フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/7AT)
帰ってきたビュンビュン系 2023.01.24 試乗記 いよいよ日本に導入された「フォルクスワーゲン・ポロGTI」のマイナーチェンジモデル。小柄なボディーに高出力の2リッター直4ターボエンジンを搭載したパワフルなコンパクトカーは、従来型からいかなる進化を遂げたのか? 実際に乗って確かめた。内外装の変更点はベースグレードに準拠
「up!(アップ)」なきいま、日本では一番小さなフォルクスワーゲンであるポロ。そのマイナーチェンジモデルが2022年6月に導入されたわけだが、これを追いかけるかたちでスポーツモデルである「GTI」も“マイチェン版”が日本上陸を果たした。
その変更点は、まず内外装のアップデートだ。フロントまわりはヘッドランプがLEDマトリクスタイプの「IQ.LIGHT」となり、GTIのアイデンティティーとなる赤いラインも、波打つタイプからスッキリとしたストレートに。合わせてデイライトもストレート基調となって、“目尻”の部分がダブルラインとなった。新型バンパーは、ロアグリルに「ゴルフGTI」の弟分であることを主張するアグレッシブなU字型のガイドが入り、左右のハニカムパターンの中にフォグランプが埋め込まれた。
対してリアまわりはベースグレードのデザインに則しており、コンビランプが新意匠に。このグレード特有の変化としては、GTIのロゴがリアハッチ脇からフォルクスワーゲンマークの直下に移設された。ポロのエンブレムは、相変わらず付けられていない。
インテリアのデザインは、ステアリングホイールを除くと前期モデルから大きな変更はない。ダッシュパネルとセンターコンソールには赤の強烈な差し色が入り(外装色がレッドの場合のみグレーとなる)、それに合わせてシフトノブのトップとステアリングスポーク、そしてレザーハンドルのステッチが赤く彩られている。タータンチェック柄のシートはかわいらしくて好みだが、ダッシュパネルは相変わらずやり過ぎだ。だがマイチェンで変わっていないということは、そこに不満が出なかったということなのだろう。
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乗り心地が硬くないか?
機能面でのアップデートとしては、これもベースグレードに則したかたちとなるが、エアコンのコントロールユニットがタッチ式になった。またGTIは上級グレードだけに、ステアリングの各種スイッチもタッチ式だ。9.2インチのセンタースクリーンも、同様にタッチ式である。
ちなみに筆者は、センタースクリーン以外あまりこのタッチ式が好きじゃない。エアコンで言えばブラインドタッチがしにくいし、ステアリングで言えば操舵時に手が触れるだけでいろいろ起動してしまうからだ。新しいことと使いやすいことは、また別の話である。
面白いのは、パワーユニットだ。ベースグレードがその心臓を1リッター直列3気筒ターボに一本化したのに対し、GTIは2リッター直列4気筒ターボをダウンサイジングしないどころか、その最高出力を200PS/4400-6000rpmから207PS/4600-6000rpmへと引き上げた(最大トルクは320N・mで変わらず)。またデュアルクラッチトランスミッション(DSG)を、6段から7段へと1段増やしているのだ。
そのWLTCモード燃費は、前期型の14.5km/リッターに対して現行型は15.6km/リッターとなっている。ちなみに市街地モードは11.3km/リッター、郊外モードは15.8km/リッター、高速道路モードは18.6km/リッターだ。
というわけでようやくポロGTIのマイナーチェンジモデルを走らせるわけだが、その印象はひとこと「硬い」だった。そしてこれには正直なところ、ちょっと複雑な思いを抱いた。というのも、ベースモデルは今回のマイナーチェンジで、かなり走りの質感を高めてきたからだ。
思い起こせば、ボディーの3割近くに超高張力鋼板を使い、意欲的に軽量化と安全性の向上に挑戦した現行ポロはしかし、いかんせんその乗り味がチープだった(参照)。こうした高価な部材を使った反動か、遮音や防振が利いておらず、おまけに低燃費化を追い求めたタイヤと足まわりの高剛性化が、乗り心地の悪さに拍車をかけていた。
しかしマイナーチェンジモデルでは、これがしっとりした乗り味に改善されていた。どこをどのように変えたのかは明らかにされていないが、確かにそれは熟成と呼ぶにふさわしい進化だと筆者は感じた。
かたやGTIはというと、むしろ前期型には確かにあった、あのしっとり上質な乗り味が失われていた。
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飛ばせばやはりほれぼれする
端的に言えば、街なかでの乗り味がゴロゴロと硬い。段差を越えても跳ねこそしないが、強い入力が時折入るし、路面のザラつきが車内に「ゴー」っと侵入してくる。
聞けば試乗車にはオプションの「Sport Select(スポーツセレクト)パッケージ」が装着されており、可変ダンパーが付いていたそうだが、最初はモードを「ノーマル」から「スポーツ」へと転じても、違いがまったくわからなかった。
その責任を誰に押しつけるべきかというと、筆者は同じくスポーツセレクトに含まれるオプションの18インチタイヤだと思う。ただこれを履きこなすためにダンパーやスプリング、ブッシュ類も剛性を高めているのだとしたら、標準の17インチを履いても、その乗り心地は、多少よくなるが完全には取り戻せないかもしれない。
ともかく、デビュー当時はベースグレードと乗り比べて「やっぱり払うものを払えば、上質さは手に入るのだなぁ」と、その格差に苦笑いしたGTIの上質さはなくなっていた。
言い換えれば、18インチを履いた現行型は、ひと世代前のヤンチャなポロGTIに戻っていた(参照)。それだけに、がっぷり四つでのぞんだときの走りはかなりいい。速度域が上がるほど、フラットになるその乗り心地。直進安定性は極めて高く、小さいボディーをたくましく走らせる昔かたぎで頑固な走行フィールには、やっぱりほれぼれする。
ブレーキは忠実にスピードを殺し、フロントタイヤに荷重をため込む。タッチも過敏すぎずダルさもなく、とても操作性がいい。そこからハンドルを切り始めると、フロントアクスルの剛性感がドッと高まる。さらに切り込めば野太いグリップ感とともに、コーナーをこれでもかと曲がる。「XDS」(電子制御デフ)の利きも含めてちょっと人工的にねじ込む感じが強いが、ボディーが小さいからそれも含めてカーブが楽しい。
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先祖返りは吉と出るか?
エンジンの質感もドライバーをワクワクさせる。2リッター直列4気筒ターボは、低速から力強い。7PSの出力アップは正直体感できないが、そもそも1350kgの車重に対して320N・mのトルクである。7段化されたDSGのショートシフトでもどんどんスピードを乗せていく。ギアを固定してアクセルを踏み込めば、はじけるように高回転までパワーをつむぎ続ける。
エミッションの関係か、TSIエンジンに透き通るような滑らかさは減ったような気がしたし、7段湿式タイプとなったDSGのクラッチミートも穏やかすぎて足まわりのアグレッシブさとトーンが合わない感じもしたが、総合的には元気印。いまどきめっきり少なくなったビュンビュン系だ。
わかりやすい。とってもわかりやすい。
コンパクトで頑丈なボディーをはじけるトルクで走らせるポロGTIには、ゴルフでは味わえない等身大の楽しさがある。しかし、これ1台で多くをこなすなら、内装と足まわりには、やっぱりもう少し大人びた質感が欲しい。標準の17インチタイヤを選んで、慣らしをきっちり終えればだいぶ解決してしまうのかもしれないが、411万3000円の価格を考えれば、やっぱり18インチタイヤは履かせたいだろう。であれば、オプションの足まわりも、ゴルフなどと同じく「DCC(アダプティブシャシーコントロール)」が選べるようにしたほうがよい。
ポロGTIのキャラクターを考えると大切なのは、絶対的な速さやコーナリングスピードよりもバランスだ。「MINIジョンクーパーワークス」(3ドアで488万円~)に引っ張られちゃっているのかなぁ? せっかく手にした上質感を手放し、キャラ変する必要はまったくないのに。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ポロGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4085×1750×1430mm
ホイールベース:2550mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:207PS(152kW)/4600-6000rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1500-4500rpm
タイヤ:(前)215/40R18 89W XL(後)215/55R17 94V(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)
価格:411万3000円/テスト車=441万円
オプション装備:Sport Selectパッケージ(12万1000円)/Discover Proパッケージ(15万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイルPlus>(2万2000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2068km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:263.8km
使用燃料:24.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.9km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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