年間のユーザー負担は8兆円!?
自動車にまつわる税制の問題を考える
2018.10.29
デイリーコラム
複雑怪奇で過重な日本の自動車関連税制
トヨタ自動車の豊田章男社長が今年5月に日本自動車工業会の会長に就任して以来、定例記者会見などで重要課題として言及しているのが、自動車関連税制の改正だ。政府が2019年10月の消費税増税を明言したこともあり、ここにきて税制改正を要望する動きが活発化している。
現在、自動車関連の税金は取得段階でかかる「自動車取得税」と「消費税」、保有段階でかかる「自動車税」「軽自動車税」「自動車重量税」、使用段階でかかる「揮発油税」と「地方揮発油税」(いわゆるガソリン税)、「軽油引取税」「石油ガス税」、そして再び「消費税」と、実に9つもの種類があり、日本全体の自動車ユーザーの負担は年額で約8兆円にものぼる。
課税の方法にも疑問点が多い。例えば取得段階では、物品やサービスを購入するときにかかる消費税と、自動車を購入する際にかかる自動車取得税という、趣旨の似通った2つの税が、根拠があいまいなまま同時に課される状況となっている。このほかにも、ガソリン税に重ねて消費税が課税されていたり、本来は一時的な増税であったはずの暫定税率が常態化しているなど、問題を挙げればきりがない。
日本の複雑怪奇で、世界の主要国で最も高いといわれる過重な自動車関連税制(保有段階でイギリスの約2.4倍、ドイツの約2.8倍、アメリカの31倍!)は、これまでも問題視されてきた。その中でも、いま豊田会長が積極的に見直しを働きかけている税のひとつが、「自動車税」だ。
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排気量は1.5倍なのに、自動車税額は2.7倍!
自動車税、軽自動車税は、毎年4月1日時点の所有者に対して課せられる税金で、用途(一般的には自家用乗用車)や総排気量によって税額が決まる地方税だ。地方にとって大事な財源なだけに、これまで誰もメスを入れてこなかった。
ちなみに、自家用乗用の軽自動車にかかる自動車税の年額は1万0800円。普通乗用車であれば1リッター以下が2万9500円と、排気量は約1.5倍ながら税額は約2.7倍にまで跳ね上がる。仮に軽自動車の排気量を基準とした一般的な累進課税とすれば、約1万6000円であるにも関わらずだ。以降、0.5リッター刻みで税額は上昇し、最大区分の6リッター超にいたっては年額11万1000円にもなる。いまや国内の新車販売に占める軽自動車の割合は4割に達する勢いだが、生活必需品としてクルマを使う地方で軽自動車が選ばれる大きな理由のひとつは、この税制にある。
さらに、環境保護の名目のもと、排ガス性能や燃費性能の向上した最新モデルへの代替を促進するため、新規登録から一定の年数(ガソリンエンジン車は13年、ディーゼルエンジン車は11年)を経過した乗用自動車の税率を約15%重課する“グリーン化税制”までも導入されている。したがって、初度登録から13年を超えた6リッター超のクルマの所有者には、年額12万7600円もの税金が課せられることになる。この税制は環境保護を理由としながら、新車製造や廃車にまつわる環境負荷はまったく考慮されておらず、クラシックカーなどの文化的価値のある車両に対する配慮も一切ない。また、そうした古いクルマでは車検時に支払う自動車重量税についても同様の重課がなされており、オーナーはますます重い負担を強いられることとなる。
ちなみにドイツでは、生産されてから30年以上経過し、オリジナルの状態が保たれていて、走行に支障がないなどといった条件をクリアしたクルマはクラシックカーとして認定され、優遇税制を受けることができる。ナンバープレートの末尾が歴史的なものを意味する「H」となることから、通称「Hナンバー」と呼ばれるものだ。日本とは真逆の扱いなのだ。
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現状に即し、未来を見据えた議論をすべき
豊田会長は、日本の経済力や雇用、ものづくりの競争力の維持には、年間1000万台規模の国内生産が必要で、そのためにも自動車保有のためのコストの引き下げが経営を支える糧になると述べており、また普通乗用車の税金を軽自動車に合わせれば国際基準になるという見解も示している。豊田会長の名のもとに提出された「平成31年度税制改正に関する要望書」によると、自動車税制は自工会の重点要望と位置づけられており、数多くの議題が提起されている。中には以下のような項目が列挙されている。
- 保有課税の簡素化・負担軽減(自動車税、自動車重量税)
- 取得時課税の簡素化・負担軽減
- 期限切れ租税特別措置の延長(エコカー減税、グリーン化特例など)
- 中長期的な抜本的な簡素化・軽減(保有段階での一税目化など)
これを見るだけでも分かるとおり、問題は山積みである。さまざまな財源を過度に自動車ユーザーに押し付けてきた自動車関連税制の複雑な連立方程式を解くことは、一筋縄ではいかない。
そもそも、自動車税ひとつをとっても、内燃機関のダウンサイジング化が進む中で「排気量区分ではなく欧州のようにCO2排出量で区分する」という議論もあってしかるべきだ。またパワートレインの電動化が推し進められる現状を思えば、エコカー減税(自動車重量税:免税、自動車取得税:非課税)+グリーン化特例(自動車税:75%減税)などといった電気自動車の優遇税制のあり方も、見直す必要がある。充電設備などのインフラ投資も必要な状況下で、いつまでこのやり方を続けるのか。排気量やCO2排出量では区分できない、電動車に対する一定のルールを検討するべきタイミングに来ているだろう。
以前、豊田会長は今の自動車業界を「100 年に一度といわれる大変革の時代に直面している」と話していた。自動車税制改革もまさにそれで、これまでのやり方の延長線上には、きっと答えはないだろう。平成が終わり、東京オリンピックが開催される、歴史的なタイミングだからこその勢いをうまく活用しての抜本的な改革が期待される。
(文=藤野太一/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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藤野 太一
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