現存するのは埼玉県に十数台のみ!? 幻のコンプリートカー「Green Blaze」とは?
2020.10.02 デイリーコラムボンネットに浮かぶ緑色の炎
2020年に新たなトヨタ車のコンプリートカーが世に出たことをご存じだろうか。「Green Blaze(グリーンブレイズ)」という名の、このコンプリートカーを送り出したのは、トヨタ自動車でもカスタムカーメーカーでもなく、トヨタの新車ディーラーだ。その誕生の舞台裏に迫るべく、製造・販売を手がける埼玉トヨペットを直撃した。
2020年8月28日に埼玉トヨペットは、Green Blazeシリーズの第2弾となる「Green Blazeクラウン」を発売した。埼玉トヨペットが企画・開発したオリジナルモデルだ。
価格はベース車の「トヨタ・クラウン」から120万円アップとなる611万2000円~823万5000円となかなかの上げ幅だ。しかし、そのカスタマイズの内容をみると、一概に高いともいえないことが分かる。クラウンの「RS」シリーズをベースに、クールホールディングスと共同開発したエアロパーツやTWS製鍛造20インチアルミホイール&「ブリヂストン・ポテンザS007A」のセットを装備。さらにボンネットにはハンドメイドによるグラインダーペイントが施されていて、光の加減によって緑色の炎が浮かび上がるデザインとなっているのだ。
より詳しく説明すると、共同開発のエアロは風洞実験を使って開発した本格的なもので、ボンネットのグラインダーペイントは埼玉トヨペットの板金職人がハンドメイドで仕上げている。ちなみにカスタマイズによる車高の変更はなく、予防安全装備「トヨタセーフティセンス」などへの影響がないのも安心だ。
レーシングカーと同じエアロパーツを装着
そもそもGreen Blazeシリーズはどのように誕生したのか。実はその原点は「クルマを販売する側がクルマの楽しみ方を知らなければ顧客にその楽しみを伝えることはできない」と、2012年に社内にモータースポーツ推進部を設置したことにある。
翌年から埼玉トヨペットはスーパー耐久に参戦。現在ではSUPER GTやGAZOO Racing 86/BRZ Raceなどにも参戦するようになった。販売店が主体のチームなので、運営や車両メンテナンスに社員が参加するのもユニークだ。
9月初旬に開催されたスーパー耐久2020 NAPAC富士SUPER TEC24時間耐久レースには、ニューマシン「埼玉トヨペットGreen Brave(グリーンブレイブ)クラウン」(コンプリートカーはブレイ“ズ”でレーシングカーはブレイ“ブ”)を投入。デビュー戦でST3クラス優勝を果たしている。
そのレーシングテクノロジーを継承したのがGreen Blazeクラウンなのだ。実際に優勝したクラウンには、コンプリートカーと同じエアロパーツが使われている。
シリーズ第1弾となる「Green Blazeアルファード」は、2020年1月の東京オートサロン2020で発表された。トヨペット店のフラッグシップモデル(当時)ということで第1弾に選ばれた。価格はベース車から118万円高の504万4000円~893万2000円で、ボンネットなどにクラウンと同様のカスタムが加えられている。
第3弾はSUV
その投入の背景には、2020年5月に導入されたトヨタディーラー全店での全車種取り扱いに対する危機感があったという。埼玉トヨペットでは新たにクラウンなどを販売できるようになった一方で、虎の子ともいえる人気車種のアルファードや「ハリアー」が専売できなくなった。そこで他の販売店とは異なる魅力で顧客に選ばれる会社づくりの一環としてコンプリートカープロジェクトを2019年にスタート。自社のモータースポーツ活動を反映したオリジナル車両を送り出すことにしたのである。
2020年9月中旬の時点で既にアルファードを5台販売。発売から間もないクラウンは、まだこれからという状況だ。展示試乗車はクラウンを大宮支店に配備するほか、アルファードは埼玉県内の7店舗に置いている。またレース活動の移動車としても活用されており、サーキットでその姿を目にすることができる。
顧客からの反応は上々で、エアロパーツを備えたスタイリングのカッコよさやボンネットのグラインダー加工に注目が集まっているという。購入者は人と違ったクルマを求める人や、TWS製鍛造ホイールなどにコストパフォーマンスのよさを感じている人が多いそうだ。現在は第3弾を計画中で、まだベース車は明かせないものの、SUVの投入を検討していると教えてくれた。
貼るだけのアルバイト=ハルバイト
話は変わるが、関東地方にお住まいの人で、ウィンドウに埼玉トヨペットのステッカーを貼ったトヨタ車を目撃した経験がある人は多いのではないだろうか。実はこれ、販売店の試乗車ではなく、ユーザーの愛車を活用した“アルバイト”、埼玉トヨペット独自のサービス「ハルバイト」である。購入した新車にステッカーを貼るだけで、月々一定のバイト代がもらえてしまう。だから「貼るバイト」。お金と引き換えに埼玉トヨペットの宣伝をしてくださいということである。
これは予算に限りがあってグレードや装備を妥協せざるを得ない顧客を応援する目的で、同社の社長自らが考案したもの。新車から3年間もしくは5年間、一定の金額が現金、もしくはポイントとして付与され、車両や整備の代金に充てることができる。3年の場合は普通のハルバイト、5年の場合は「ハルバイト+」と呼ばれる。
ハルバイトの利用条件は残価設定ローン「ハッピーライフプラン」を使ってクルマを購入し、定期メンテナンスパック「スマイルパスポート」とクレジットカード「トヨタTSキュービックカード」に加入するだけ。例えばGreen Blazeアルファードなら、3年間は月々5000円のサポートが受けられる(現金の場合)ので、18万円もお得になる。車検後の2年間は減額されるものの、それでも月々2500円がサポートされる。5年間フルで活用すれば、総額で24万円もお得になる計算なのだ。トヨタTSキュービックカードのポイントとして受け取ればさらにお得で、5年間で28万8000ポイントにも上る。ちなみに1ポイントは1円として、埼玉トヨペットでのサービス入庫や車検時の支払いに利用できる。つまり埼玉トヨペットのステッカーを5年間背負うだけで、24万円~28万8000円も高額なグレードをチョイスできたり、充実のオプションを装着できたりするのだ。ハルバイト料は車種によって異なり、貼られるステッカーの数が多いミニバン系が有利な設定になっている。
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選ばれる店舗になるために
2012年1月にサービスを開始したハルバイトは年々利用者が増加。2019年には埼玉トヨペットの販売の約6%の顧客が利用しており、その8割を40代以上が占めたという。車種は高級車のアルファードなども含まれるが、「ルーミー」などのコンパクト系が多いそうだ。
ハルバイト利用者の特徴のひとつに、3年以内の早期買い替え率の高さがあるという。つまりコスパがよくなった分、愛車の価値が落ちないうちに、積極的に新車に乗り換えるという傾向が出ているのだ。新車乗り換え派にとってもハルバイトは魅力的な提案のようだ。
先に書いた通りユーザーはお金(またはポイント)と引き換えに埼玉トヨペットの宣伝をお手伝いするわけだが、実は同社にとってのメリットはそれだけではない。ハルバイト利用者は6カ月ごとの点検でステッカーがきちんと貼られているかどうかを確認してもらう必要がある。これによって顧客の来店回数が増えて店舗やセールスとのつながり強化に結び付き、早期乗り換えの後押しとなっているようだ。また埼玉トヨペットでは顧客との交流イベントも積極的に開催しており、レース観戦ツアーをはじめ、芋掘りやゴルフイベントなども行っているという。
新車サブスクリプションサービス「KINTO」の導入や全店全車併売化など、ユーザーのクルマ選びの自由度は高まっている。だからこそトヨタの新車ディーラーは、選ばれる存在になるべく努力を重ねている。どのトヨタディーラーでも同じクルマが買えるのであれば、ユーザーは価格(=ハルバイト)や店の個性(=Green Blaze)を重視して訪問先を考えるだろう。埼玉トヨペットのような独自の取り組みに力を入れるディーラーは今後も増えるに違いない。
(文=大音安弘/写真=埼玉トヨペット/編集=藤沢 勝)
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大音 安弘
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