「BMW 3シリーズ」は全60種類の大所帯!
輸入車のグレードが多いのはなぜ?
2018.06.06
デイリーコラム
グレードを細分化してニーズに対応
欧州車はグレードの数を豊富に取りそろえているモデルが多い。例えば「BMW 3シリーズ」は、「セダン」とワゴンの「ツーリング」、車内の広い5ドアハッチバックの「GT」という3種類のボディータイプを用意する。
パワーユニットも多彩で、ガソリンエンジンが直列3気筒の1.5リッター、直列4気筒2リッター(チューニングは複数)、直列6気筒3リッター(高性能な「M3」も)。さらに直列4気筒2リッターをベースにしたプラグインハイブリッドに、直列4気筒2リッターのクリーンディーゼルターボという具合だ。「メルセデス・ベンツCクラス」なども同様で、欧州車は全般的にグレードが多い。
こうなる理由は、メーカーとしての販売台数があまり多くないからだ。2017年にトヨタは世界で901万台(ダイハツと日野を含めると1047万台)を販売したが、BMWの世界販売台数はグループ全体で246万台、メルセデス・ベンツは242万台であった。
販売規模が小さいと、当然ながら車種を増やしづらい。しかし、一方では多様化するニーズに応える必要があるため、グレードやエンジンの種類を増やしているのだ。トヨタのようにメーカーの規模が大きいと、販売する地域のニーズに応じた車種を用意できるため、グレードを細分化する必要はない。
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国内ブランドでも同様のケースが
BMWやメルセデス・ベンツと同様のケースは、日本のメーカーにも見られる。スバルの2017年の世界生産台数は107万台、マツダは161万台で、両社ともにトヨタなどに比べると規模が小さい。そのために車種の数は抑えられている。
グレードの数はBMWやメルセデス・ベンツほど多くはないが、例えば「マツダ・アクセラ」は1.5リッターのガソリンエンジンと1.5リッターと2.2リッターのクリーンディーゼルエンジン、そして2リッターエンジンをベースとしたハイブリッドを取りそろえている。
かつての「スバル・レガシィ」もこんな感じだった。2003年に発売された4代目は、「ツーリングワゴン」にSUV風の「アウトバック」、セダンの「B4」という3種類のボディータイプがあり、エンジンは水平対向4気筒2リッター(シングルカム/ツインカム/ツインカムターボ)、水平対向4気筒2.5リッター、水平対向6気筒3リッターをそろえていた。そのため価格帯も幅広く、210万円台から320万円台に達した。当時のトヨタ車でいえば、「プレミオ/アリオン」から、「マークII」や「ウィンダム」あたりまでをカバーしていたのだった。
少ない車種で、グレードやパワートレインを細分化することで勝負するには、前提条件として個性的で上質なクルマ造りが必要不可欠だ。1車種当たりの開発予算を十分に確保して、デザインや走行性能に個性を持たせ、さらには内外装の質も高めなければならない。
エンジンの種類を増やすことについても、基本となるブロックを共通化するなど、基本構造をできるだけ同じものとすることで、開発費用を集中させるわけだ。今はいろいろな分野で「選択と集中」という言葉が使われるが、スバルやBMWでは昔から実践してきたことだ。
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“選択と集中”は危険もはらむ
車種数を絞ってグレードを増やすと、先に触れたレガシィであれば210万円台のベーシックなグレードに買い得感が生じる。320万円台の仕様と同様の質感が100万円安い価格で得られるからだ。
今のBMW 3シリーズなら「340i Mスポーツ」は850万円、M3は1209万円に達するが、1.5リッターターボの「318i SE」は、同じボディーを持ちながら431万円だ。低価格でも、高額な上級グレードと同じ品質を得られる。
ただしそうなると、高価格なグレードではパワーユニットなどに相応の高性能と品質が伴っていなければ、ユーザーを納得させることはできない。
BMW 3シリーズやメルセデス・ベンツCクラス、BMW製のMINIなどはいずれも日本の使用環境に適した輸入車だ。そこに多種多様なグレードが用意されていることは、楽しいクルマ選びを可能にしてくれる。
その一方で、車種やプラットフォームの数を抑えてグレードを増やすという戦略には、商品開発の基本路線を間違えると、すべての商品が不人気になってしまうという危うさもある。トヨタの「パッソ」と「ヴェルファイア」、日産の「セレナ」と「GT-R」が共倒れになる心配はないが、欧州メーカーや日本のマツダ、スバルなどではそれが起こり得る。
つまり、大メーカー以上にクルマ好きの気持ちをがっちりとつかむ商品開発をしなければならない。何でもそろうトヨタや日産とは違う、限られたユーザーに向けた濃度の高い商品開発が、クルマ好きの共感を呼び起こすのである。
(文=渡辺陽一郎/編集=藤沢 勝)
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渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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