【F1 2020】第5戦70周年記念GP「レッドブル・ホンダは速さで負けてもタイヤで勝つ」

2020.08.10 自動車ニュース
F1第5戦70周年記念GPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
F1第5戦70周年記念GPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2020年8月9日、イギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1世界選手権第5戦70周年記念GP。1週間前のイギリスGPと同様にタイヤに苦労するメルセデスを尻目に、レッドブルが華麗なる勝利を手にしたのだった。

今季これまでメルセデスに勝負を挑めていなかったレッドブル勢は、予選4位のフェルスタッペン(写真)にハードタイヤを履かせてスタートさせるという作戦に打って出た。これが奏功し、フェルスタッペンは長めの第1スティントを成功させ、ハードタイヤに苦戦するメルセデスを尻目にトップを快走。今季初、通算9勝目となる勝利を挙げ、ドライバーズランキングでも2位に躍り出た。アレクサンダー・アルボンも予選9位から順位を上げ5位入賞を果たした。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
今季これまでメルセデスに勝負を挑めていなかったレッドブル勢は、予選4位のフェルスタッペン(写真)にハードタイヤを履かせてスタートさせるという作戦に打って出た。これが奏功し、フェルスタッペンは長めの第1スティントを成功させ、ハードタイヤに苦戦するメルセデスを尻目にトップを快走。今季初、通算9勝目となる勝利を挙げ、ドライバーズランキングでも2位に躍り出た。アレクサンダー・アルボンも予選9位から順位を上げ5位入賞を果たした。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
予選でチームメイトのバルテリ・ボッタスに僅差で敗れ2位に終わったメルセデスのルイス・ハミルトン(写真)。レースでもスタートから2位をキープするも、タイヤのマネジメントに苦心、ブリスター(火ぶくれ)が出てペースが伸び悩んだ。終盤のタイヤ交換で4位に落ちるも、シャルル・ルクレール、ボッタスを抜き去り2位でゴール。先週のタイヤトラブルでピレリから内圧を高めるよう指示があり、これがブリスターの原因となったのではないかと疑っていた。なお今回は、ハミルトンにとっては155回目のポディウムとなり、ミハエル・シューマッハーの最多記録に肩を並べた。(Photo=Mercedes)
予選でチームメイトのバルテリ・ボッタスに僅差で敗れ2位に終わったメルセデスのルイス・ハミルトン(写真)。レースでもスタートから2位をキープするも、タイヤのマネジメントに苦心、ブリスター(火ぶくれ)が出てペースが伸び悩んだ。終盤のタイヤ交換で4位に落ちるも、シャルル・ルクレール、ボッタスを抜き去り2位でゴール。先週のタイヤトラブルでピレリから内圧を高めるよう指示があり、これがブリスターの原因となったのではないかと疑っていた。なお今回は、ハミルトンにとっては155回目のポディウムとなり、ミハエル・シューマッハーの最多記録に肩を並べた。(Photo=Mercedes)拡大

タイヤトラブルの原因 そしてレーシングポイントの違反

コロナ禍がなければ付けられなかったであろう、国名も地理的な名前も付かない「70周年記念GP」などという奇異な呼び名は、同時にF1誕生から70周年を祝える2020年だからこそ実現したもの。1950年5月13日、ここシルバーストーンから始まったF1の長い歴史の節目にふさわしいネーミングとなった。

今季2度目の3連戦、その2戦目を前にした短い期間にも話題は尽きなかった。まずは1週間前に同じコースで行われた前戦イギリスGPでは、レース終盤にメルセデスの2台をはじめとする数台が相次いで左フロントタイヤのトラブルに見舞われ、優勝したルイス・ハミルトンは3輪でチェッカードフラッグを受けるというドラマチックな終幕となっていた。レース後、タイヤサプライヤーのピレリは、「高速化著しい今季のF1マシンで、高速コースのシルバーストーンを予想以上に多く周回した結果」と分析し、今週末はタイヤの内圧を上げるよう通達。もともと70周年記念GPでは、前週より1ランクやわらかいタイヤとすることが決まっていたため、各陣営ともタイヤにより慎重になったうえでレースに臨まなければならなくなった。

コース外での話題は、またもレーシングポイントがさらった。先週、新型コロナウイルスで陽性反応が出て欠場せざるを得なかったセルジオ・ペレスが引き続き陽性となり、今回もニコ・ヒュルケンベルグが代役を務めることに。さらにルノーが抗議していたレーシングポイントのブレーキダクトの合法性について、FIA(国際自動車連盟)が設計に関するルールに違反があったとし、レーシングポイントにコンストラクターズポイント15点の剥奪(はくだつ)と40万ユーロ(約5000万円)の罰金を科したのだが、ライバルはこの裁定に納得しておらず、この問題はしばらく後を引きそうである。

今シーズンも他を圧倒する速さで4戦4連勝中だったメルセデスは、バルテリ・ボッタスとの契約を更新し2021年までとすることを発表した。今年の開幕戦で優勝、4戦終わってハミルトンに次ぐドライバーズランキング2位につけていたボッタス。常勝チームの安定感には十分寄与しているということが残留につながった。なおハミルトンの去就は決まっていないものの、来季もメルセデスに残ることはほぼ間違いないと見られている。

会心のポールラップを決めたまではよかったが、先週に引き続きレースでは難局に直面することとなったメルセデスのボッタス(写真)。1週間前は2位走行中にタイヤが壊れ無得点、今回もタイヤに足を引っ張られ、トップから3位フィニッシュとなった。「とてもフラストレーションがたまっている」とはレース後の弁。ドライバーズランキングでもフェルスタッペンに2位を奪われ3位に転落した。(Photo=Mercedes)
会心のポールラップを決めたまではよかったが、先週に引き続きレースでは難局に直面することとなったメルセデスのボッタス(写真)。1週間前は2位走行中にタイヤが壊れ無得点、今回もタイヤに足を引っ張られ、トップから3位フィニッシュとなった。「とてもフラストレーションがたまっている」とはレース後の弁。ドライバーズランキングでもフェルスタッペンに2位を奪われ3位に転落した。(Photo=Mercedes)拡大
苦戦が続くフェラーリは、シャルル・ルクレール(写真)が予選8位と中団に埋もれるも、ミディアムからハードに変える1ストップ作戦を成功させて4位フィニッシュ。今季の遅いマシンでも着実にポイントを稼いでおり、5戦を終えてドライバーズランキング4位につけている。一方のセバスチャン・ベッテルはスランプ真っただ中で、予選でQ3に出られず12位、ライバルのペナルティーで11番グリッド。レースではスタート直後にスピンして最後尾に落ち、結果12位。レース中、タイヤ交換のタイミングが悪く渋滞の中に戻されたことでチームに盾突くシーンも見られた。(Photo=Ferrari)
苦戦が続くフェラーリは、シャルル・ルクレール(写真)が予選8位と中団に埋もれるも、ミディアムからハードに変える1ストップ作戦を成功させて4位フィニッシュ。今季の遅いマシンでも着実にポイントを稼いでおり、5戦を終えてドライバーズランキング4位につけている。一方のセバスチャン・ベッテルはスランプ真っただ中で、予選でQ3に出られず12位、ライバルのペナルティーで11番グリッド。レースではスタート直後にスピンして最後尾に落ち、結果12位。レース中、タイヤ交換のタイミングが悪く渋滞の中に戻されたことでチームに盾突くシーンも見られた。(Photo=Ferrari)拡大

ボッタスは僅差でポール ヒュルケンベルグが驚きの予選3位

この週末、各チームが頭を悩ませたのが、先週より1段やわらかくなったタイヤだ。もともとタイヤに厳しいコース特性に加え、気温も高めとなり、一番速いとされるソフトでは1周のアタックすらもたないかもしれないような状況。各陣営、レースを見据えたマネジメントに苦心した。

案の定、トップ10台のレース用スタートタイヤが決まる予選Q2では、多くがミディアムを選択。レッドブルのマックス・フェルスタッペンは果敢にもハードでアタックしベストタイムを記録するなど、ソフトは徹底的に嫌われた。Q3に入ると、トップランナーのメルセデスはまずソフトでタイムを出し、ハミルトンが暫定1位、0.116秒差でボッタス2位。これが2度目のアタックではミディアムでタイムアップを果たし、ボッタスが見事逆転して開幕戦に次ぐ今季2度目、通算13回目のポールポジションを奪った。

シルバーストーンを得意とするハミルトンは0.063秒という僅差で2位だった。メルセデスの最前列独占は珍しいものでもないが、3位に入ったのがレーシングポイントで2戦目のヒュルケンベルグだというのは驚きの結果。レッドブルはフェルスタッペンがポールから1.022秒離され4位、アレクサンダー・アルボンはさらに0.5秒ほど遅れての9位だった。

ルノーのダニエル・リカルドが今季ベストの予選5位。レーシングポイントのランス・ストロール6位、アルファタウリで好調のピエール・ガスリーは今季3度目のQ3進出で7位につけた。フェラーリは、シャルル・ルクレール8位、セバスチャン・ベッテルはQ2敗退の12位となるも、ルノーのエステバン・オコンが他車を邪魔したとして3グリッド降格したことで、11番グリッドに繰り上がった。そして10番グリッドには、マクラーレンのランド・ノリスがつけた。

先週、セルジオ・ペレスの新型コロナウイルス感染で代役として白羽の矢が立ったニコ・ヒュルケンベルグ(写真)は、レーシングポイントでの2戦目で誰もが驚く予選3位を獲得。前戦はトラブルで出走できなかったため、252日ぶりに臨むレースでの好成績に期待も高まった。スタートでフェルスタッペンに抜かれ、また1ストッパーのルクレールにも先を越されるも、レース終盤まで5位を好走。しかしタイヤのバイブレーションがひどくなり緊急ピットインを余儀なくされ、結果7位に終わった。ランス・ストロールは予選順位と同じ6位でチェッカードフラッグを受けた。(Photo=Racing Point)
先週、セルジオ・ペレスの新型コロナウイルス感染で代役として白羽の矢が立ったニコ・ヒュルケンベルグ(写真)は、レーシングポイントでの2戦目で誰もが驚く予選3位を獲得。前戦はトラブルで出走できなかったため、252日ぶりに臨むレースでの好成績に期待も高まった。スタートでフェルスタッペンに抜かれ、また1ストッパーのルクレールにも先を越されるも、レース終盤まで5位を好走。しかしタイヤのバイブレーションがひどくなり緊急ピットインを余儀なくされ、結果7位に終わった。ランス・ストロールは予選順位と同じ6位でチェッカードフラッグを受けた。(Photo=Racing Point)拡大
アルファタウリの2台は対照的な週末を過ごした。ここのところ好調なピエール・ガスリーは、5戦して3度目のQ3進出を果たし、トップチームのレッドブルを駆るアレクサンダー・アルボンを上回る予選7位につけた。しかしレースでは、アルボンのピットストップに合わせて自らも予定外のタイヤ交換を余儀なくされ、トラフィックの中を走行するなどしてタイヤのコンディションが悪化、ポイント圏外の11位でゴールした。一方、ダニール・クビアトは予選で16位と後方に沈むも、レースでは10位でフィニッシュし1点を獲得することとなった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
アルファタウリの2台は対照的な週末を過ごした。ここのところ好調なピエール・ガスリーは、5戦して3度目のQ3進出を果たし、トップチームのレッドブルを駆るアレクサンダー・アルボンを上回る予選7位につけた。しかしレースでは、アルボンのピットストップに合わせて自らも予定外のタイヤ交換を余儀なくされ、トラフィックの中を走行するなどしてタイヤのコンディションが悪化、ポイント圏外の11位でゴールした。一方、ダニール・クビアトは予選で16位と後方に沈むも、レースでは10位でフィニッシュし1点を獲得することとなった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

フェルスタッペンがメルセデス2台を抜き首位に

このレースの最大のポイントとなったのは、やはりタイヤだった。そして、上位10台中、唯一ハードタイヤを装着してスタートすることとなったフェルスタッペンがしっかりとタイヤマネジメントを遂行する一方、予選でライバルより1秒も速かったメルセデス勢がハードに手を焼いたことで、その展開はいよいよ面白みを増していったのだった。

気温26度、路面温度43度という暑さの中、52周のレースが幕を開けると、4番グリッドのフェルスタッペンはすぐさま3位に上がり、序盤から1位ボッタス、2位ハミルトンを視野に入れての周回が続いた。首位ボッタスには「(負荷のかかる)左フロントタイヤに気をつけろ」とチームから指示が出され、また2秒差でメルセデス勢の尻尾に食いつくフェルスタッペンにも「近づきすぎるとタイヤを傷める」とピットから注意が飛んだ。それほど、各陣営タイヤに神経をとがらせていたのだ。

14周目、上位陣で最初にピットに入ったのはボッタス。翌周ハミルトンもこの動きに倣い、ミディアムからハードに換装した。これで1位となったフェルスタッペンは、ハードのスタートタイヤをいたわりながら周回を重ねた。その後ろ、ニュータイヤで2位まで追い上げてきたボッタスと3位ハミルトンは、レッドブルとの差を縮められず、むしろギャップは1周につき1秒程度開いていった。メルセデスがハードで苦労していることは、伸び悩むタイムからも、タイヤのブリスター(火ぶくれ)の跡からも明らかだった。

26周目、2位ボッタスに対する首位フェルスタッペンのリードは19秒。このタイミングでレッドブルはフェルスタッペンにミディアムを与え、ボッタスの真後ろ、2位でコースに戻した。フェルスタッペンは、タイヤのコンディションが思わしくないボッタスをあっという間に抜き去り、再び1位の座に返り咲いた。

F1の70周年を記念した今回のGP。1950年5月の第1戦に出場していた唯一の現役チームがアルファ・ロメオである(ただし現チームの実態はスイスのザウバーだが)。70年前は優勝をさらい無敵を誇ったアルファも、今年はテールエンダーに成り下がっており、この週末も予選でアントニオ・ジョビナッツィ(写真)19位、キミ・ライコネン20位と最後尾に並ぶことに。レースではライコネン15位、ジョビナッツィ17位とポイント獲得には遠かった。(Photo=Alfa Romeo Racing)
F1の70周年を記念した今回のGP。1950年5月の第1戦に出場していた唯一の現役チームがアルファ・ロメオである(ただし現チームの実態はスイスのザウバーだが)。70年前は優勝をさらい無敵を誇ったアルファも、今年はテールエンダーに成り下がっており、この週末も予選でアントニオ・ジョビナッツィ(写真)19位、キミ・ライコネン20位と最後尾に並ぶことに。レースではライコネン15位、ジョビナッツィ17位とポイント獲得には遠かった。(Photo=Alfa Romeo Racing)拡大
レーシングポイントのブレーキダクトの合法性に関して、ルノーの抗議を受けてFIA(国際自動車連盟)が調査した結果、レーシングポイントにコンストラクターズポイント15点の剥奪(はくだつ)と40万ユーロ(約5000万円)の罰金というペナルティーが科された。ブレーキダクトは、2020年からオリジナル設計が義務付けられる「リステッドパーツ」とされているが、前年まではチーム間でやり取りができた。FIAは、レーシングポイントがメルセデスの2019年型ブレーキダクトを模倣し、2020年型マシンに採用したという“デザインプロセス”に違法性を認めたことになる。しかし、技術的には今季型マシンに装着されるブレーキダクトには問題がないとされており、引き続き使用できるため、ペナルティーの内容を含めライバルチームは納得していない。この問題は後を引きそうである。(Photo=Racing Point)
レーシングポイントのブレーキダクトの合法性に関して、ルノーの抗議を受けてFIA(国際自動車連盟)が調査した結果、レーシングポイントにコンストラクターズポイント15点の剥奪(はくだつ)と40万ユーロ(約5000万円)の罰金というペナルティーが科された。ブレーキダクトは、2020年からオリジナル設計が義務付けられる「リステッドパーツ」とされているが、前年まではチーム間でやり取りができた。FIAは、レーシングポイントがメルセデスの2019年型ブレーキダクトを模倣し、2020年型マシンに採用したという“デザインプロセス”に違法性を認めたことになる。しかし、技術的には今季型マシンに装着されるブレーキダクトには問題がないとされており、引き続き使用できるため、ペナルティーの内容を含めライバルチームは納得していない。この問題は後を引きそうである。(Photo=Racing Point)拡大

今年もメルセデスの連勝を止めたレッドブル&フェルスタッペン

33周目、1位フェルスタッペンと2位ボッタスが同時にピットに入り、ともにハードを選択。これで2台は同条件となり、タイヤに優しいレッドブルは形勢有利を維持したまま終盤に入った。

一方ハミルトンは、大きなブリスターができたタイヤでトップを走り続けるも、42周目に2度目のタイヤ交換を行ったことで4位に後退してしまう。その後は王者らしい猛チャージで瞬く間にルクレールを抜き3位に上昇。メルセデスは2人のドライバーに「クリーンならレースをしていい」と許可を出し、残り3周でハミルトンがボッタスを抜き去り、2位でチェッカードフラッグを受けた。

こうしたメルセデス同士のつばぜり合いがあったとしても、今回の主役がフェルスタッペンであることに変わりはなかった。ハードタイヤでのスタート、タイヤをいたわっての長めの第1スティント、メルセデス&ボッタスを封じ込める2度目のタイヤ交換、そして快調に飛ばすことができたマシン。すべてが高次元でバランスされたうえでの勝利だった。

思い返せば2019年シーズンも、開幕から8連勝していたメルセデスを止めたのはレッドブル&フェルスタッペンだった。快進撃を続ける王者にも弱点があるということ、また一発の速さでかなわないからといって、レースをあきらめる必要はまったくないということを思い知らされた一戦だった。

3連戦の3戦目、第6戦スペインGP決勝は、8月16日に行われる。

(文=bg) 

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