テールゲートは足で開けてスライドドアは手で開ける 「ホンダ・オデッセイ」のジェスチャー装備の不思議
2020.11.11 デイリーコラム足では開かないスライドドア
新しくなった「ホンダ・オデッセイ」にはジェスチャーで操作できる2つの新装備が加わった。
その一つはハンズフリーテールゲート。もはや説明不要だが、フロア下につま先を出し入れするだけでテールゲートが開く快適装備であり、今回の改良にあたってユーザーからの要望が最も多かった機能だという。「荷物で両手がふさがっていても……」と紹介されることが多い。
一方は「ジェスチャーコントロールパワースライドドア」だ。国内ではオデッセイが初めて装備したこのアイテムは、スライドドアに付いているLEDのインジケーターに手をかざすことでロック/アンロックができるほか、アンロックした状態で手をスライドすると、ドアがそちらについてくる=開閉ができるという新機軸である。
作動はスムーズで「普通に開けたほうが早いぜ」みたいな感じは(それほど)ない。少なくともイライラするほどではない。センサーには静電容量式を採用しており、かざすのは手のひらに限らず、肘でも大丈夫。顔をかざしてみても作動したし、豚バラブロックなどでもOKだそうだ。
しかし、気になるのはどうして「手」を使うのかというところだろう。テールゲートを足の操作で開けるというのは理にかなっていると思うが、荷物で両手がふさがっている状態でスライドドアを開けたいというケースは多いし、子どもを抱っこした状態という場面も大いに考えられる。実際に同じホンダの「フリード」と「ステップワゴン」には足のジェスチャーで開けられるスライドドアが用意されているのだ(オプション)。
そのあたりの事情を開発スタッフに聞いてみた。
便利かどうかは二の次
オデッセイのスライドドアが足で開けられないのはなぜなのか。それは車格というのっぴきならない事情があるからだ。ご存じの通りオデッセイはステップワゴンとフリードを従えた、ホンダのフラッグシップミニバンである。賓客送迎用車両の需要が「センチュリー」などから「アルファード」に移っているように、オデッセイもまたそうした場面で使われることが増えている。ホンダにはその賓客が乗り込む空間の入り口を足で開けるのはいかがなものかという考えがあるようだ。
「でも足のほうが便利じゃないか」という声も当然あるだろう。しかし、そもそもジェスチャーコントロールパワースライドドアは、機能を追い求めたアイテムではない。ホンダの説明によれば「FUNな領域」の装備であり、光の演出とジェスチャー操作を楽しむのが正しい向き合い方だ。だから静電気のパチッがないとか手が汚れなくて済むなどというのはすべて副産物にすぎず、便利とか便利じゃないという尺度で測るのは適切ではない(とホンダは考えている)。
「開けゴマ」とか「ハンドパワーです、キテマスキテマス」などと唱えながらドアをスライドさせ、友人を「オオー!」と驚かせたらあなたの勝ちだ。賓客を乗せる場合には「Make America Great Again!」とか「yes! 高須クリニック」とか客に応じて文句を変えてもいいし、客に唱えてもらい、そのタイミングで開けても面白いかもしれない。ジェスチャーコントロールパワースライドドアとは、すなわち後席に座る人をもてなすための装備なのである。
「おもてなし」といえばいかにも日本の文化という感じがするが、実は中国の人々も(される側としての)もてなしを非常に好むそうで、先にジェスチャーコントロールパワースライドドアが導入された中国版のオデッセイも好評を博しているという。
こうした生産上の都合(?)が影響したのかどうかは定かではないが、日本で売られるオデッセイは全車がジェスチャーコントロールパワースライドドアを標準装備する。ちなみにユーザーからの要望が最も多かったというハンズフリーテールゲートは上位グレードのみに標準装備である。
まあ、友人も賓客も2回目以降は驚かないだろうし、何度もやると「いいから早くクルマ出せよ」という空気になるかもしれない。つかず離れずの究極のおもてなしを目指すという人は「それってどうやって開けてるの?」と聞かれるその日まで、ひけらかすことなく手のひらをスライドドアにかざし続けるのが賢明だろう。
(文=藤沢 勝/写真=本田技研工業、webCG/編集=藤沢 勝)

藤沢 勝
webCG編集部。会社員人生の振り出しはタバコの煙が立ち込める競馬専門紙の編集部。30代半ばにwebCG編集部へ。思い出の競走馬は2000年の皐月賞4着だったジョウテンブレーヴと、2011年、2012年と読売マイラーズカップを連覇したシルポート。
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