【F1 2020】第7戦ベルギーGP「7冠まっしぐらのハミルトンに敵なし ミスなし 隙もなし」
2020.08.31 自動車ニュース![]() |
2020年8月30日、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで行われたF1世界選手権第7戦ベルギーGP。第3戦ハンガリーGPからポイントランキング首位を守るルイス・ハミルトンが、今回もパーフェクトな戦い方で勝利をおさめた。
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2020年の全17戦が確定 コンコルド協定も合意に
8月25日、新型コロナウイルスの影響で大幅な変更を余儀なくされていたF1の2020年シーズン全戦がようやく確定。発表済みの13戦を終えると、第14戦には9年ぶりのトルコGP(決勝11月15日)が続き、第15戦バーレーンGP(同11月29日)の後は、同じバーレーンでの第16戦サキールGP(同12月6日)、そして最終戦アブダビGP(同12月13日)という全17戦のカレンダーとなった。中でもバーレーンでの2戦目となるサキールGPは、サーキット外周路を使った初のオーバルコースで行われるというから注目。伝えられるレイアウト図を見れば、オーバルというより直線基調の“台形サーキット”といった感じのようだが、シーズン後半に新たな目玉が加わったことは歓迎すべきであろう。
こうして今季の見通しが立った一方、F1の大事な“約束”もかわされていた。F1、FIA(国際自動車連盟)、そしてF1全チームが、通称「コンコルド協定」に合意したのだ。原則、内容は非公開とされるこの協定は、F1の運営方法やレギュレーション変更の手続き、テレビ放映権の収益や賞金の分配方法などを規定しているといわれており、チームはこれにサインしないとF1に参戦できない。
今回、合意に至ったということは、既存10チームが2021年から2025年までF1を継続するつもりであることを意味する。長年の懸案事項だった一部特権的なチームとその他の分配金等不均衡問題については是正されたと見られており、既に来季より始まることが決まっている予算上限ルールとともに、F1はより安定した状態で次なるステップに進むことができるようになった。
そして、ウィリアムズの新オーナーが決まったというニュースも入った。成績不振により厳しい経営状況に置かれていた名門チームに手を差し伸べたのは、アメリカの投資会社ドリルトン・キャピタル。合計16ものタイトルを獲得しているウィリアムズの名前やファクトリーなどは維持されるというが、創設者フランク・ウィリアムズを中心とするチーム首脳を含めた体制については、まだ発表されていない。何はともあれ、F1から伝統あるチームがいなくなることはなくなったというのは朗報である。
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ハミルトンの“異星人並み”の速さ フェラーリの驚きの遅さ
3連戦を2回終えた多忙極まる2020年シーズンは、ベルギーGP、イタリアGP、そしてイタリアはムジェッロでのトスカーナGPと続く“秋の高速コース3連戦”に突入した。
ベルギーでは、今季これまで6戦5勝のメルセデスがいつも通り他を引き離す展開だったが、より際立っていたのが、今季大苦戦中のフェラーリの遅さだった。3回のフリー走行では一度もトップ10に入れず、予選ではなんとかQ1落ちは免れたものの、2台そろってQ2どまりとなり、シャルル・ルクレール13位、セバスチャン・ベッテルは14位だった。昨季のベルギーGPでは、予選までの全セッションで1-2、レースではルクレールが初優勝、ベッテル4位と圧倒的な速さを見せていただけに、フェラーリの凋落(ちょうらく)ぶりには当事者ルクレールも驚きを隠せなかった。
今季5回目、通算93回目のポールポジションを奪ったのはルイス・ハミルトン。2位につけた僚友バルテリ・ボッタスとの差が0.511秒もあったというのは特筆すべきことだった。一発の速さのための「予選モード」禁止は今回見送られたのだが、他車ならともかく、同じマシン同士でのギャップとしてはあまりに大きく、チーム代表のトト・ウォルフも「(ハミルトンは)まるで異星人のようだ」と舌を巻いた。
予選3位は、レッドブルを駆るマックス・フェルスタッペン。ブラックアローに次ぐいつものポジションではあったものの、ボッタスに0.015秒と肉薄していたのがいつもと違うところだった。高速コースに合わせ込んだルノーの2台が上位グリッドに食い込み、ダニエル・リカルド4位、レッドブルのアレクサンダー・アルボンを間に挟んで、エステバン・オコンは6位だった。
マクラーレンのカルロス・サインツJr.が7位、その後ろにはレーシングポイントの2台、セルジオ・ペレス8位、ランス・ストロール9位と並び、トップ10最後尾にはマクラーレンのランド・ノリスがつけた。
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セーフティーカーで各車ハードにスイッチ
変わりやすい天候“スパ・ウェザー”は、大きく崩れることなくレースデーを迎えた。トップ10グリッドについたマシンでは、メルセデスの2台とフェルスタッペンがミディアムタイヤ、その他はソフトを選択。44周レースが幕を開けると、ハミルトン、ボッタスの後ろでフェルスタッペンとリカルドがつばぜり合いを繰り広げるも、レッドブルが3位を死守。4位リカルド、5位オコンとルノー勢が続いた。
5周を過ぎるころには、1位ハミルトンのリードは1.6秒となり、2位ボッタスと3位フェルスタッペンの間には2.7秒のギャップができた。フェルスタッペンは前のメルセデス2台に追いつけないという、いつものパターンになりつつあった。
11周目、アルファ・ロメオのアントニオ・ジョビナッツィがクラッシュ、直後に通りかかったウィリアムズのジョージ・ラッセルも巻き添えを食らってしまった。ここでセーフティーカーが出動すると、多くのドライバーがピットになだれ込み、ほとんどがハードに履き替えてしまった。つまり、このままノンストップで走りきるということが可能となり、レースはいかにタイヤを最後まで持たせるか、我慢比べの様相を呈することとなる。
1位ハミルトン、2位ボッタス、3位フェルスタッペン、4位にピットストップをしなかったアルファタウリのピエール・ガスリー、5位に同じくノンストップで走り続けたペレスという順位になり、15周目に再スタート。再び先頭を守ったハミルトンは、一瞬パワーロスを訴えるもすぐに元に戻り、2位ボッタスを引き離しにかかった。
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トップ3はハードタイヤで我慢のレース 元気だったルノー勢
レースは折り返し地点を過ぎ、首位ハミルトン、2位ボッタス、3位フェルスタッペンの車間は広がり始める。ボッタスは左足のしびれを、フェルスタッペンはタイヤのバイブレーションを、それぞれ訴えていた。
では、トップのハミルトンに問題はなかったかといえばさにあらず。こちらもハードタイヤの摩耗が進み、ロックアップさせるシーンも見られるようになった。残り5周、トップ3台は6秒ずつ離れ間延びした展開。ハミルトンもタイヤが苦しくなり、終盤はペースを緩めざるを得なかった。最終的にハミルトンは8.4秒のリードを築いてチェッカードフラッグを受け、3位でゴールしたフェルスタッペンはボッタスから15.4秒も離されていた。
我慢を強いられていたトップ3の後ろでは、ルノー勢が元気な走りを披露。4位に終わったリカルドは、メルセデスらと同じハードタイヤで最終周にファステストラップを記録するほど。オコンも5位に入り、高速コースでの連戦初戦でいい感触を得ていた。
7戦5勝のハミルトンが、敵なし、ミスなし、隙もなしで47点もの大量リードを築いた。ランキング2位フェルスタッペンと3位ボッタスの間には、たった3点の差。7度目のタイトルに向けてひた走るハミルトンに、待ったをかけるものは誰なのか、それともいないのか……。
次戦はモンツァを舞台としたイタリアGP。決勝は1週間後の9月6日に行われる。
(文=bg)
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