狙うは未来のモビリティーの“主役”
「CES 2019」で見た部品メーカーの野望
2019.01.23
デイリーコラム
自動運転時代の幕開けとともに
“自動運転の時代”には、完成車メーカーと部品メーカーの垣根が崩れるかも……。毎年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大級のエレクトロニクス関連展示会「CES」を取材して、そんな感想を抱いた。多くの部品メーカーが自動運転時代をにらんだ「移動サービス用車両」を展示していたからだ。
その筆頭はドイツの大手部品メーカーであるZFだ。同社は、2017年5月に自動運転EV(電気自動車)を開発するベンチャー企業である独e.GO Mobileと提携。合弁会社e.GO MOOVEを設立して移動サービス向けの自動運転EVの開発・製造・販売に参入した。そして2018年6月には自動運転用EVの量産を2019年にドイツ・アーヘンで開始すると発表。今回のCESでは、量産を予定する移動サービス用の自動運転EV「e.GO Mover」を展示会場に持ち込んだ。
同車両は5~6人乗りの箱型EVで、人と荷物の両方の移動サービス向けを想定している。生産開始は2019年末からで、まずは400台をフランスのMaaS(Mobility as a Service)企業であるTransdev(トランスデブ)に提供。1年程度は自動運転ではなく手動運転で試験運用し、1年後からは自動運転レベル4の、運転席に人間のドライバーがいない自動運転での運用を目指すという。ZFは、今後5~7年でこのような車両に対する需要は年間100万台規模に達すると予想している。
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今はダイムラーの車両を使っているものの……
世界最大の部品メーカーであるドイツのボッシュも、自ら移動サービスを手がけることを明らかにしている部品メーカーだ。同社はすでに、独ダイムラーと共同で2018年11月から自動運転車を使った移動サービスの実証実験を米国カリフォルニア州サンノゼで開始しており、2019年からは限定的なエリア・速度で商業化する意向だ。実証実験ではダイムラーの量産車をベースとした実験車両を使っているが、今回のCESでボッシュは、移動サービス向け自動運転EVのコンセプトカーを公開した。
この車両は、4人の乗客が向かい合わせに座るレイアウトを採用しており、側面に大型のディスプレイを搭載する。車両に前後の区別はなく、また居住スペースを拡大するために、フロントとリアのウィンドウが通常とは逆向きに傾斜しているのが特徴だ。このコンセプトカーはまだ量産を意識していない設計だったが、少なくともボッシュもZFと同様に、箱型の独自車両で移動サービスを展開しようとしていることがうかがえる。
もっとも、部品メーカーが自ら移動サービス用の車両の製造に乗り出そうとしている例は、ZFやボッシュくらいでまだ少ないが、移動サービス向けの自動運転EVに勝機を見いだそうという動きは非常に多い。中でもユニークだったのは、やはりドイツの大手部品メーカーであるSchaeffler(シェフラー)グループが出展した「Schaeffler Mover」だ。同社はモーターを車輪に内蔵したインホイールモーターやサスペンション、車輪を一体化したモジュールを開発、このモジュールを各輪に搭載した試作車Schaeffler Moverを展示し、走行デモを実施した。
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先行するドイツ勢に追いつけるか?
この車両の特徴は、各輪にモーターを搭載しているためドライブシャフトが存在しないことを生かし、車輪を真横に操舵できること。それによって車両を真横に動かしたり、あるいは前輪を右向きに、後輪を左向きにすることでその場で回転するような動きをしたり、というような従来の車両では不可能な動きが可能になる。
加えて、車両に前後方向の区別がないので、前進と後退の区別もない。こうした特徴は狭い路地などで入ってきた道からそのまま戻ったり、前後のスペースに余裕がない場所で縦列駐車をしたりするのに威力を発揮する。シェフラーは現在のところ車両そのものの製造に乗り出す計画はなく、こういう車両を製造するのは同社の技術力をアピールし、ビジネスパートナーを探すのが目的だとしている。
これらドイツ勢だけでなく、日本メーカーでもデンソーやトヨタ紡織、アイシン精機、パナソニックなどが移動サービス向け車両を意識した展示をしていたが、コンセプトの完成度という点では、残念ながらドイツ勢には及ばなかった。こうした自動運転EVを使った移動サービスは、トヨタ自動車やフォルクスワーゲンをはじめ、完成車メーカー各社も2020年代初頭の商業化を目指しており、完成車メーカー、部品メーカー入り乱れての競合が激しくなりそうだ。
(文と写真=鶴原吉郎<オートインサイト>/編集=堀田剛資)
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鶴原 吉郎
オートインサイト代表/技術ジャーナリスト・編集者。自動車メーカーへの就職を目指して某私立大学工学部機械学科に入学したものの、尊敬する担当教授の「自動車メーカーなんかやめとけ」の一言であっさり方向を転換し、技術系出版社に入社。30年近く技術専門誌の記者として経験を積んで独立。現在はフリーの技術ジャーナリストとして活動している。クルマのミライに思いをはせつつも、好きなのは「フィアット126」「フィアット・パンダ(初代)」「メッサーシュミットKR200」「BMWイセッタ」「スバル360」「マツダR360クーペ」など、もっぱら古い小さなクルマ。
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