アルファ・ロメオ・ステルヴィオ ファーストエディション(4WD/8AT)
アルファ渾身の力作 2018.07.27 試乗記 ファンにとっても、メーカーにとっても待望の一台だった新型SUV「アルファ・ロメオ・ステルヴィオ」。ブランドの世界戦略を担うニューモデルは、新世代の“アルファらしさ”を体現した、作り手の強い意気込みを感じさせる力作となっていた。主役はむしろステルヴィオ
アルファ・ロメオ初のSUVとなるステルヴィオは、とどのつまり、先に発売されたFRセダン「ジュリア」の背高版だ。両車が使う「GEORGIO=ジョルジョ」なるプロジェクト名のアーキテクチャーはジュリアで初登場して、このステルヴィオが2例目となる。
クルマづくりの現代の定石からいって、これで終わりのはずもない。ジョルジョ・アーキテクチャーからは今後、Cセグメント(=次期「ジュリエッタ」?)からEセグ(=「166」の後継?)までの、少なくとも8車種(=あと6車種)の新型アルファが生み出される予定とされる。しかも、当初はアルファ専用アーキテクチャーとうたわれていたはずだが、いつしかマセラティやダッジ、ジープにもジョルジョ……というウワサも流れはじめている。その真偽は明らかでないが、今どきのクルマづくりなら、そのほうが自然だろう。
それはともかく、今回来日したチーフエンジニア氏によると、ジョルジョの初期段階から、ジュリアとステルヴィオの2台が、ひな形として同時並行で開発されたのだそうだ。それどころか、「ジョルジョの主力は、ジュリアよりステルヴィオ」という本音が、同氏の言葉のハシバシからほとばしっていたのも事実である。
ここ10年来のSUV化の波はアルファを含めた高級車ブランドのほうが顕著であり、アルファ自身も2003年にはSUVコンセプトの「カマル」をお披露目しているのに、商品化は競合他社より明らかに出遅れていたからだ。「ステルヴィオは平均年齢30代の若いチームが開発しました。それは自動車メーカーとしては異例です」という誇らしげなアピールにも、ステルヴィオに対する強い意気込みと期待が見て取れる。
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他のSUVとは力の入れ具合が違う
ステルヴィオのハードウエアには当然のごとくジュリアとの共通点が多い。欧州でのエンジンや駆動方式のラインナップもジュリアとほぼ共通で、日本でも今年の第4四半期までに、複数の2リッターターボ仕様と2.9リッターV6ターボ仕様が発売予定である。いっぽうで、それらカタログモデルに先立って400台限定の「ファーストエディション」が今年6月に発売された。今回の取材車もそれである。
ファーストエディションのエンジンはその後も主力となるはずの2リッターターボ。280ps/400Nmというピーク性能から分かるように、ジュリアで2種用意される2リッターターボの高出力型のほうで、駆動方式は油圧多板クラッチによるオンデマンド4WD。つまり、ジュリアでいうと「ヴェローチェ4WD」と共通のパワートレインである。ただ、ジュリア4WDが左ハンドルのみで割り切っているのに対して、ステルヴィオは最初から右ハンドルを用意する。こうした事実からも、ステルヴィオにより強い力点が置かれているのは明確だ。
印象的なのは、ジュリアの機動性や乗り味を決定づけている基本フィジカルのキモの多くが、この背高SUVでも忠実に再現されている点である。
たとえば、ステルヴィオはジュリアと比較して、最低地上高で65mm、前席ヒップポイントにいたっては90mmもかさ上げされている。つまり、本格SUVらしい健康的な背高パッケージなのだが、前席ヒップポイントとロールセンター高の位置関係は、ジュリアのそれとほぼ同じ設計になっているのだそうだ。また、前下がりのロール軸の角度もステルヴィオとジュリアで同等である。
もっというと、実質50:50という今回のファーストエディションの前後重量配分も、同じパワートレインの「ジュリア ヴェローチェ4WD」と(実際にはほんのちょっと前軸側が重めという微妙なバランスまで含めて)ほとんど変わりない。50:50を掲げるFR車といえばBMWが有名だが、BMWの場合はセダンで50:50に調律してあるぶん、SUVやステーションワゴンではほぼ例外なくリアのほうが重くなっている。
セダンとSUVを普通につくると、両車で同じ前後重量配分にはならないわけで、これぞ同時開発の妙といっていい。同時に技術的にもそれだけステルヴィオに重点が置かれている証左でもあろう。
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アジリティーは(お世辞抜きに)スポーツセダンと同等
先に発売されたジュリアの記事を読んでいただいても分かるように、それは確信犯的に「手首ひとつで曲がる?」と錯覚させるゴリゴリのステアリングカーである。そのSUV版であるステルヴィオも、当然のごとく、それに似た方向性であると予測されたが、果たして、まったくそのとおりだった。いや、ジュリアより明らかに背が高くガタイがいいのに、その俊敏性はほとんどジュリアと同じという意味では、インパクトや刺激性はジュリア以上かもしれない。
ステルヴィオもステアリングに添えた手にわずかな力を込めただけでノーズが反応する。少なくとも体感的には、ほとんどロールしない。ジュリアかそれベースのスポーツカーかなにかが、本来より8~10cmくらい浮いて走っている感覚といえばいいだろうか。SUVっぽさを感じるのは目線の高さだけで、目をつむって(つむれないけど)運転していると、背高感は皆無に近い。
この乗り味を実現した背景にあるのは、前記のロールセンターや重量配分への手当てだけではない。ホイールベースはジュリアと共通だが、重心が上がったぶん、前後トレッドをジュリアより拡大している。しかもその拡大幅がリアよりフロントのほうが大きいのもミソだろう。フロントトレッドを広めにすることで、左右のロールを抑制しつつステアリング反応を引き上げる意図があると思われる。
いろんな意味で“躍動的”
アルファ自身の主張によると、ステルヴィオは旋回中のロール角がクラス最小なのだそうだ。これも当初から明確な開発テーマだったことがうかがえる。
さすがの高級車ゆえに、それでもサスペンションの作動は滑らかで、変に突っ張るような低級感はない。超ミズスマシ的な挙動のわりにはタイヤは路面から離れにくく、乗り心地も良好な部類に入るだろう。しかし、絶対的には乗り心地はやはり硬めというほかなく、とくにロール剛性過多の傾向が目立つ。
ワインディングロードでは、多少の上下動や突き上げや揺さぶりを許容しつつも、水平姿勢のまま、どこまでもグリップしてゴリゴリと曲がっていく。路面のきれいな高速道でスピードを上げていくと、その上下動は徐々におさまるが、だれの目からも“フラットライド”と評せるようになるには、日本の法定速度を相当な幅で超える必要がありそうだ。
ステルヴィオの走りは、ひと言でいうと“躍動的”。この言葉には“跳ねる”という意味もあるのでクルマの走り表現としては否定的な部分もあるが、同時に“生き生きと俊敏”という点はまさにステルヴィオ……というか、ジョルジョ世代が明確かつ意図的に目指した新しいアルファ像なのだろう。賛否はあろうが、少なくとも分かりやすい商品性ではある。
もうひとつ、アルファの主張によると、ステルヴィオはパワーウェイトレシオでもクラス最優秀なのだそうだ。まあ、これは各車でどのグレードを選ぶかによるだろう。ただ、ジュリア ヴェローチェと共通の280psユニットは、少なくとも他社の同種エンジンのなかで、回転上昇にともなうドラマ、高回転域のレスポンス、サウンドといった官能面でトップをうかがえるひとつと評していい。
そんなパワフルな2リッターターボを、ステルヴィオの4WDは完全に支配下に置く。例のドライブモード切り替えで、過激な“D=ダイナミック”を選んで、意図的に荒っぽいアクセル操作をしてみても、誤解を恐れずにいえば、ステルヴィオのシャシーはまるでつまらないくらい微動だにしない。
そこにはステルヴィオの基本フィジカル、各部剛性、サスペンションのジオメトリーに加えて、黒子に徹して緻密にトルク配分する4WDシステムもよほど優秀なのだろう。今回の短時間試乗では、駆動配分している“そぶり”すら感じ取れなかった。
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多少クセは強いものの……
ステルヴィオの車体サイズは「メルセデス・ベンツGLC」や「アウディQ5」とならんで、同クラスでは比較的コンパクトな部類に属する。アルファ自身によると「クラス最短のフロントオーバーハング」ということで、明確なスモールキャビンデザインもあって、スタイリングはスポーツカー的である。
いっぽうで「ホイールベースとリアオーバーハングはクラス最長」でもあるそうで、乗員レイアウトも意外に健康的。室内空間が見た目のイメージ以上に広いのは、実用面におけるステルヴィオの美点だ。
インテリアにしてもメインのダッシュボードが分厚く柔らかいのは当然としても、ステルヴィオの場合、ダッシュボードの下半身やグローブボックス、ドアポケットにいたるスミズミまで手触りのいいソフトパッドがあしらわれている。このあたりはジュリアの内装も手が込んだものだが、ステルヴィオではそれ以上にコストをかけた感が強い。
まあ、中央のインフォテインメントシステムに依然として日本のナビが内蔵されない点だけは、日本の中高年世代は引っかかるかもしれない。ただ、スマホを接続すればインパネ上でマップ機能が使えるわけで、カーナビはそっちに割り切るべき時代も近いのだろう。
……と、ジュリアに続いてクセが強めの乗り味の好き嫌いを別にすれば、ステルヴィオはさすがアルファが社運を賭して開発したSUVである。細かなところまで配慮と工夫が行き届いており、フル装備で689万円という価格も競合車に対して割高なわけではない。
8段ATを操るシフトパドルが、古典的な大型のコラム固定タイプであることも「自分はアルファ・ロメオだから」的な強いこだわりなのだろうが、ステアリングのロック・トゥ・ロックわずか2回転強というステルヴィオの場合、「ここまでクイックな設定だと、ステアリングを持ち変える頻度も少ないから、パドルもステアリング固定のほうが使いやすいのでは?」と思ったりしたのは事実である。
(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・ステルヴィオ ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm
ホイールベース:2820mm
車重:1810kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 SOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:280ps(206kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2250rpm
タイヤ:(前)255/45R20 105V/(後)255/45R20 105V(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:11.8km/リッター(JC08モード)
価格:689万円/テスト車=697万6400円
オプション装備:メタリックカラー(8万6400円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:778km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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