「ホンダ・インサイト」が帰ってくる
ズバリ、日本市場での勝算は?
2018.11.07
デイリーコラム
2018年内に国内で復活販売されることが発表された「ホンダ・インサイト」。新たにセダンボディーを手にした新型に、果たして日本市場での勝算はあるのだろうか。
どうして日本市場を去ったのか
初代ホンダ・インサイトは1999年に発売されたが、このクルマは多分に実験的だった。全長を3940mmに抑えた2人乗りのクーペで、1リッター直列3気筒エンジンをベースとしたハイブリッドシステムを搭載したが、売れ行きを伸ばせずに終わっている。
商業的にまずまず成功したのは、2009年2月に発売された2代目インサイトだ。1.3リッター直列4気筒エンジンをベースにしたハイブリッドシステムを搭載して、価格は最も安い「G」が189万円(消費税は5%)に抑えられていた。
この時にあわてたのがトヨタだ。2009年5月に3代目「プリウス」の発売を控えていたため、その価格を急きょ見直したとされている。
3代目プリウスで最も価格の安い「L」は205万円、売れ筋の「S」が220万円であった。エンジン排気量は2代目の1.5リッターから1.8リッターへと拡大され、横滑り防止装置やサイド&カーテンエアバッグ、スマートエントリー&スタート、アルミホイールを全グレードに標準装備していたから相当に割安であった。
しかもこの時は、発売よりも1カ月以上も早い4月上旬に受注を開始した。取り扱いディーラーも、3代目ではトヨタカローラ店とネッツ店を加えて4系列全店としたため、受注が膨れ上がった。
結果として最長で10カ月にもおよぶ納車待ちになり、販売店では「パナソニックによる駆動用電池の供給が間に合わないもので」という言い訳まで聞かれた。ユーザーはトヨタからプリウスを買っているのだから、パナソニックは関係がないが、販売現場に尻ぬぐいをさせていた。
こんな具合だから、2010年3月におけるプリウスの登録台数は、併売していた2代目も含めると約3万5000台に達した。インサイトもこの時点では約5400台を登録したが、次第に下降していった。
決定的だったのは、2010年10月に「フィット」がインサイトと同じハイブリッドシステムを搭載したことだ。インサイトGは189万円、「フィットハイブリッド」は標準仕様が159万円で、充実装備の「スマートセレクション」でも172万円に収まっていた。
さらに、フィットは燃料タンクを前席の下に搭載して空間効率が優れていたから、後席の居住性と荷室容量は圧倒的に上回っていた。その結果、インサイトの売れ行きは急落した。
インサイトはプリウスではなく、身内のフィットハイブリッドに負け、日本を後にしたのだった。
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新型インサイトの特徴は?
2018年内に発売される新型インサイトは、現行「シビック」と基本部分を共通化したセダンボディーに、1.5リッターエンジンをベースとした「スポーツハイブリッドi-MMD」を搭載。「アコード」や「ステップワゴン」のi-MMDは2リッターエンジンを使うが、新型インサイトは1.5リッターだから、システムは「クラリティPHEV」に近い。
セダンボディーには上級感があり、ハッチバックと比べると空力特性でも有利だ。後席とトランクスペースの間に隔壁があるから、ボディー剛性を高めやすく、走行安定性や乗り心地、静粛性も向上させやすい。
居住性は「シビックセダン」と同程度だから、後席が特に広いとはいえないが、大人4人の乗車に支障はない。従来型インサイトに比べると、居住性は大幅に快適になるだろう。
スポーツハイブリッドi-MMDは、エンジンと発電機、駆動用モーターなどで構成される。エンジンは基本的に発電機を作動させ、生み出された電気を使ってモーターがホイールを駆動するから、加速感は滑らかだ。モーターは瞬発力が高いため、アクセル操作に対する反応も機敏になる。
ちなみにi-MMDの特徴として、アクセルペダルを踏み増した時に、速度よりもエンジン回転が先に素早く上昇する傾向がある。これはエンジン効率の優れた回転域を使って発電を行うための制御だが、ドライバーが違和感を覚える場合もある。そこで新型インサイトでは、設計の新しい「CR-V」などと同様、自然な運転感覚が得られるようにハイブリッドの制御を見直している。
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日本での売れ行きはどうなる?
新型インサイトは、CR-Vなどと同様、全般的に装備が充実している印象だ。ベーシックグレードの「LX」でも、カーナビやLEDヘッドライト、16インチアルミホイールなどが標準装備となる。
現行シビックセダンの価格は265万0320円だが、カーナビなどはオプションだ。インサイトLXと同程度のナビやLEDヘッドライトなどをオプション装着したとすれば、総額290万円くらいとなるだろうか。すでにインサイトが販売されているアメリカでの価格などから判断すると、そこから30万円程度の上乗せで、高コストなハイブリッドのインサイトを買えるかもしれない。
ほかのホンダのハイブリッド車は、価格競争が激しいミニバンの「ステップワゴン スパーダ」のハイブリッドでも、1.5リッターターボモデルから約47万円の上乗せだ。「オデッセイ」やCR-Vでは価格差が50万円を超えてしまっている。
現時点で新型インサイトの価格は公表されていないが、もしもLXが先ほど推測した程度の価格なら、性能を考えると割安なハイブリッド車になるだろう。シビックの売れ行きが下がり、インサイトが伸びることも考えられる。
だとすれば車名を「シビックハイブリッド」にする手もあったと思う。シビックは少なくとも日本のホンダファンにとっては大切なクルマだから、廃止した後で復活させ、その売れ行きが再び下がるような処遇はしてほしくない。
今後シビックが低迷して国内から消えると、もはや復活はあり得ないだろう。シビックを盛り上げてほしい私としては、海外はインサイト、日本はシビックハイブリッドでもいいではないかと思う。
(文=渡辺陽一郎/写真=webCG/編集=藤沢 勝)
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渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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