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販売上位は軽自動車だらけ
衰えない人気の理由とその弊害は?

2019.04.15 デイリーコラム 鈴木 ケンイチ
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トップ10のうち7車種が軽自動車

平成も最後の月に入り、「令和」という新元号に世間が沸いていた2019年4月4日、全国日本自動車販売協会連合会(自販連)と軽自動車協会連合会(全軽自協)が、2018年度の新車販売台数を発表した。両者の統計を組み合わせてみると、車種別の販売ランキングは以下のようなものになる。

1位 ホンダN-BOX 23万9706台(前年比107.3%)
2位 スズキ・スペーシア 15万8397台(同139.3%)
3位 ダイハツ・タント 14万2550台(同105.9%)
4位 日産デイズ 14万0053台(同102.6%)
5位 ダイハツ・ムーヴ 13万2320台(同90.9%)
6位 日産ノート 13万1760台(同100.5%)
7位 トヨタ・アクア 12万7899台(同99.2%)
8位 トヨタ・プリウス 11万5123台(同77.2%)
9位 ダイハツ・ミラ 11万1757台(同107.2%)
10位 スズキ・ワゴンR 10万2553台(同84.6%)

なんと、トップ10のうち7車種が軽自動車。登録車は「ノート」「アクア」「プリウス」の3車種だけという結果となった。ダイハツの「ムーヴ」や「ミラ」はシリーズ全体の数字だし、日産の「デイズ」には「デイズ ルークス」の数字も含まれるというマジックはあるものの、それらを勘案しても形勢は明らかである。2015年の軽自動車税増税を経ても衰えぬ、軽自動車の人気の手堅さが生んだ結果だろう。

2018年度の新車販売トップにかがやいた「ホンダN-BOX」。
2018年度の新車販売トップにかがやいた「ホンダN-BOX」。拡大
2位に入った「スズキ・スペーシア」。2015年の軽自動車税増税で、一時約170万台まで落ち込んだ軽自動車の年間販売だが、その後は徐々に持ち返し、2018年度は192万2997台となった。
2位に入った「スズキ・スペーシア」。2015年の軽自動車税増税で、一時約170万台まで落ち込んだ軽自動車の年間販売だが、その後は徐々に持ち返し、2018年度は192万2997台となった。拡大

定期的なモデルチェンジが支える魅力

では、いったいなぜ販売ランキングの上位に軽自動車が並ぶこととなったのか。その理由は、やはり製品としての魅力にあるといえるだろう。考えてみれば当然だ。登録車の最上位であるノートの現行型デビューは2012年、アクアは2011年、プリウスでも2015年である。マイナーチェンジや新グレードの追加などが行われているが、正直、フレッシュさはない。ある意味、そんなに古いモデルなのにいまだに売れ続けている事実に恐れ入るほどだ。

一方、軽自動車の現行型のデビューはいつかといえば、「N-BOX」と「スペーシア」が2017年、ムーヴは2014年(「ムーヴ キャンバス」が2016年)、ミラは「ミラ イース」が2017年、「ミラ トコット」が2018年、「ワゴンR」が2017年と、ほとんどのモデルが発売されて1~2年しかたっていない。ちなみに、2013年登場のデイズは今年になってフルモデルチェンジを受けている。

フルモデルチェンジのタイミングがどんどん伸びている登録車に対し、定期的に新型へと代替わりする軽自動車。どちらが魅力的かといえば、当然、フレッシュさを維持できる軽自動車のほうである。また、こうした要因は市場のニーズに素早くこたえるという意味でも有利で、注目度の高い自動緊急ブレーキやアクセルの踏み間違い防止機能といった運転支援システムを軽自動車が積極的に採用できたのも、定期的なフルモデルチェンジがあればこそといえる。

年間販売6位と、登録車では最上位に入った「日産ノート」。現行型のデビューは2012年と、今年で“7年選手”。ちなみに、初代のモデルライフは7年8カ月だった。
年間販売6位と、登録車では最上位に入った「日産ノート」。現行型のデビューは2012年と、今年で“7年選手”。ちなみに、初代のモデルライフは7年8カ月だった。拡大
2013年6月に登場した「日産デイズ」(左上)は、2019年3月に新型(右下)にモデルチェンジしている。
2013年6月に登場した「日産デイズ」(左上)は、2019年3月に新型(右下)にモデルチェンジしている。拡大

このまま登録車が売れない状況が続くと……

また、2018年度の結果については、登録車の側に販売台数が見込めるコンパクトカーの新顔がなかったのもつらいところ。かつてベストセラーだった「カローラ」の新型は、日本ではマイナーなCセグメント車であったし、「マーチ」「キューブ」「ミラージュ」などはモデルチェンジはおろか目立った改良もされずに放置状態である。これらが新しくなれば、少しはランキングがにぎやかになるのではないだろうか。

では、2019年度はどうなるのか。

登録車でば「ヴィッツ」や「フィット」のフルモデルチェンジがウワサされているが、軽自動車に目をやると、すでにデイズと「eKワゴン」が新型となっている。さらにホンダは、今夏の「N-WGN」のフルモデルチェンジをアナウンスしているし、またモデルサイクルから計算すると、2013年デビューのダイハツ・タントなども刷新される可能性が高い。そうなれば、ハイトワゴンもスーパーハイトワゴンも、ほとんどのモデルが2017年以降にデビューしたフレッシュな顔ぶれとなる。2019年の軽自動車の品ぞろえは、2018年以上に充実したものとなりそうな気配なのだ。代替わり直前の販売の落ち込みを計算に入れても、やはり2019年度も販売のトップ10は軽自動車が多数を占めることになりそうだ。

こうした状況が続くと、ユーザーマインド的に「小さな登録車には魅力的なものがない」となりかねない。軽自動車の側にしても良い話ばかりではなく、軽ばかりが売れるとなれば、再びの増税、ひいては軽自動車という枠の撤廃すら俎上(そじょう)に上がりかねないのだ。

そうならないためにも、今後は小型登録車にも魅力的な新型車が登場し、スマッシュヒットを飛ばしてほしいもの。メーカーが本腰を入れることを願うばかりだ。

(文=鈴木ケンイチ/写真=スズキ、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車/編集=堀田剛資)

登録車では、量販が見込めるコンパクトカーの中にもテコ入れされずに放置されている車種が少なくない。写真は「日産マーチ」(右)と「三菱ミラージュ」(左)。
登録車では、量販が見込めるコンパクトカーの中にもテコ入れされずに放置されている車種が少なくない。写真は「日産マーチ」(右)と「三菱ミラージュ」(左)。拡大
鈴木 ケンイチ

鈴木 ケンイチ

1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

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