正式デビューは2021年春! 新型「ルノー・カングー」について分かっていること
2020.12.02 デイリーコラム日本で一番売れているルノー
仏ルノーは2020年11月12日に、3代目となる新型「カングー」および「カングー バン」を世界初公開した。カングーはそもそもフランスでフルゴネットと呼ばれる小型商用バン「ルノー・エクスプレス」をルーツとするモデルだ。1997年に初代モデルが登場し、乗用車バージョンのカングーと商用車バージョンの「カングー エクスプレス」が設定されていた。
日本で乗用モデルのカングーが発売されたのは2002年のこと。適度なサイズと使い勝手のよさ、独特の乗り味が評価されて国内でもヒット作となり、現在に至るまで日本で一番売れているルノー車となっている。
以下がこれまでの国内でのカングーの新車登録台数だ。
- 初代:9192台(2002年~2009年)
- 現行型:2万0428台(2009年~2020年10月)
今回は現時点で発表されている情報をもとに、分かる範囲で新型の姿を読み解いてみたい。
カングーが売れているのは、日本だけではない。ルノーは1998年以来、21年連続で欧州のバン&ミニバン市場でナンバーワンのセールスを誇っている。また、電動化にもいち早く取り組んでおり、9年連続で電動小型商用車のトップセラーであるとともに、今や電動車が小型商用車販売の半分を占めるという。ちなみに2011年以降、欧州で最も売れている電動小型商用車はカングーのEV仕様である「カングーZ.E.」だ。すでに5万台以上が販売されている。
新型のパワートレインについて詳細は明らかになっていないが、カングー バンには、ディーゼルとガソリンの内燃機関バージョン、そしてEVバージョンの3種類を用意。内燃機関バージョンのトランスミッションはマニュアルとオートマチックがあるという。乗用バージョンのカングーにもEVが設定されるようだ。
日本には導入されていないが、ルノーはこれまでにも欧州でカングーZ.E.をはじめハッチバック車の「ZOE(ゾエ)」や「トゥインゴ」のEV仕様「トゥインゴZ.E.」なども販売している。2022年までにバンとミニバンの全ラインナップを電動化するとアナウンスしており、その流れをより一層加速させていくようだ。
意欲作の予感
新型の最大のハイライトは、一新されたデザインだろう。ルノーは2009年にローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏が、デザインを統括する担当役員に就任している。氏はブガッティやアウディ、フォードなどを経て、2006年からマツダのグローバルデザイン本部長に就任し、「流(NAGARE)」などのコンセプトカーを手がけたことで知られる。ルノーではまず2010年に「デジール」というスポーツカーのコンセプトを発表。のちにそのデザイン言語に基づいた、「クリオ(日本名:ルーテシア)」や「キャプチャー」、そしてトゥインゴなどが登場している。
カングーも2013年のフェイスリフトのタイミングで、その流れをくんだ顔つきにはなっているが、根本的にはローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏が担当する以前のデザインだったわけだ。
3代目は晴れて氏がデザインを手がけた初のカングーということになる。丸みを帯びたファニーな2代目に比べて、ボンネットやボディーサイドにもプレスラインが入り、全体的にスクエアな印象になった。フロントマスクは大型ミニバン「エスパス」(国内未導入)をよりシャープにアレンジしたものだ。
インテリアも一新され、水平基調のダッシュボードの中央にはマルチメディアシステム「EASY LINK(イージーリンク)」が配されている。またカングー バンにはデジタルインテリアミラー「Permanent Rear View(パーマネントリアビュー)」を採用し、荷物積載時などの後方視界を確保する。またエマージェンシーアクティブブレーキなど最新の運転支援システムも搭載する。
さらにカングー バンはセンターピラーを省いて、1416mm(従来モデルの2倍)の横開口幅をもつ「イージーサイドアクセス」機能を実現。全長はスタンダードバージョンとロングバージョンの2種類があり、実用積載容量は、前者が3.3~3.9立方メートル、後者が4.2~4.9立方メートルとなっている。
新型カングーおよびカングー バンは、フランスにあるルノーのモブージュ工場で生産される。ここは日産とのアライアンスのもと、現行型カングーのプラットフォームをベースにした「日産NV250」などもつくられている小型バン生産拠点で、電動化モデルを含むカングーシリーズの生産ハブでもある。ルノーグループは2018年時点で、今後5年間でカングーの生産に4億5000万ユーロ(邦貨換算で約562億円)を投資することを明らかにした。2019年には200名を新規雇用し、バンの生産を拡大していくと発表しており、新型は相当な意欲作となっているはずだ。
日本のインポーターであるルノー・ジャポンによると日本導入時期はまだ未定というが、現行型でも樹脂バンパーにスチールホイールの「カングー アシエ」やフランスの郵便車をモチーフにした「ラ・ポスト」など働くクルマ仕様が人気だ。新型でもぜひカングー バンの導入に期待したい。
(文=藤野太一/写真=ルノー/編集=藤沢 勝)

藤野 太一
-
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット― 2025.12.5 ハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。
-
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る 2025.12.4 「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
-
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相 2025.12.3 トヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。
-
あんなこともありました! 2025年の自動車業界で覚えておくべき3つのこと 2025.12.1 2025年を振り返ってみると、自動車業界にはどんなトピックがあったのか? 過去、そして未来を見据えた際に、クルマ好きならずとも記憶にとどめておきたい3つのことがらについて、世良耕太が解説する。
-
2025年の“推しグルマ”を発表! 渡辺敏史の私的カー・オブ・ザ・イヤー 2025.11.28 今年も数え切れないほどのクルマを試乗・取材した、自動車ジャーナリストの渡辺敏史氏。彼が考える「今年イチバンの一台」はどれか? 「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の発表を前に、氏の考える2025年の“年グルマ”について語ってもらった。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。







