既存の「ETC」とはどう違う? 次世代サービス「ETC2.0」導入で得られるメリットは
2019.11.20 デイリーコラム大きな違いは“双方向通信”
クルマに乗る人であればもはや知らない人はいないのが「ETC(エレクトロニック・トール・コレクション)」だ。分かりやすく言えば、有料道路を走行する際に、車両を停止することなく料金所を通過できる、料金収受のためのシステムだ。
このETC、普及の指標となるセットアップ数は累計9429万3429台(2019年9月末現在の累計)、利用率に関しても92.1%(同2019年4月末)と、いずれも非常に高いことがわかる。
2001年の本格運用開始から20年近くがたっているETCに対し、遅れること約10年後に登場したのが「ETC2.0」だ。本格的に運用されるようになったのは2016年だが、こちらは今ひとつ普及していないというのが現実。前述したセットアップ数が556万4762台(2019年9月末)と、ETCに大きく水をあけられている。
そもそもETCとETC2.0は何が違うのだろうか? 簡単に言ってしまえばETCは料金収受のための単一機能しか持たないのに対し、ETC2.0は大容量かつ高速の双方向通信機能を持っており、ETCよりも多彩なサービスを受けられるようになっている。
![]() |
IoT時代に向けて将来性は有望
実際にETC2.0を利用するには、対応する車載器を装着する必要がある。新車購入時ならば総支払額にインクルードしてしまえば(気持ちの上では)いいが、既存のETC装着車からわざわざ載せ替えるとなると、工賃などの出費もかさむ。それだけのメリットがあるのかどうかが気になる点だ。
先にネガティブな話をすると、ETC2.0の普及が伸びないのは、導入コストの高さも理由のひとつだ。一例を挙げると新型「トヨタ・カローラ」の場合、ディーラーオプションで設定されているETC(1.0)車載器の価格は最も低価格なもので1万1242円(消費税10%込み)なのに対し、ETC2.0の場合は2万5542円と倍額以上、これにセットアップ費用などがかかる(1.0でも必要だが)ので実際は3万円近くの出費になる。余談だが、これでもトヨタはかなり良心的なほうで、メーカーによっては3倍くらい高いケースも存在する。これでは2.0を選ぶことに二の足を踏んでしまうのもうなずける。
とはいえ、今後、IoT(身のまわりのあらゆるものがインターネットにつながる)化が進んでいくことを考えると、いずれはETC2.0が主流になることは間違いないだろう。
前述したようにETC2.0は大容量かつ双方向の通信機能を持つ。現在、全国の高速道路上の約1700カ所に設置されている「ITSスポット」と呼ばれるアンテナからデータを受信することで、進む先の高速道路上で発生している「落下物「渋滞・追突注意」「事故・規制」、さらに「災害時の道路状況」などを音声や画面表示で知らせてくれる。
また、既存のカーナビで使われてきた「電波/光ビーコン」に代わる形で搭載されるのが「DSRC通信方式」による高度な渋滞回避支援システムを備えた「ダイナミックルートガイダンス」と呼ばれる機能だ。渋滞回避といえば思いつくのがVICSだが、ETC2.0の場合、前述したITSスポットから前方1000kmまでの高速道路の渋滞情報を受信し、状況に応じて即座に最速ルートを再検索して提案してくれる。
このほか、対象の道の駅を利用するために一般道に降りても初乗り料金にリセットせずに「一時退出」とし、目的地まで高速道路を降りずに利用したのと同じ料金を適用するという実証実験も継続的に実施されている。また、現状でもETC2.0搭載車は、圏央道走行時に料金割引を受けられる。
今後は大容量通信のメリットを生かし、ガソリンスタンドやパーキングでの支払いに活用するのが当たり前になるだろう。支払いや入出庫のスピードアップは結果として回転率の向上につながり、ユーザーの利便性アップに大きく寄与するはずだ。
サービス提供者がETC2.0による精算システムを導入しやすくするためには、ETC2.0が広く普及することが必要だ。普及率を爆発的に向上させるためには、2009年に実施された「地方高速上限1000円」のような大胆な施策が必要だろう。
(文=高山正寛/写真=ITSサービス高度化機構、NEXCO東日本/編集=藤沢 勝)

高山 正寛
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?NEW 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか? 2025.10.10 満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。
-
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選 2025.10.9 24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。
-
NEW
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
NEW
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
NEW
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。 -
NEW
BMW M2(後編)
2025.10.16谷口信輝の新車試乗もはや素人には手が出せないのではないかと思うほど、スペックが先鋭化された「M2」。その走りは、世のクルマ好きに受け入れられるだろうか? BMW自慢の高性能モデルの走りについて、谷口信輝が熱く語る。 -
NEW
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2025.10.15試乗記スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。 -
第849回:新しい「RZ」と「ES」の新機能をいち早く 「SENSES - 五感で感じるLEXUS体験」に参加して
2025.10.15エディターから一言レクサスがラグジュアリーブランドとしての現在地を示すメディア向けイベントを開催。レクサスの最新の取り組みとその成果を、新しい「RZ」と「ES」の機能を通じて体験した。