アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)

堅実な三代目 2025.10.16 試乗記 佐野 弘宗 今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。
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エンジン搭載車の集大成……になる予定だった

2008年にデビュー(日本発売は2009年)した初代Q5は、最終的に累計160万台の大ヒット作となり、アウディそのもののビジネス規模を大きく引き上げる原動力となった。次いで2016年秋のパリモーターショーでアンベール(日本発売は翌2017年秋)した2代目Q5でも、その位置づけは大きく変わらず、アウディ全体の2割近い台数を占めてきたとか。

つい先日までのアウディは、2025年に最後のエンジン車を発表→2026年以降の新型車をすべて電気自動車(BEV)化→2033年にはエンジン搭載車の生産終了……という、2021年に公表した電動化ロードマップをもとに動いてきた。しかし、2025年3月にドイツ国内の人員削減を含むリストラとともに、エンジン搭載車生産の延長も発表。2033年の完全BEV化という目標は事実上、撤回された。

従来のロードマップがそのままだったら、この新型Q5(と、ひと足先に上陸した「A5/S5」)が、エンジン搭載アウディの総仕上げともいうべき存在となっていたはずだ。実際、Q5とプラットフォームを共有してきた「ポルシェ・マカン」は(いったん)BEV専用車になった。もっとも、A5やQ5は本国では2024年秋のデビューだから、エンジン搭載車発表ラストイヤーとされていた2025年に出た新型アウディは「Q3」だけど……。

いずれにしても、新型Q5は良くも悪くも、いかにも手堅い仕上がりだ。全長×全幅×全高=4715×1900×1655mmというスリーサイズは、先代Q5より30mm長く10mm低いだけ(全幅は変わらず)。ホイールベースも、日本仕様の諸元値は2820mmとなぜか先代より5mm短くなっているが、これは実質的に変わっていないということだろう。新開発とされる「PPC(プレミアムプラットフォームコンバッション)」も、基本的なパッケージレイアウトは従来の「MLBエボ」のそれをほぼ踏襲しているように見える。

2024年9月に世界初公開され、日本では2025年7月に発売された3代目「アウディQ5」。新世代のエンジン搭載車用プラットフォーム「PPC」を採用する2車種目の、SUVとしては初のモデルとなる。
2024年9月に世界初公開され、日本では2025年7月に発売された3代目「アウディQ5」。新世代のエンジン搭載車用プラットフォーム「PPC」を採用する2車種目の、SUVとしては初のモデルとなる。拡大
インテリアのデザインは最新のアウディ各車に共通のもの。操作系も同様で、ドアコンソールのコントローラーもパネル式とするなど、物理スイッチは極力排されている。
インテリアのデザインは最新のアウディ各車に共通のもの。操作系も同様で、ドアコンソールのコントローラーもパネル式とするなど、物理スイッチは極力排されている。拡大
フロントマスクはグリルやヘッドランプを従来モデルより高い位置に配し、SUVらしい顔の厚みを強調。試乗車は「S lineパッケージ」装着車で、目の粗い黒のシングルフレームグリルや、バンパー左右のエアカーテンチューブで迫力を増している。
フロントマスクはグリルやヘッドランプを従来モデルより高い位置に配し、SUVらしい顔の厚みを強調。試乗車は「S lineパッケージ」装着車で、目の粗い黒のシングルフレームグリルや、バンパー左右のエアカーテンチューブで迫力を増している。拡大
外装では、リアウィンドウプロジェクションライトも新しい装備。テールゲートスポイラーの下にハイマウントストップランプと連動して光る照明が仕込まれており、ブレーキを踏むとその明かりがリアウィンドウに反射。制動時の被視認性を高める。
外装では、リアウィンドウプロジェクションライトも新しい装備。テールゲートスポイラーの下にハイマウントストップランプと連動して光る照明が仕込まれており、ブレーキを踏むとその明かりがリアウィンドウに反射。制動時の被視認性を高める。拡大