BMW650iカブリオレ(FR/8AT)【試乗記】
余裕か? 過剰か? 2011.04.28 試乗記 BMW650iカブリオレ(FR/8AT)……1423万2000円
3代目となる「6シリーズ」のオープンモデルが日本に上陸。上級グレードの走りを試した。
豪華でセクシーなインテリア
2010年末に発表されたばかりの新型「BMW6シリーズ」が、早くも日本に上陸し、試乗がかなった。「クーペ」に先行するかたちでデビューした「6シリーズカブリオレ」には、3リッター直6ターボの「640iカブリオレ」と4.4リッターV8ターボの「650iカブリオレ」の2グレードがあり、今回はよりぜいたくな650iカブリオレをチョイス。喧噪(けんそう)の都心から自然あふれる湖のほとりまで、オープンエアモータリングを楽しんだ。
初めて見る新型6シリーズカブリオレは、ソフトトップを開けても閉めても、低く構えるフォルムがなんとも印象的だ。フロントグリルのあたりが、もう少しすっきりしていたらなぁ……とは思うが、旧型に比べればはるかに取っつきやすいデザインに生まれ変わったと感じるのは私だけではないはずだ。
外観以上に大きく印象を変えたのがインテリアである。旧型の650iカブリオレも、シートに加えてダッシュボードやメーターナセルにレザーをおごった豪華なコックピットが自慢のひとつだった。新型では、素材に加えてデザインでも魅せてくれて、ダッシュボードやセンターコンソールのカーブが実にセクシー。ドライバーズシートに身を委ねた瞬間から、えもいわれぬ満ち足りた気分に浸ることになる。
重量ボディと余裕のパワー
さっそくソフトトップを開けるとしよう。スイッチを引き寄せること約20秒、エクステリアの一部になったキャビンに、陽光が降り注ぐ。アルミのインテリアパネルやクロームの縁取りに光が反射して、クローズドのときとはまた違う優雅な表情を見せてくれる。その際、メーターパネルの下4分の1ほどを占めるグラフィック表示エリアが見にくくなるが、走り出して心地よい風を受ければ、そんな些細(ささい)なことは気にならなくなる。
車両重量が2050kgにもなる650iカブリオレは、BMWの文法どおり、前後重量配分は51:49……というのはさておき、ノーズにおさまる4.4リッターツインターボの手にかかれば、これほどの重量級も軽々と動き出す。
おとなしくアクセルペダルを踏んでも余裕たっぷりで、知らなければ自然吸気エンジンかと思わせるほど、リニアで素早いレスポンスが頼もしい。一方、右足を深々と踏み込めば、どんな速度からも強烈な加速が得られ、とくに4000rpmを超え、「グイーン」という重厚なサウンドを伴いながら勢いづく様子にはほれぼれする。
80km/hくらいまでなら、サイドとリアのガラスを上げておきさえすれば、風の巻き込みは少なく、心地よいオープンエアモータリングが楽しめる。さすがにそれ以上のスピードになると、肌寒い時期にはツライ思いをするが、付属のウインドディフレクターを立てれば風の巻き込みは格段に減少するから、冬場や高速道路をドライブするときには、あらかじめ後席にセットしておくのをお忘れなく。
走りっぷりも一級品
走りの仕上がりにも舌を巻く。カブリオレでありながら、ボディ剛性は十分高く、不快なフロアの振動などとは無縁。いまやすっかりランフラットタイヤを手なずけたBMWだけに、19インチを履いているにもかかわらず乗り心地は快適で、目地段差を超えたときでも、さらりとショックをかわす足さばきには恐れ入る。
走行時のフラット感も模範的で、街中から高速巡航まで、終始落ち着いた動きを見せる。「アダプティブドライブ」が標準装着される650iカブリオレでは、「ダイナミック・ドライビング・コントロール」の3つの走行モード「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」に、「コンフォート」が加わるが、ノーマルを選んでおけばまず不満はない。
アクティブステアリングの操作フィールに不自然さはなく、抑えられたロールと、高いボディ剛性のおかげで、ワインディングロードではクルマとの一体感が味わえる。もちろん、BMWらしい軽快なハンドリングも健在。ボディサイズのわりに、街中で小回りが利くのもうれしい点だ。
丸2日間の試乗を終えて、その仕上がりには文句のつけようがないというのが、正直な気持ちだ。強いて言えば、有り余るパワーに“後ろめたさ”を覚えなくもないが、そこはスピードを上げなくても爽快な走りが楽しめるカブリオレだから、紳士的なアクセルワークで効率的なドライビングに磨きをかけたいものだ。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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