No Garage, No Life!
ちょっと大きなコレクションケースシトロエン・フリークの隠れ家 2018.12.03 Gear Up! 2019 Winter モノ作り全般に言えることではあるけれど、モノには作り手の性格や人柄が表れる。大切なモノを堅牢(けんろう)で耐候性に優れた器に収めたい。今回は中身重視のすてきな空間をカタチにしたガレージである。
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防風林の“壁”に隠れるように位置する、ライトグレーのシャッター扉が横に広がる建物の1階部分を見ただけでは、中に何が収まっているのか誰も予想がつかないだろう。趣味的な自動車の存在を強く訴えるものも、ブランドを伝える飾りなども一切ないように見える。
ところがシャッターが開き、眼前に広がる光景に思わず息をのんだ。「シトロエンCX」と「2CV」がたたずみ、あらゆるところにある“ダブルシェブロン”が目に飛び込んでくる。ディーラーにディスプレイされていたとおぼしき立て看板やバナー、ガラスケースの中のおびただしい数のミニカーたちもキーフォルダーもシトロエンである。本来ならここに収められているはずの「DS」の姿がなかったのは心残りだが、ともかくシトロエンのコレクションで空間は満ちていた。
ガレージの主は柳下正勝さん。長いあいだ司法書士を務めたのち、現在は先祖代々の農家を受け継ぐかたちでキノコ栽培に情熱を注いでいる。そして、「シトロエンは人生の伴侶」と言い切るほどの筋金入りのシトロエンマニアなのだ。
1960年代から『CG』を含む自動車雑誌でクルマの情報を得ていた柳下さんは、16歳で軽自動車に乗り始めてから多くのクルマを乗り継いできた。20歳のときに手に入れたのが2CV。「フツーじゃない」2CVにはずっと魅力を感じていたという。それまで乗っていた「マツダB360」「マツダ・キャロル」「スバルff-1」などとはまったく異なる個性に引かれたのだ。2CVをきっかけに、柳下さんのシトロエンファミリーはCX、妹夫婦からもらったという「XM」、そしてシトロエン・フリークにとって憧れであり象徴的な存在であるDSと、拡大の一途をたどることになる。
今のシトロエンは4台。フランスの工場で生産されていた頃の「2CVチャールストン」と、ずっと乗り続けている「CX2400パラス」、今回は工場入りしていた「DS21」、日常の足に使っている“現代”の「C1」というのが内訳である。セザムテックの「べべH」(アッシュ顔のアクティだが、メーターナセルは2CVのものを流用している!)は“業務用”だ。
「シトロエンもミニカーも増えてしまい、いつかはガレージを作ろうと思っていたんですよ。」建設に踏み切ったのは平成2年のこと。かやぶき屋根の母屋があった場所に2階建ての建物を造り、その1階スペースをガレージに充てたのである。「もう父もいなかったし、私ひとりで決められたので好き放題にできました」と柳下さんは笑う。
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ガレージにはなぜか1956年製のモーガンも
鉄骨づくりのシンプルな構造の“箱”の内側は、時間をかけてじっくりと仕上げられた。ガレージの奥には独立した小部屋が設けられ、テーブルとチェアが置かれ、そこからガラス戸を通してシトロエンたちを眺められるようになっている。実際、柳下さんも独りでのんびりとここで過ごすという。ガレージという名の隠れ家。これぞガレージの一つの完成形だ。
小部屋の一面には作り付けのガラスケースがあり、ミニカーがぎっしりと詰まっている。もちろんすべてがシトロエン、しかも「トラクションアヴァン」、DS、2CV等々、モデル別にきちんと区分けされている。さらには2CVの小さな空冷2気筒エンジンまでもケースに展示されているばかりか、自動車雑誌を収納したキャビネットもあり、シトロエン好きのみならずクルマ好きなら時間を忘れてしまうこと請け合いである。
ガレージにはシトロエンだけではなく、なぜか1956年製のモーガンもたたずんでいる。シトロエンの先進性・革新性とは対照的に、伝統を守りながら基本的に同じものを連綿と作り続けているモーガンに興味を抱いたのが手に入れた理由だ。モーガンを知ることで、シトロエンのユニークさを再確認できるということである。
性格の異なるクルマの対比が実に興味深い。が、それは柳下さんのガレージにも同じことがいえる。機能的な外観から受ける淡泊な印象と内部の濃密さ・強い個性とのギャップに通じるものがあるように思うのだ。
(文=阪 和明/写真=加藤純也<CG>)

阪 和明
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