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【スペック】全長×全幅×全高=4620×1805×1425mm/ホイールベース=2760mm/車重=1630kg/駆動方式=FR/4リッターV8DOHC32バルブ(420ps/8300rpm、40.8kgm/3900rpm)/価格=996万円(テスト車=1081万3000円/M Driveパッケージ=45万円/ブラックレザーカーボン・ストラクチャー・トリム=9万1000円/BMW Individual ハイエンドオーディオシステム=26万円/サンプロテクションガラス=5万2000円)

BMW M3クーペ(FR/6MT)【試乗記】

スポーティ&ラクシャリー 2007.09.28 試乗記 笹目 二朗 BMW M3クーペ(FR/6MT)
……1081万3000円

伝統の直列6気筒エンジンに別れを告げ、新開発4リッターV8エンジンを積んだニュー「M3」。進化の過程で失ったものとは?

軌道修正

BMWの中でも「M3」はモータースポーツで活躍する金看板だ。外観こそクーペではあっても、中身は純粋なスポーツカーをさえ凌ぐ。そんな硬派であってほしい期待やイメージに反し、今度のE92M3は洗練された高性能クーペとして、ラクシャリー路線に軌道修正を図りつつあるように見える。

E46旧M3とは一見して違うと判るものの、大きくはみ出したフェンダーは樹脂、パワーバルジで誇張されたボンネットはアルミ、ルーフはカーボン、と軽量化されていることは一目瞭然。それでも重量はまだ1630kgもある。そして前235/40ZR18、後265/40ZR18の極太タイヤからは、タダモノではない迫力も伝わってくる。
全長×全幅×全高=4620×1805×1425mmのスリーサイズは大きめだし、2760mmとホイールベースも長い。回転半径=5.9mはいかにも大きいが、FRといえどもタイヤ切れ角で決まるから処置なしだ。

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乗り心地は意外にも……

大相撲力士を思わせる体躯ながら、それを軽々と高速域に誘うパワーはもちろん持ち合わせている。V8エンジンの排気量は4リッターとなり、パワーとトルクはそれぞれ420ps/8300rpmと40.8kgm/3900rpmにチューンされる。計算上のパワー・トゥ・ウェイト・レシオは3.88kg/psということになる。
高回転を得意としない直6に比べ、V8の短いクランクシャフトは、現在のBMW生産車では最高位の8250rpmを許容している。最大出力の発生回転は8300rpmとあるから、瞬間ならレッドゾーン侵入も容認するのだろう。このイエローやレッドゾーンの境界線は、水温の上昇と共に移動するユニークなメーターが使われており、オモチャとは言えない便利で実利的なものだ。

それにしても乗り心地は洗練されている。「スポーツ」「ノーマル」「コンフォート」と3段階に減衰力を選べるダンパーを装備するが、一番硬いはずのスポーツをもってしても普段の街乗りに不満はない。タイヤが温まらない冷間時にだけはちょっとコツコツ感じることもあるが、走り出してしまえばすぐ路面との緩衝作業に協力する。バネ系が柔らかいかといえばそうでもなく、縮まず伸びないサスペンションは車高も低く、踏切の横断など遠慮しなければならない箇所も多い。
にもかかわらず乗り心地がさほど悪くならないのは、まずボディ剛性が高く姿勢が常時フラットに保たれており、太いタイヤのエンベロープ特性が有効に生かされているからだろう。接地面の面圧分布は変化するが、基本的には4輪の重量配分が均等に近く大きくは移動しない。もちろん、長いホイールベースや広いトレッドもそれに協力する。ゆえにタイヤが磨耗してくると乗り心地は急激に悪化するかもしれない。

BMWの結論

減衰力の切り替えによる変化代がそれほど大きくないのは、縮み側を硬めないチューンだからで、それならばノーマルとスポーツの中間的なところで固定しても良さそうではある。この辺はユーザーに選択権を与えるよりも、メーカーとしてM3はこれでいいんだと引導を渡し、主張を通す方が潔いと思う。快適性を重視した部分に重量を割くのであれば、この種のオモチャはいらない。
パワーステアリングの操舵力も2種選べるが、同じ理由でこれも要らない。エンジン・レスポンスの選択に関しても、スイッチを切り換えた瞬間にスッと変化するレスポンスは認められるが、慣れてしまえば踏み分けはユーザーの意思が決めることだから、これも不要。

たしかに速いし安定しているし洗練もされているが、期待値に対して「鈍」な感触もないわけではない。それは重すぎる重量やおおき過ぎるサイズ、長いホイールベースやトレッドからくるもので、M5ならば許される性格であろう。M3にはもっと軽快な俊敏さを期待するのは私だけだろうか。それともBMWの遠大な計画の中には「M1」の構想もあるのだろうか。

と言ってけっしてM3にケチをつけるつもりはまったくない。1000万円クラスの高性能車のライバルを見渡せば、「ポルシェ911」や「アウディRS4」がすぐ頭に浮かぶ。乗ればそれぞれに面白い。けれどもRRや4WDではなく、FRの特性を好むユーザーには、目下コレしか選択肢はない。

(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

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