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ホンダCB650R(MR/6MT)

すべてがちょうどいいホンダ 2019.11.16 試乗記 伊丹 孝裕 伝統と新しさの融合をコンセプトに掲げる、ホンダのスポーツネイキッドバイク「CB650R」。その走りは、気負わずに付き合えるオートバイのよさを実感させてくれた。
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いま“ど真ん中”のオートバイ

ホンダが新しく構築したスポーツネイキッドが「CB-R」シリーズだ。2018年春から「CB125R」、「CB1000R」、「CB250R」の順番でラインナップ拡大を開始。2019年に加えられた最後発モデルが、この「CB650R」である。

以前、そのフラッグシップであるCB1000Rを試乗した際、「ホンダにはCBの名を持つモデルがあまりにも多く、統一された世界観もない」と書いた。ホンダの描くCB像があいまいで「一体CBはどこへ行こうとしているのか?」という思いが強く残ったからだ。

だがしかし。こうしてあらゆる排気量が出そろい、しかもスタイリングにちゃんと共通項があるところを見せつけられると、「文句ばっかり言ってすみませんでした」と謝らざるを得ない。「CB1300」シリーズや「CB1100」シリーズなど、依然として似たような車名は多いものの、今後はこのCB-Rシリーズを主軸に置く、という意図がはっきりと見えてきた。いまはその過渡期にあるということだろう。

CB650Rは、その中でも中核をなす。95PSという最高出力と97万9000円という価格に表れている通り、なにかとちょうどいい。国産バイクの適正なコストパフォーマンスは、ひと昔前なら「1馬力=1万円」あたりが目安になっていたが、このモデルはまさにそれ。648ccという排気量も含めて、ジャストサイズである。

中核という意味では、ターゲットにしているユーザー層もそうだ。ホンダはそれを明確にうたってはいないものの、CB125Rは10~20代前半、CB250Rは20代、そしてCB1000Rは40代以上のベテランを想定している。当然、最後に登場したCB650Rにはその間を埋める、もしくは全方位的にフォローする役割が与えられていて、実際、デザイナーやモデラーは30代のメンバーが中心になっている。

「NEO SPORTS CAFÉ」をデザインコンセプトに掲げる「CB650R」。切り詰めたテールがスポーティーな“カフェレーサー”ムードを醸し出す。
「NEO SPORTS CAFÉ」をデザインコンセプトに掲げる「CB650R」。切り詰めたテールがスポーティーな“カフェレーサー”ムードを醸し出す。拡大
CBの名称は「ベンリイ スーパースポーツCB92」の登場以来、60年にわたってホンダの歴代スポーツモデルに与えられてきた。写真は「CB650R」の吸気ダクトに添えられた化粧パネル。
CBの名称は「ベンリイ スーパースポーツCB92」の登場以来、60年にわたってホンダの歴代スポーツモデルに与えられてきた。写真は「CB650R」の吸気ダクトに添えられた化粧パネル。拡大
容量15リッターのガソリンタンク。車体色は全3色で、写真の「マットベータシルバーメタリック」のほか「キャンディークロモスフィアレッド」と「グラファイトブラック」が選べる。
容量15リッターのガソリンタンク。車体色は全3色で、写真の「マットベータシルバーメタリック」のほか「キャンディークロモスフィアレッド」と「グラファイトブラック」が選べる。拡大
リング型の光源で伝統的なライトのイメージを演出するLEDヘッドランプ。中央には「HONDA」ロゴが添えられる。
リング型の光源で伝統的なライトのイメージを演出するLEDヘッドランプ。中央には「HONDA」ロゴが添えられる。拡大
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見た目も走りも質がいい

エンジンやフレームの基本設計は、先代モデルの「CB650F」から引き継がれた。とはいえ、全面的に刷新された外装によってその面影はほとんどない。アグレッシブなストリートファイターだったCB650Fからは一転。CB650RはオーソドックスなネイキッドでありながらCB1300SFほど守りに入らず、CB1100ほどクラシカルでもない。そういう新しいポジショニングにある。塗装や質感に安普請な印象はまったくなく、120万円のバイクといわれても十分納得できる仕上がりを持つ。

エンジンはホンダの4気筒らしく、高回転まできれいに回る。最高出力はCB650Fの90PS/1万1000rpmから95PS/1万2000rpmに引き上げられ、それに伴ってエアクリーナーボックスの形状を大きく変更。エア導入面積が大幅に拡大され、過渡特性の向上に貢献している。

ただし、スロットルをひとひねりすれば、文字通り「アッ」という間に200km/hオーバーの世界へ突入するリッタースーパースポーツとは異なり、エンジンフィーリングを楽しむ余裕がある。スロットル開度、速度、回転計の動きに対して加速感がちょうどリンクし、自分でそれを引き出している実感が得やすいのだ。

また、燃焼室の形状変更によって低回転域が強化されたことも評価されるべき点だ。4000~6000rpm付近の実用域で見せる力強さもさることながら、6速3000rpmという極低回転からでもノッキングすることなく、スルスルと加速。全域にわたって見事にしつけられ、もしもそれがタイヤのグリップを失わせたとしても、トラクションコントロールがさりげなくフォローしてくれる。

メーターパネルはカラーの液晶タイプ。速度やギアポジションのほか、燃費や平均車速も表示可能。
メーターパネルはカラーの液晶タイプ。速度やギアポジションのほか、燃費や平均車速も表示可能。拡大
フレームに囲まれないエンジンと整然と並ぶエキゾーストパイプが、1970年代の名車「ホンダCB400FOUR」(通称ヨンフォア)を思わせる。
フレームに囲まれないエンジンと整然と並ぶエキゾーストパイプが、1970年代の名車「ホンダCB400FOUR」(通称ヨンフォア)を思わせる。拡大
運動性能を向上させるべく、マスの集中化が図られた「CB650R」。コンパクトなマフラーは特徴的なディテールのひとつ。
運動性能を向上させるべく、マスの集中化が図られた「CB650R」。コンパクトなマフラーは特徴的なディテールのひとつ。拡大
タイヤのサイズは、フロント:120/70ZR17、リア:180/55ZR17。試乗車はメッツラーの「ロードテック01」タイヤを装着していた。
タイヤのサイズは、フロント:120/70ZR17、リア:180/55ZR17。試乗車はメッツラーの「ロードテック01」タイヤを装着していた。拡大
フロントフォーク(サスペンション)はスーパースポーツモデルに多く用いられる倒立タイプを採用。リアはモノサスとなっている。
フロントフォーク(サスペンション)はスーパースポーツモデルに多く用いられる倒立タイプを採用。リアはモノサスとなっている。拡大
左側グリップの付近にはトラクションコントロールの調節スイッチがレイアウトされている。
左側グリップの付近にはトラクションコントロールの調節スイッチがレイアウトされている。拡大
「CB650R」は、クラッチレバー操作の負担を軽減しシフトダウン時のホッピングを抑える「アシストスリッパ―クラッチ」を装備。ABSも標準で装着される。
「CB650R」は、クラッチレバー操作の負担を軽減しシフトダウン時のホッピングを抑える「アシストスリッパ―クラッチ」を装備。ABSも標準で装着される。拡大

このマイルドさに価値がある

一方、ハンドリングは好みが分かれる。軽い、重いで言えば明確に重く、なにかに引っ張られるようなフリクションを感じる。それをスタビリティーが高いと評するライダーもいれば、スポーティーさに欠けると評するライダーもいて、私は後者の側だ。

剛性の高い倒立フォークが採用されたこと、そのダンピングが硬めなこと、純正タイヤにメッツラーの「ロードテック01」が選ばれていることなどが安定方向に作用し、車重自体はCB650Fより6kg軽くなっているにもかかわらず、動きは終始スローである。

もっとも、これくらいおっとりとしているほうがいい、という声にも納得できる。おそらくホンダもそれを分かっていて、より一体感を求めるライダー向けに、セパレートハンドル&フルカウルの「CBR650R」が用意されている。

バイクは趣味の乗り物だが、だからといって必ずしもキャラが立っていたり、トガッていたりする必要はない。さりげなく生活に寄り添ってくれる存在を探しているのなら、CB650Rはそれに応えてくれるはずだ。

(文=伊丹孝裕/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)

ホンダCB650R
ホンダCB650R拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2130×780×1075mm
ホイールベース:1450mm
シート高:810mm
重量:202kg
エンジン:648cc 水冷4ストローク直列4気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:95PS(70kW)/1万2000rpm
最大トルク:64N・m(6.5kgf・m)/8500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:31.5km/リッター(国土交通省届出値)/21.3km/リッター(WMTCモード)
価格:97万9000円

伊丹 孝裕

伊丹 孝裕

モーターサイクルジャーナリスト。二輪専門誌の編集長を務めた後、フリーランスとして独立。マン島TTレースや鈴鹿8時間耐久レース、パイクスピークヒルクライムなど、世界各地の名だたるレースやモータスポーツに参戦。その経験を生かしたバイクの批評を得意とする。

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