普及が進めばいいことずくめ

実際、今回の技術発表に際して行われた構造部材の成型にかかる時間は、従来工法の約80%短縮を達成したという。つまりは同じ時間で数倍の数のパーツが生み出せることになる。これにかかるコストに関して開発陣は明言を避けたが、製造コストが抑えられればパーツ単価も下げられるのは間違いないだろう。

日産自動車は、この技術を用いて作り上げた構造部材を2024~2025年に登場予定の新型EVに採用すると明言した。

EVのキモであるバッテリーは、航続距離の確保という点から言えば数多く積めるのが望ましいものの、そのいっぽうで当然ながら重量は増していく。そんなジレンマがあったからこそこの工法が生み出された。C-RTM工法を用いて作り上げられたパーツで骨格の側から軽量に仕立てていけば重量増は避けられ、ひいては燃費(電費)も向上する。開発陣はアルミやハイテン鋼、そしてCFRPの組み合わせによって車両全体で80kgのダイエットが実現できるという。

今回のパーツ量産工程のデモンストレーションとして題材に挙げられたのは、複雑な形状で高精度と強度が要求されるボディーの構造部材だった。例えばこれがもっと単純な形状のパネルだったなら、さらなる時短と量産化、低価格化が望めるはず。となれば、4~5年後の新型EVの採用まで待つ必要もないのではなかろうか。

開発陣はもとより、クルマ好きが思うのは「軽いことは何より正義である」ということ。車重が軽くなれば、少ないパワーでも、加速力アップを含めフットワークが軽快になるはずだし、もちろん燃費もよくなる。CFRPの採用によりボディーの高剛性化が実現するならば、安全性も増し、あるいは土台が強固になることでサスペンションなどの稼働部分も本来の性能を十全に発揮できるだろう。

リサイクルしにくいという点を考えると手放しで喜ぶことはできないものの、クルマを操る側からすれば、CFRPの量産と採用拡大による恩恵は多岐にわたるはず。そんな大きな期待を抱かせる量産化技術だからこそ、どんどん前倒しして投入する姿勢を見せれば、ユーザーが日産自動車を見る目も変わってくるのではないだろうか。というわけで、やっぱり締めは「やっちゃえ、技術の日産」なのである。

(文=桐畑恒治/写真=日産自動車/編集=関 顕也)

今回公開された、CFRP部品成型の作業風景。成型に要する時間は車両の量産に対応できる速さにまで短縮された。
今回公開された、CFRP部品成型の作業風景。成型に要する時間は車両の量産に対応できる速さにまで短縮された。拡大
これらのCFRP部品は、アルミパーツやハイテン材(高張力鋼板)との複合で用いられ、車両1台あたり約80kgの軽量化を実現するという。
これらのCFRP部品は、アルミパーツやハイテン材(高張力鋼板)との複合で用いられ、車両1台あたり約80kgの軽量化を実現するという。拡大
発表会の席でCFRPの新量産技術について説明する、日産自動車の坂本秀行副社長。新技術によりCFRPパーツがどれだけ安くなるか具体的な数値は示されなかったものの、「大幅な原価低減は可能になった」「特殊なクルマにしか使っていなかったCFRPを幅広く量産車に使えるめどがたった」と、その意義を強調した。
発表会の席でCFRPの新量産技術について説明する、日産自動車の坂本秀行副社長。新技術によりCFRPパーツがどれだけ安くなるか具体的な数値は示されなかったものの、「大幅な原価低減は可能になった」「特殊なクルマにしか使っていなかったCFRPを幅広く量産車に使えるめどがたった」と、その意義を強調した。拡大
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