BMW M3クーペ(6MT)【ブリーフテスト】
BMW M3クーペ(6MT) 2001.12.14 試乗記 ……856.0万円総合評価……★★★★★
最もクール
1999年のフランクフルトショーでデザインスタディが披露されたときは、「マッチョにすぎる!」と思われた(すくなくともリポーターは思った)E46型M3だったが、ほぼそのまま市販化されてみると、やっぱりカッコいい。りゅうとしたスタイルで、リッチなアーバンライフ(ってナンだ!?)を華やかに演出する。リッター106psを誇る3.2リッター・ダブルVANOS付きは、343psと37.2kgmを発生、ボンドカーZ8同様、ボタンひとつで「ノーマル」から「スポーツ」への切り替えが可能。ハンサムカーは俄然、どう猛な顔を見せる。ストレート6のレスポンスときたら噛みつかんばかり。そのうえシャシーバランスもよいので、下手なら下手なりに、上手の手にかかればトンデもない速さを(たぶん)発揮して、ドライバーを楽しませてくれる。アツくなりすぎたら、786.0万円からの価格を思い出すべし。街乗りもハイスピードクルージングも、そしてアツい走りも涼しい顔でこなす、いま最もクールなホットモデルだ。
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【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行3シリーズ「E46型」は、1998年のジュネーブショーで、8年ぶりのフルモデルチェンジを経てデビューした。4ドアセダン、ワゴンの「ツーリング」、2ドアクーペ、オープンモデルの「カブリオーレ」、5ドアハッチバックの「コンパクト」(日本では2001年11月24日から販売開始)、そしてクーペベースのスポーツバージョン「M3」と、豊富なバリエーションを誇る。
エンジンもバラエティに富む。1.8リッター直4DOHC(コンパクト)、2リッター直4DOHC、2.2リッター直6DOHC、2.5リッター直6DOHC、3リッター直6DOHC、3.2リッター直6DOHC(M3)をラインナップ。本国仕様には4気筒、6気筒のディーゼルエンジンもある。トランスミッションは、5段MT、4段ATと5段AT。さらに「SMG」(シーケンシャルMギアボックス)と呼ばれる、クラッチを電子制御してギアを変えるシーケンシャルトランスミッションが、「M3」とセダン「330i M-Sport」にオプション設定される。
(グレード概要)
「M3」は、3シリーズクーペをベースとする高性能スポーツ。本国にはオープンモデル「Mコンバーチブル」もラインナップされる。3代目となるE46型は、2000年12月26日に国内導入が開始された。
ファットなタイヤはくため、フェンダーが拡げられ、ベースとなったクーペより全幅が25mm広い。
心臓部の3.2リッター直6 DOHCエンジンは、排気量を先代M3の3201ccから3246ccへと拡大、パワーは22psアップ、トルクは1.5kgm太くなり、最高出力343ps/7900rpm、最大トルク37.2kgm/4900rpmを発生する。トランスミッションは6段MT。オプションとして、シーケンシャルトランスミッション「SMG-II」(プラス43.0万円)も選べる。「SMG-II」は、ステアリングホイールに備わる「パドル」によるギアチェンジや、走行状態にあわせ「オートマチックモード(Aモード)」とマニュアルシフトの「シーケンシャルモード(Sモード)」を選べる機能をもつ。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ)……★★★
派手な演出はないが、いかにもスポーティ。オンボードコンピューターを備え、ウィンカーレバーの先についたボタンを押すことで、「外気温度」「平均燃費」「推定後続距離」「平均速度」をメーターパネルのディスプレイに表示できる。ステアリングホイールのスポークには、クルーズコントロール、オーディオ類のリモートスイッチあり。センターコンソールに、走行モードを切り替える「Mドライビングダイナミクスコントロール(M DDC)」「タイヤ空気圧警告システム(RDW)」ほか、「ダイナミックスタビリティコントロール(DSC)」のスイッチあり。つまり、電子デバイス介入なしのドライブが可能だ。
(前席)……★★★★
ステッチが贅沢な、手の込んだレザーのバケットシート。テスト車は、オプションのナッパーレザー仕様。革は張り気味だが、あたりは適度にソフト。シートのサイズはやや大きいが、ハードコーナリングではサイドサポートがしっかり上体をホールドしてくれる。運転席、助手席ともパワーシート(運転席側は、3ポジションまでメモリー可能)。座面長を前部のサイサポートを伸ばすことで調整できる。
(後席)……★★
ヘッドクリアランスをかせぐためにオシリの位置がやや沈められるが、それでもサイズ、空間ともじゅうぶん実用的。ルーフは頭上まで伸びる。左右ふたり分のヘッドレストが、背もたれにではなく、ボディ側に設置されるため、バックレストを倒すときに引き抜く必要がない。リアシートは車検上3人乗りだが、中央席は2点式シートベルトのうえヘッドレストがなく、足もとにはセンタートンネルが通って空間的にもミニマム。アームレストの場所と割り切った方がいい。
(荷室)……★★★★
ハイパフォーマンスカーであることを、なんら言い訳にしないラゲッジルーム。そのうえ後席は分割可倒式だ。ただし、欧州版には設定される、バックレスト中央を貫通するスキーバッグは用意されない。「Mモビリティシステム」、つまりボンベ式のパンク修理材を積むため、床下にはスペアタイヤなし。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
先代のボア×ストローク=86.4×91.0mmの3.2リッターから、87.0×91.0mmの3.3リッター(3246cc)にわずかに拡大されたE46版M3。圧縮比も11.5:1と高まった。吸排気双方のバルブタイミングをコントロールする「ダブルVANOS」を搭載、野太い音で、街乗りでも常に存在を誇示する。「スポーツ」モードにしようものなら、もう大変。ウナリ声がさらに高まり、ココロを決めて「エイヤ!」とスロットルペダルを踏み込まねばならぬ、感じ。クロースレシオの6段MTを駆使して加速すれば、100km/hまでわずか5.2秒(ただしカタログ値)。これは、ポルシェ911カレラと同じ数値だ。おもしろいのは、ハイチューンエンジンを守るため、タコメーターに可変式警告ゾーンが採用されたこと。4000rpmから500rpm刻みでオレンジ色のランプが用意されてイエローゾーンを明示、水温が上がるに従って消えていく。シフトフィールは、ビンとギアレバーを弾くようなビーエム独特のものだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ボンネットに届かんばかりのホイールハウスまわりのフレア、ノーマルでもシャコタンに見える同じくホイールハウスとタイヤの隙間、といったハードな外観から想像されるより、よほど文化的な乗り心地。シートのデキのよさにも助けられていようが、境目の多い首都高速を走っていても、不快になることはない。驚くべくはハンドリングのよさで、前225/45ZR18、後255/40ZR18という太く薄いタイヤを履きながら、素晴らしいレスポンスの大パワーNAユニットと良好な前後重量配分(車検記載値で780:800kg)の恩恵で、お高くとまることなく、ちゃんと“遊んで”くれる。峠では、ちょっと走っただけでも、顔が火照るほどタノシイ!
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2001年12月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年型(2002年モデル)
テスト車の走行距離:1万1524km
タイヤ:(前)225/45ZR18(後)255/40ZR18(いずれもMichelin Pilot Sport)
オプション装備:電動ガラスサンルーフ(13.0万円)/Splitナッパーレザー内装+フロントシートヒーター+つや消し仕上げユーカリウッドトリム(17.0万円)/ナビゲーションシステム(40.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:637.8km
使用燃料:84.0リッター
参考燃費: 7.6km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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