エコカーのふりした走りのクルマ? 新型「日産ノート」で気になること
2020.12.04 デイリーコラムハイブリッドしか選べない
2020年11月24日、日産のコンパクトカー「ノート」がおよそ8年ぶりに一新された。
ノートは、言わずと知れた日産の売れ筋商品。なかでも2016年に追加された「e-POWER」、すなわちガソリンエンジンで発電し、その電力でモーターを駆動するハイブリッドモデルは市場で高く評価されてきた。
が、新型は逆に「コレしか選べない」というから驚く。先代でe-POWERが売れたといってもノート全体の7割程度であり、残り3割は純ガソリンエンジン車。それをバッサリ切り捨てるとは、ずいぶん思い切ったものだ。もちろんそこには、「未来を見据え電動化を重視している」という企業イメージを示す意図もあるのだろうが……。“やっちゃえNISSAN”ということなのか?
そのあたりを開発責任者の渡邊明規雄さんに問うてみると、なかなかシビアな面もあるらしい。
「このクラスのガソリンエンジンのクルマは、あまりにも競争が激しくて、とことん(価格を下げて)いかないと勝負にならないんですよ」
であれば、限りある経営資源を、比較的価格の高い上位グレードであり、しかも国内ユーザーの支持の厚いe-POWERモデルに集中したほうが効率的、というわけだ。ちなみに新型ノートは、実質的に国内専用車(1%ほどがシンガポール向けで残りが国内)である。
パワートレインの主要な構成要素となる1.2リッター直3ガソリンエンジンと電気モーターこそ先代からのスライドであるものの、その“磨き上げ”は相当なもの。高度な制御技術が採用され、たとえラフなアクセルワークをしても乗員に不快な動きが伝わらないよう、加減速の滑らかさが追求されている。
上質感という点では、静粛性にも大いに配慮されている。構造的な防音はもちろん、先代で不評だった「発電のために突然エンジンが稼働してしまう点」を改善。新型においては、そうしたノイズが極力意識されないよう、路面の荒れているところ(=車内にロードノイズが侵入しやすいところ)を検知するやコソっと発電する(!)という技まで使えるようになっている。まるで、賢い家電のようだ。
走りのよさには期待できる?
一方、スペックを見ると、先代よりも明らかにパワフルになっている。エンジン単体の最高出力は79PSから82PSにアップ(最大トルクは103N・mで据え置き)。モーターの最高出力は109PSから6%増しの116PSに、最大トルクにいたっては254N・mから280N・mへと10%もアップしている。この数値を見るに、「従来のコンパクトカーを超えた余裕のある走りを実現」「EVで体感できる、あの力強さに近い」といううたい文句にウソはなさそうだ。
自慢のパワートレインがおさまるボディーは、しかし、先代より小さくなっている。全長×全幅×全高=4045×1695×1520mmという寸法は、幅と高さは先代と変わらないものの、55mmも短い。クルマのモデルチェンジとしては、異例のことではないだろうか。
「たしかにカタログ上は55mm差ですが、それは、新型ノートのリアコンビランプが突き出たデザインだから。実質的には(ボディーシェルで比較するなら)100mmも小さくなっているんです」と渡邊さん。
「先代は、やや胴長というか、いわゆるハッチバックの王道プロポーションではなかった。長く見えるために『運転しにくそうだ』という印象を持たれてしまったようで、その点は改める必要がありました。でも、新型もキャビンの広さはクラストップ。小回り性のよさ(最小回転半径は4.9m)も自慢です」
渡辺さんは、新型ノートの一番のライバルに新型「ホンダ・フィット」を挙げる。「トヨタ・ヤリス」は、先代にあたる「ヴィッツ」よりもドライバーズカー的なキャラクターが強くなったので、ちょっと違うかな、とも付け加えた。
しかし、新開発プラットフォームを得て開発された新型ノートのボディー剛性は30%もアップしている。同じくサスペンション剛性は10%増し。ステアリング剛性にいたっては90%増しというからほぼ倍だ。走りの面では「フォルクスワーゲン・ポロ」も研究対象としているらしい。
しかも渡邊さん、2001年に入社してから2018年にノートの開発責任者に就任するまで、専門はずーっと、クルマのハンドリングや乗り心地を見る「性能設計」だったというのだ。……ってことは、新型ノートは、意外に“走りのクルマ”なんじゃなかろうか?
そう思いながら同モデルのオンライン発表会にも参加したところ、質疑応答のコーナーで「ライバルに対するアドバンテージは?」と聞かれた渡邊さんは、「走りのよさ」と即答していた。やっぱりノートは、エコカーの皮をかぶった走りのクルマなのか……? webCGの試乗記で、あらためてそのドライブフィールをお伝えできればと思う。
(文と写真と編集=関 顕也)

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
-
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く 2026.7.17 アルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。
-
九州・熊本で開催 「Lamborghini Summer Days 2026」で極上なる猛牛の世界観を知る 2026.7.16 ランボルギーニが1泊2日の無料招待制イベント「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催。上天草の自然とともに最新モデルの走りと独自の世界観を味わう特別なツアーの詳細を報告する。
-
スライドドアはいつから? 「日産エルグランド」登場前夜の国産ミニバン史 2026.7.14 間もなく「日産エルグランド」の新型が発売される。これに限らずわが国は多くのブランドが多くのモデルをラインナップするミニバン王国なわけだが、そもそも国産ミニバンはどのようなかたちで始まり、どのような進化を遂げてきたのだろうか。多人数乗車モデルの歴史を解説する。
-
みんなで乗れるアメリカンSUBARU 3列シートSUV「アセント」はどれだけ大きいのか? 2026.7.13 アメリカで生産されているスバルの3列シートSUV「アセント」が、日本でも2026年後半から販売される見込みだ。一体どんな魅力の詰まったクルマなのか、発売を前にその特徴を予習しておこう。
-
さらば青きe-BOXER! スバル・マイルドハイブリッドに贈る別れの言葉 2026.7.10 スバルのMHEVがついに販売終了に! 彼らが初めて手がけた電動化ユニットには、どんな特徴があり、どんな役割を果たしてきたのか? 派手な存在ではなかったけれど、13年にわたり頑張ってきたいぶし銀のパワートレインに、独自性を重んじるスバルの矜持を見た。
-
NEW
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。




































