アウディA5カブリオレ2.0 TFSIクワトロ スポーツ(4WD/7AT)
たまさかの逢瀬に 2018.06.11 試乗記 日本ではマイナーな存在だが、欧米のブランドでは長年にわたり大切にされてきた“4シーターオープン”というカテゴリー。「アウディA5カブリオレ」の試乗を通し、スポーツカーとは一線を画すその趣に触れた。4シーターオープンは日陰者?
トヨタを筆頭に世界有数の自動車メーカーを自国に抱えながら、日本には根付かなかったクルマのカテゴリーがある。“4シーターオープンカー”だ。「レクサスIS C」など過去に例がなかったわけではないが、2018年現在、日本メーカーにおいては絶滅種だ。高温多湿、梅雨があってバカンスのない日本においてオープンカーは、一部のスポーツカーを除いて日陰者の存在だ。
一方で、冬季の日照時間が短いヨーロッパでは、日光浴は大切な生活習慣となっている。また、屋根の開く“カブリオレ”はそもそも馬車をルーツに持つものとして重宝され、代を重ねてきた。だから歴史や粋を重んじたモデルは、ハードトップではなく“幌(ほろ)”を用いている。特にこのカテゴリーに最も注力するのはドイツメーカーだ。メルセデス・ベンツは、「C/E/Sクラス」に、BMWは「2/4/6シリーズ」のすべてにカブリオレをラインナップしている。
これに対し、ドイツ御三家のひとつ、アウディが持っている数少ない4シーターオープンのひとつが、2017年に登場したA5カブリオレである(本国では「A3」にもカブリオレが存在している)。ルーツは1990年代にデビューした「80」ベースの「アウディ・カブリオレ」だが、A5としては2世代目となる。ベースとなるのは、もちろんA5クーペだ。
開けていても、閉じていても様になる
オープンカーにするためには単に屋根を切り取ればいいというわけではない。屋根を開けたときはもちろん、閉めたときにどういうスタイルになるのかがセンスの見せどころだ。A5カブリオレはクーペが持つフロントからリアにかけて波打つように流れるショルダーラインを生かし、後端はトランク上でスポイラー形状へと昇華させている。ルーフを格納するためにトランク部が厚くなりせっかくのスタイルをスポイルしているモデルも多いが、それがまったくない。幌を閉じた際のルーフラインはまったく違和感のない弧を描きシンプルに美しい。
幌の表面はアコースティックソフトトップという耐候性・耐熱性に優れたキャンバス素材で、遮音性に優れたウレタンフォームをサンドイッチして、車室内をファブリックで覆っている。幌の開閉はスイッチ操作ひとつでわずか数十秒で完了する。時速50km/hであれば走行中でも操作可能で、閉じてしばらく走り続けていると、これがオープンカーであることを忘れてしまうほど静かだ。
試乗車は「グレイシアホワイトメタリック」の外板に赤い幌の組み合わせだったが、外板色は13色、幌はこれ以外にブラック、ブラウン、グレーの全4色が用意されているので、その組み合わせを考えるだけでも普通のクルマ選びより多くのワクワク感が味わえる。
インテリアはクーペ譲りの水平基調でシンプルなものだ。運転席に座ると目の前にはオプション装備のTFT液晶を用いたフルデジタルメーター「アウディバーチャルコックピット」が備わっており、任意でメーター内にナビ画面などを表示することも可能だった。握り心地のよいグリップ形状のステアリングホイールや、触り心地のよいアルカンターラ素材のシートなど、そこここから質感の高さが伝わってくる。また後席はフロントシート下にすっぽりと足が入るスペースを確保しており、身長170cm以上の男性が座ってもまったく問題ない。風の巻き込みもウィンドウを上げれば最小限に抑えられている。
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大幅に改良された足まわりの妙
ボディーは先代比で40%ねじり剛性が高められ、約40kgの軽量化を実現したという。サスペンションも進化しており、フロントには改良型の5リンク式を、リアには従来のトラペゾイダル(台形)リンク式に代えて5リンク式が採用されている。
ダンパーやブッシュなどのチューニング、バネ下重量軽減の効果もあって、乗り心地は先代で感じた荒れた路面でのバタつきなどが軽減され、スムーズで快適になっていた。試乗車には、オプションのダンピングコントロール付きスポーツサスペンションが装着されていたが、いまどきの電子制御ダンパーがもつ、コンフォートからダイナミックまで振り幅の広い乗り心地も魅力的だった。もちろん屋根のないモデルゆえクーペほどの剛性感は望めないが、ステアリングはクーペ譲りの正確さで、日本の日常速度域で不満を感じるシーンなどほとんどない。
日本仕様に設定されるエンジンおよびパワートレインは、252ps/370Nmを発生する2リッター4気筒ターボエンジンに、7段Sトロニック、四駆の「クワトロ」の組み合わせ一択だ。このエンジンは静粛性も高く、アクセル操作に対してとても素直に反応する。通常時はフロントに40%、リアに60%のエンジントルクを配分するクワトロの制御もあって、回頭性もよく、アンダーステアのようなそぶりはめったにみせない。
いつもは見えない景色が見えてくる
ADAS(先進運転支援システム)は、歩行者検知機能付きの自動ブレーキ「アウディプレセンスシティー」や、ステアリングを自動修正しての車線逸脱機能、65km/h以下の渋滞で自動停車と自動発進を制御する「トラフィックジャムアシスト」などを標準装備する。連休中の試乗で、御殿場から東京まで所要時間3時間半以上という大渋滞にもまれもしたが、これらが疲労軽減に大きく貢献したのは言うまでもない。またこのクルマで新緑のまぶしい軽井沢にも出かけて大雨に降られた。そこで絶大な効果を発揮したのが、「マトリクスLEDヘッドライト」だ。夜間の真っ暗な高速道路や山道で、対向車や前方の走行車を検知するとその部分だけを避けるように照射範囲を切り替えるものだが、この数年で精度が大きく向上した。パッケージオプションで価格は27万円と安いとは言えないが、よく長距離ドライブに出かけるのならば備えておいて損はないだろう。
そういえば、以前にインタビューしたクルマ好きとしてつとに有名なある演出家が、自らが所有するオープンカーの魅力をこんなふうに話していたことを思い出した。
「オープンカーのルーフはハードトップじゃなく、ソフトトップがいい。雨の日に神宮外苑の並木道にクルマを止めて、助手席にいる女の子と話をしていると、まるで傘をさしているように雨の音が伝わってくる。そんなシーンがせつなくてたまらない」
冷静に考えてみると、A5カブリオレの万能性に気づいた。後席にも荷物が載るし、いざとなれば、家族4人でも乗車可能なスペースがある。クワトロであることをはじめ長距離ドライブは得意だし、何より屋根が開くのだ。何もいつもリゾート地に出かける必要はない。たまの週末に屋根を開いて都心をゆっくりと流すだけでいい。空の表情はもちろん、頭上におおいかぶさるビルディング群など、いつもは見えない景色が目に飛び込んできてとても新鮮だ。そしてこれからの梅雨の季節に、たまさかの逢瀬(おうせ)を楽しむことにだってきっと役に立つはずだから。
(文=藤野太一/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アウディA5カブリオレ2.0 TFSIクワトロ スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1845×1375mm
ホイールベース:2765mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:252ps(185kW)/5000-6000rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)245/40R18 93Y/(後)245/40R18 93Y(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:13.8km/リッター(JC08モード)
価格:757万円/テスト車=878万5000円
オプション装備:オプションカラー<グレイシアホワイトM/レッド>(8万5000円)/セーフティーパッケージ<パークアシスト+プレセンスリア+サラウンドビューカメラ+サイドアシスト+コントロールコード>(13万円)/S lineパッケージ<S lineバンパー+ドアシルトリムS lineロゴ+ S lineエクステリアロゴ+デコラティブパネル[マットブラッシュトアルミニウム]+アルミホイール[5ツインスポークスターデザイン 8.5J×18]+アルカンターラ/レザー+マトリクスLEDヘッドライト+LEDリアコンビネーションライト+ヘッドライトウオッシャー>(48万円)/ダンピングコントロール付きスポーツサスペンション(14万円)/バーチャルコックピット(7万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)/ヘッドアップディスプレイ(14万円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:4598km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:928.3km
使用燃料:76.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.2km/リッター(満タン法)/12.2km/リッター(車載燃費計計測値)
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藤野 太一
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