フォルクスワーゲン・ポロTSI Rライン(FF/7AT)
主張があるからこそ楽しい 2019.02.18 試乗記 フォルクスワーゲンのBセグメントコンパクト「ポロ」に、新エンジン「1.5 TSI Evo」を搭載したスポーティーな新グレード「TSI Rライン」が登場。かむほどに味が出る、ジャーマンコンパクトならではの走りをリポートする。1リッターモデルと「GTI」の中間
まるで本場のライ麦パンを食べてるような気分だ。
かめばかむほど味が出る。かなり腹持ちもしてくれそうな感じだけれど、その普段食べ慣れない硬さや密度感には、少しだけ戸惑いを感じる人もいるだろう。もちろんクチに運んで、パッと「私コレ、好き!」と言える人も。あぁドイツだなぁ、とショウユ顔の筆者は感じてしまうわけである。
フォルクスワーゲンのBセグメントを担うポロ。その新グレードであるTSI Rラインが日本に上陸を果たした。ハイライトはそのエンジン。ベースモデルが1.0 TSI(95ps)、トップレンジである「GTI」が2.0 TSI(200ps)ということで、中間を取ったこのRラインには1.5リッターのTSI Evo(150ps)が搭載されている。
グレード的には1.0 TSIで最も豪華な「TSIハイライン」(267万9000円)の上位に位置するが、“Rライン”の名の通り、専用サスペンションと17インチタイヤを装備するスポーティーな性格が与えられている。ポロでさえGTIが348万円にもなってしまったことから、実質的なスポーティーバージョンという見方もでき、先代モデルで言うと省燃費性能を意識しながらもキビキビと走った「ブルーGT」のポジションに近い。
最大のトピックはTSI Evoと呼ばれるエンジンなのだが、“Evolution”というだけあって、このエンジンはちょっと手が込んでいる。エンジンブロックのシリンダーライナーにはこれまで「ゴルフGTE」のみに採用されていたプラズマコーティングが施されており、フリクション性能と耐摩耗性を向上させている。省エネかつ長持ちするブロックということだ。コモンレール式の燃料噴射システムは350barに及ぶ高圧を用いて、細かな燃料噴射制御を実現。エンジン温度は3段階で水冷バルブをコントロールすることによって、冷間時から高温時まで全域で高効率な作動温度領域を実現しようと制御してくれる。
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軽快で力強い走りを支える新エンジン
燃費面だけで言うと本国には同じ1.5 TSIでもより燃費コンシャスな「1.5 TSI Evoブルーモーション」が存在し、こちらは吸気バルブを適宜コントロールするミラーサイクル機構が搭載されているようだが、1.5 TSI Evoも気筒休止機能である「アクティブシリンダーマネジメント」(ACT)を備えている。
そんな予備知識を得て走らせたRラインは、しかし小難しい理屈抜きに快活な小型ハッチバックだった。エンジンの小排気量化とトランスミッションの多段化を推し進めたフォルクスワーゲンが、「ライトサイジング」と銘打って1.4リッターから排気量を約100cc上げた陰には、まさに適正排気量で省燃費を狙うマツダの活躍が影響していそうな気もするが、すかさず方向修正をしてくるあたりはさすが一流どころといえるか。そしていざ走らせてしまえば、とても軽快で力強い走りが構えることなく自然に味わえる。
その立役者となるのは1500rpmから250Nmの最大トルクを発生するターボの瞬発力。そしてそのキビキビ感にふさわしいダイレクトなクラッチミートをする、乾式7段DSGの小気味よいギアリングと変速制御だ。175Nmの最大トルクを発生するためには2000rpmまで回さなくてはいけない1.0 TSIに対して、1.5 TSI Evoの出足に緩慢さはない。低速での過給圧制御は少し増えた排気量と賢い制御によってスムーズ。デュアルクラッチのつながり方にもギクシャク感がない。
回りだしでゴロゴロと猫のようにノドを鳴らすサウンドに感動や上質さは感じられないが、回すほどにトーンが整う誠実さが実に気持ちいい。エンジンを回し切っても、途中でシフトアップしても、DSGは歯切れよく次のギアにつながる。そしてすぐにクッ! とメリハリをもって加速してくれる。このレスポンスは、トルコンATでは得られない。
この乗り味は人を選ぶ
好みが分かれるとすれば、乗り心地だと思う。
ポロはRラインに限らず、乗り味がシャッキリしている。小型車としては異例といわれるボディーの強さ、骨格の3割以上が高張力鋼板というボディーの高い反発力が影響しているのか、操舵レスポンスがいい反面、路面からの細かい振動や入力が車内に伝わりやすく感じる。なおかつ、Rラインは専用のスポーツサスがおごられているため、乗り心地は割と硬い。ダンパーは1.0 TSIほど安っぽくはないが、「ノーマル」「スポーツ」の2段階可変機構を備える割にはGTIほど振動吸収や減衰が利いていないと感じた。ここはより重量がかさむことで落ち着きが増し、上級モデルではリアがマルチリンクとなる「ゴルフ」との違いである。
もっとも、試乗車は走行距離がまだ1238kmだったから、アシまわりがなじめばもう少し落ち着きが増すのかもしれない。またこのシャキッとしたサスペンション剛性が、全長や全幅、ホイールベースをサイズアップしながらも、相変わらずポロらしい取りまわしのよさを実現しているともいえる。ロールせずに街中をスイスイ曲がる様は確かに快適であり、パワステの操舵感は軽すぎるけれど、これなら今もって男女比率が半々というポロの役目をまっとうできるだろう(できればこれもモード切り替え式にしてほしいところだけれど)。
もしかしたらこの軽快さが勝って、女性の方が「乗り心地なんて気にならないわよ!」と言いそうな気もする。今時の女性は強いからなぁ。
ゴージャスになってもポロはポロ
そんなフットワークを持つだけに、きちっと走らせるとRラインは痛快だ。むしろまったりと粘り腰で安定したGTIよりも、日本の環境ではスポーティーかもしれない。
サイズアップしたとはいえコックピットの居心地は適度にタイトで(女性にはちょうどよい広さかもしれない)、しかしドアパネルがえぐられていることによって圧迫感をおぼえさせない作りは見事。速度を乗せるほどに硬めのアシがしなやかさを帯び、操舵に対してゆっくりとロールスピードを調整してくれる。ハンドルから伝わる確かなタイヤの手応え。右足に従順なパワートレインのレスポンス。
ホンネを言えば、この1.5 TSI EvoにGTIの“まったりサス”を組み合わせてみたい。もしくは速度域の低い日本用に特注サスをあつらえてほしい。なぜなら、今の日本人の所得からすると、この価格帯はもはや高級車だからだ。
逆を言えば、「ポロはやっぱり『小さなゴルフ』じゃなくて『ポロ』なのだ」ということを、このRラインはあらためて示したとも思う。ゴルフは今や世界で一番高級感のあるCセグメントハッチバックへと成長した。かたやポロは若々しく、小回りが利いて、走らせればとびきり元気な小型車なのだ。4mを超えた全長とキレッキレのプレスラインによるデザインで“プレミアムB”的なゴージャス感がそのルックスに漂うようになったけれど、やっぱりポロはポロだった。
もしこのポロにゴルフ同様のオートパーキングブレーキや、操舵支援も加わったACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を付けたら、さらに価格は跳ね上がるだろう。つまりそれだけ“地”の部分に、このポロはお金が掛けられている。
このポロTSI Rラインにガブッとかみついて、そのやや堅めだけれど質実剛健な味わいを「オイシイ!」と感じられたら、あなたとポロの生活はとっても楽しいものになるだろう。すべてが高効率化によって平均化していくいま、このくらい主張があるクルマと過ごすのはステキなことじゃないか。
(文=山田弘樹/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロTSI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4075×1750×1450mm
ホイールベース:2550mm
車重:1210kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1500-3500rpm
タイヤ:(前)215/45R17 91W/(後)215/45R17 91W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:17.8 km/リッター(JC08モード)
価格:298万円/テスト車=344万4400円
オプション装備:ボディーカラー<リーフブルーメタリック>(3万2400円)/Discover Proパッケージ(22万6800円)/テクノロジーパッケージ(7万0200円)/セーフティーパッケージ(9万7200円) ※以下、販売店オプション フロアマットプレミアムクリーン(3万7800円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1238km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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