだけで瞬時にシフトアップされ、加速が途切れることなく続いていく。速いだけでなく、猛烈にエキサイティングで楽しい。撮影スタッフたちもこのエンジンのフィーリングとジェットサウンドには相当テンションが上がった様子。
コーナリングもかなり軽快。この手のマシンとしてはバンク角も深いから、シフターを利用してシフトダウンしながらコーナーに進入していく感じはスポーツバイクそのもの。低速での切り返しではさすがにヨッコイショという感じになってしまうけれど、それ以外であれば、相当スポーティーな走りができてしまう。
もちろんツアラーとしての性能は文句なし。ポジションはゆったりしていて快適。サスペンションもよく動いて乗り心地がいい。ロングツーリングに出ても疲れは少ないだろう。
と、かなり魅力的なマシンではあるのだけれど、ネックになるのはこの大きさと重さ。これが問題ないというのであれば、ぜひ試乗してみていただきたいと思う(試乗車を用意しているディーラーもある)。この排気音とフィーリングは多くの人をとりこにしてしまうことだろう。
マナーを身につけた美女
ドゥカティ・スーパースポーツS……180万9000円
ドゥカティっていうのは昔から妖艶(ようえん)なスタイルで、気性も激しいイタリア女というイメージだった。だからパフォーマンスもフィーリングもスパルタンで過激。手なずけるのに相当な苦労をする。その代わり、乗りこなせれば「こいつしかいねーぜ」ってなる。そんな鼻っ柱の強さが特徴だった。
ところが「スーパースポーツS」には、そんなトゲトゲしさがない。「どっか具合悪いの?」って心配になるくらい従順だ。
速さを追求したツインエンジンで937ccも排気量があるくせに、低回転からとても使いやすいし(さすがに4気筒ほどのフレキシビリティーはないけれど)、ハンドリングも安定感があって素直。前傾姿勢だけ我慢したらロングツーリングに行きたくなるくらい快適。
そこからスロットルを大きく開けてペースを上げていけば、バイクが生き生きとしてくる。全開にすれば気が遠くなりそうな加速もするし、ハンドリングはどんな乗り方をしてもライダーを裏切らない。マシンの完成度とパフォーマンスは素晴らしい。
ドゥカティの個性がなくなってしまったのではないかと思う人がいるかもしれないけれど、その心配は無用。エンジンはLツインらしい鼓動や排気音を存分に伝えてくれるし、高回転での暴力的なフィーリングもある。ハンドリングにしても単に乗りやすいだけではない。攻めていけばマシンがさらに応えて、深い世界に入っていくことができる。スポーツライディングが好きなライダーなら夢中になってしまうような特性だ。
美しく気性の激しいイタリア女は、淑女のマナーを身につけて登場してきた。ドゥカティ・スーパースポーツSはそんなマシンである。
(文=後藤 武/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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