2020年デビューが決定! 新型「BMW M3」を予想する
2020.01.29 デイリーコラムBMWモータースポーツからBMW Mへ
BMW M社の2019年度の世界販売台数が13万5829台に到達した。これは、前年比32.2%の増加で、同社の歴史において過去最高の記録になるという。
ここで少しBMW Mの歴史について振り返ってみる。1970年代初頭、BMWにおけるモータースポーツ活動の重要性が増していく中、1972年にBMWの子会社、BMW Motorsport GmbH(BMWモータースポーツ社)が設立された。これが現在のBMW Mのルーツだ。
そこで生みだされた「BMW 3.0CSL」は1973~1979年までヨーロッパ選手権で6度の優勝を果たし、ツーリングカーシーンを席巻。真っ白な下地に青/紫/赤の3本ストライプが入ったチームデザインは、Mの象徴として現在に受け継がれている。
それまでレーシングカーのみを製造していたBMWモータースポーツ社は、1970年代後半から“M Power”を熱望するBMWファンに向けて量産車の開発も手がけ始めた。この頃、エンジンをはじめサスペンションやブレーキを改良した「5シリーズ」の販売が始まっている。
そしてBMWモータースポーツ社による“M”の名を冠したスポーツカーの開発が始まった。それが1978年に誕生した「BMW M1」だ。また、1980年4月には、正式にF1への参加を表明。初のBMW F1エンジン開発に着手する。1982年からはブラバムが初のBMWエンジンでグランプリに参戦。デビューからわずか630日後に、ブラジル人ドライバーのネルソン・ピケがブラバムBMWで世界チャンピオンに輝いた。BMWは1987年までに9度のグランプリ優勝を果たした。
F1活動を終えたのち、新たなレースへの挑戦が始まった。1984年に始まったドイツツーリングカー選手権(DTM)である。1985年にE30型「3シリーズ」をベースとした初代「M3」を発表する。グループAのホモロゲーションを得るため年産5000台を見据えた、BMWとして初めてロードカーとモータースポーツ仕様車の並行開発を実現したモデルだった。初代M3は、2.5リッターの「M3スポーツエボリューション」が600台、手作業で組み立てられた「M3カブリオレ」が765台を含む、計1万7970台が販売された。
1993年、BMWモータースポーツ社はBMW M社(BMW M GmbH)へと改称。現在の業務はモータースポーツ関連の研究開発をはじめ、MモデルやMパフォーマンスモデルの開発、さらに特別注文モデル「BMWインディビジュアル」の生産、BMWドライビングエクスペリエンスの運営などその内容は多岐にわたる。
新型M3は初の4WDを採用か!?
こうしたBMW Mの変遷において、技術的なエポックをもたらし、かつブランドにとって重要な意味をもつモデルといえば、やはりM3だろう。1992年にはE36型をベースとした2代目M3を発表。3リッター直6エンジンを搭載し、クーペのほか、セダンとカブリオレも設定された。後期型では3.2リッターへと排気量を拡大。可変バルブタイミングシステムとして開発された「ダブルVANOS」やレースで培った技術を投入した「シーケンシャルMギアボックス(SMG)」を初めて採用した。
2000年にはE46型をべースとした3代目M3の販売が始まった。熱伝導性に優れ、高い耐久性が自慢となるフローティング構造のブレーキディスクを採用。軽量仕様の「CSL」(クーペ、スポーツ、軽量構造)の名が復活した。2007年に登場した4代目となるE92型M3では初めてV型8気筒エンジンを搭載した。軽量化のためルーフはカーボン製を、エンジンフードはアルミニウム製を採用した。
2014年に発売された5代目F80型M3では、エンジンはV8から直6へと回帰。M3としては初めてターボチャージャーを搭載した。そして3シリーズのクーペモデルが「4シリーズ」へと改称されたことを受け、セダンはM3のまま、クーペとカブリオレは「M4」を名乗った。
そして今年、2020年には6代目モデルの発表がアナウンスされている。パワートレインは先に市場投入されている「X3 M/X4 M」が採用する新型3リッター直6ターボエンジン、S58型ユニットを搭載するとみられる。X3 M/X4 Mでは、最高出力480PS/最大トルク600N・m(標準モデル)と、同510PS/同600N・m(「コンペティション」モデル)という2種類の仕様が用意されており、いずれも「M5」譲りのZF製8段ATと「xDrive」=4輪駆動システムを搭載。新型M3/M4もこれを流用し、M3史上初の4WDモデルが誕生すると目される。MT+FRのような、ベーシックな仕様が設定されるのかというのも気になるところだ。さらに言えば、このM謹製S58型ユニットを「Z4」、そして「トヨタ・スープラ」が搭載するといううわさもあり、新型M3/M4の誕生は、BMW Mの歴史において大きなターニングポイントとなるのかもしれない。
(文=藤野太一/写真=BMW/編集=藤沢 勝)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

藤野 太一
-
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える 2025.10.20 “ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る!
-
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する 2025.10.17 改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか? 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。