オールジャパンで目指すは月! トヨタとJAXAとブリヂストンが月面自動車の開発に挑む
2019.10.28 デイリーコラム「FUTURE EXPO」が面白い!
なにコレ? 話聞いたらこれまたひとつの『プロジェクトX』(古い?)じゃないの? と思っちゃいましたよ。東京モーターショー2019の「FUTURE EXPO」。未来の日本の先進技術を見せる、上野の国立科学博物館の産業版みたいな小さめのエキシビションだけど、聞いてシビれたのは中身の濃さ。顔認証技術を使った仮想店舗やAIを使ったバスケットボールのシュートロボット、水素エネルギーもいいんだけど、小沢の中でサさったのは、トヨタとJAXAが共同開発中の月面探索車と、ブリヂストンが開発中の月面専用タイヤ。マジ、話を聞いたらひとつのTVドキュメントでも観てるようでした。
最初はFUTURE EXPOの2階で『ガンダム』のこじつけっぷりを聞いてたのね。そもそもなぜ東京モーターショーでガンダムかっていうと、もともと会場全体が東京オリンピック・パラリンピックを応援してる上、ガンダムもオフィシャルでオリパラを応援しているから会場にもガンダムがいるんだと。さらにガンダムが今年ちょうど生誕40周年で、登場人物の中にはモンク博士などのマイナーな技術者がいて、あの人たちは今の日本のエンジニアなのだと。そして今の日本のエンジニアらがつくるのが今回展示のハイテクやら月面探索車やらで、あの頃は夢だったのが実際に既に宇宙にも行きました。これからも行きますと。つまり、ガンダムは日本の先端技術の象徴なんですよ。……みたいなことを言いたいようでした。
しかし小沢が本当に面白かったのはその先で、トヨタがJAXAと共同開発している月面探索車こと「有人与圧ローバ」の話。会場に行くまでは、ウワサには聞いていたけど詳しいことは何にも知らなかった。
このタイミングで月面自動車の開発に着手した理由
そもそもローバとは「レンジローバー」のローバーとは全く関係がなく、月面自動車であり月面の移動体の総称なんだとか。それを、今年から正式にトヨタとJAXAで共同研究してるんだけど、もちろんトヨタはこれまで事業として宇宙に乗り出したことはなく、さらにはトヨタ&JAXAが有人与圧ローバの製造について、どっかから正式受注をゲットしたわけでもありません。
2030年代に予想される月面の本格調査、その時に日本は月面移動体となるモビリティーを担当したいと考えているんだけど、参入するには前倒しで月面探索車の生産技術を確立しなければならない。そのためにトヨタとJAXAが共同研究を始めたわけ。ちなみに有人与圧ローバの打ち上げは2029年と、きっかり10年後。結構先が長い話です。ある意味、国産初のジェット旅客機「三菱MRJ」計画にも似ています。
さらに今回の有人与圧ローバがすごいのは、今求められる月面探索車が50年前にニール・アームストロング船長が月面で乗ったバギーのようなものとは全く違うこと。「有人与圧」という言葉からも想像できるように、機密性を保ち、宇宙飛行士が宇宙服を脱いで車内で45日間生活できることが求められています。しかも一回の補給で走れる距離は1000km、総走行距離1万kmという条件も課せられている。原動力には燃料電池を使うらしいけど、それ以前に気圧を保つ仕組み、安全維持装置、飛行士の出入り……といろいろな技術が必要なわけで、まさにトヨタだけではできず、JAXAはもちろん三菱重工も含めた宇宙事業版“チームジャパン”でやらないと実現できないものなのよ。
タイヤの話がこれまた興味深い
加えて面白いのがタイヤを担当しているブリヂストン。今回見た、スチールウールの塊のようなタイヤがハンパない。最初はてっきりSF的な想像上の産物かと思ったら、実はマジだったんですわ。
そもそも月面でタイヤを使おうと思った場合、普通のゴムは使用不可。なぜなら、月の表面はマイナス170度にもなり、ゴムがゴムの物性を保っていられないから。そのほかにも、当然周囲はほぼ真空で、放射線が強い上に、月の砂はレゴリスといって粒子がすごく細かいのでタイヤがマトモにグリップしません。よって鉄素材を使いつつ、ゴムにも負けないグリップ力を砂漠で発揮する特性を持たせなければならないわけ。その結果が今のスチールウールによるトレッドであり、ドーナツ形状なのよ。
開発を担当するブリヂストン・フェローの河野好秀さんいわく、「今までF1のタイヤから市販タイヤまで、いろいろ設計しましたけど、過去の経験が通じない。すごく難しいです。でもやってて面白い(笑)」とのこと。
これもひとつの感動ニッポン、エンジニアらの深いストーリーがあるんだって!!
(文=小沢コージ/写真=webCG、小沢コージ/編集=堀田剛資)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考えるNEW 2026.6.4 「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。
-
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感 2026.6.3 「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。
-
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える 2026.6.1 具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。
-
つまずきを糧に成功をつかみ取れ! 新型「CX-5」に宿るマツダの変革と覚悟 2026.5.29 既存のマツダ車とは一線を画す乗り味で、メディアをおどろかせた新型「マツダCX-5」。マツダの最量販車種は、なぜ3代目で大転換を迫られたのか? 賛否両論を巻き起こした“あのクルマ”との関係は? 新しくなったCX-5に宿る、マツダの覚悟と変革に迫る。
-
「日産テラノ」がPHEVで復活 往年のビッグネームを継承するSUVの特徴を分析する 2026.5.28 日産自動車が「北京モーターショー2026」で、往年のビッグネームを継承する新型SUV「テラノPHEVコンセプト」を世界初公開した。初代「テラノ」で採用された「3スロット」を想起させる車両のデザインに加え、日産が新型テラノで狙うグローバル戦略に迫る。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。








