日産ノートAUTECHクロスオーバーFOUR(4WD)
アップデートも湘南流 2024.11.13 試乗記 「日産ノート」のマイナーチェンジを受けて、カスタマイズモデル「ノートAUTECHクロスオーバー」もアップデート。専用アイテムで磨きをかけたエクステリアの特徴や、ベース車よりも車高を25mmアップしたクロスオーバーモデルの走りを報告する。SUVテイストを強調
日産が「e-POWER」と称するシリーズ式のハイブリッドシステムを搭載する3代目となるBセグメント5ドアハッチバック、ノートを発売したのが2020年末。
それをベースに、当時はまだオーテックジャパンと名乗っていた特装車を手がける日産の関連会社が、車高をアップさせつつSUV風味の強いエクステリアデザインや高級感を強めたインテリアを採用するなどして独自の仕立てを行ったモデルが、2021年10月に発売されたノートAUTECHクロスオーバーだ。
ここに紹介するのはそのマイナーチェンジ版。ベース車両のノートがマイナーチェンジしたことを受けて、ノートAUTECHクロスオーバーもリファインが行われた。
ベース車比で25mmアップの最低地上高や1サイズワイドなタイヤの装着、専用のチューニングが施されたサスペンションとパワーステアリングの採用など「従来モデルで好評だった」とされるメカニズムに関する変更は報告されていない一方で、エクステリアのデザインは随所でアップデート。
LEDによるフロントの専用シグネチャーには、オーテックのブランド発祥の地である湘南・茅ヶ崎の海にインスパイアされた船の後方に生じる波の姿をモチーフにしたというパターンを採用し、前後の下部に配されるプロテクターはサイドシルプロテクターやSUVらしさを強調するホイールアーチガーニッシュなどとコーディネートさせたデザインに。また、シルバーのフロントプロテクターや同色のルーフモールも新規採用ということになるが、これらはノートAUTECHクロスオーバー誕生の1年余り後に追加設定されたモデル「AUTECHクロスオーバー プラスアクティブ」にその出典を見ることができる。
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印象が変わったフロントフェイス
そうしたエクステリアの数々のリファインに比べると、インテリアのそれは小規模にとどまる。
シートバックに「AUTECH CROSSOVER」の刺しゅうと、ブルーのステッチが入るブラックレザレットシートや、やはりブルーステッチ入りの本革巻きステアリングホイール、ダッシュボードのダークウッド調加飾や合皮製のフロントアームレストなどは、マイナーチェンジ前のモデルから継続採用する特徴。容量を拡大し収納スペースを上下2段に仕切ったグローブボックスは新規となるが、これはマイナーチェンジしたベース車両と同アイテムだ。
実車を目前にすると思いのほか従来モデルと印象が異なって感じられるのは、やはりその“顔つき”が大きく変わっているためだ。
ボディーパネル部分に変更はなくヘッドランプも同じアイテムを用いるのにここまで表情が大きく違って見えるのは、ロワセクション両端のメッキパートがヘッドランプ下部を経由しフロントフードへとつながるこれまでの「Vモーショングリル」が、大きさの異なるクロームメッキのバーを用いることでグリルの幅が変化して見える「デジタルVモーション」へと進化したゆえ。今後、オーテックブランドを象徴するアイテムとして他車種にも展開予定というブルーに発光するLEDシグネチャーランプの位置が、従来モデルよりも下方に移設されたことも新規性のアピールにひと役買っている。
もっとも、ここまで大きく印象が変わると好みは大きく分かれそう。かくいう自身も「クリーンでシンプルだった従来モデルが懐かしいな……」などとちょっと思ってしまったりする。
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もっと上を狙える?
キャビンへと乗り込むと、感心する部分とちょっと惜しいナ、と思える部分とが正直半々という印象だ。
先に紹介したこのモデルならではの手が加えられたというパート──例えばシートやアームレスト、ステアリングホイールなどに関しては、なるほどクラスを超えた上質感を感じ取ることができる。一方で、見るからにハードパッドであることがわかるダッシュボードやドアトリムのつくり、ロックを解除すると自重でバタンと音をたてつつ開くグローブボックスなどには、いやが応でも「あくまでもコスト重視でつくられたBセグメント車」であることを教えられてしまうのだ。
今の時代、もはや高価とは言いにくいのかもしれないが、それでもベース仕様に対して50万円近いエクストラコストを支払い、総額300万円オーバーのモデルであることを考えると、やはりこのあたりに一抹の寂しさを覚えるのは事実。
そもそも「プレミアムスポーティー」をコンセプトとするのがオーテックというブランドの作品とうたうのならば、さらに幾ばくかのコストアップを招くことは承知のうえでも、ダッシュアッパー部分がファブリック張りの「ノート オーラ」をベースにするといった英断があってもよかったのではないだろうか。
貴重な5ナンバーサイズクロスオーバー
そんな新しいノートAUTECHクロスオーバーで走り始めると、まず特徴的なのは高い静粛性である。といっても、オーラのような遮音ドアガラスの採用などベース車両に対する特別な静粛性向上策は報告されておらず、要はそれはノート自体の特徴。それでもモーター駆動によるほぼ無音での発進など「クラスを超えた静けさ」にはやはり感心させられる。これも以前からだが、ロードノイズなどの暗騒音を巧みに活用し、動作を開始した発電用のエンジン音をオブラートに包みこむように目立たなくする制御とその効果も見事のひとことだ。
さらに、市街地から郊外路までさまざまなシーンを走行してあらためて実感したのが、まだまだ昭和の時代からの道が随所に残る、日本の道路環境下における5ナンバーサイズゆえの扱いやすさ。逆説的ではあるが、久々にこうしたサイズのモデルに触れてみたことで、時を追うごとに肥大化を繰り返してきたクルマに乗ることの不合理さにあらためて気づかされる思いでもあったのだ。
テスト車は4WD仕様でリアにも駆動用モーターを備えるが、出力のバイアスがフロント寄りなこともあり、ドライの舗装路面上に終始した今回のテスト走行中には特にそれを意識させられるような挙動は皆無。とはいえ、コーナーを多少追い込む程度のペースでも目立ったアンダーステアや過大なロールを感じさせられることはなく、その点では地上高や全高がアップしてもノート元来の素直で爽やかなハンドリングの感覚は健在で、オーテック流儀のファインチューニングが施されたフットワークが功を奏していると言えそう。
一方、その乗り味は全般にやや硬質で常時多少の揺すられ感を伴い、個人的な好みを述べるならばもう一息のフラット感をプラスしてほしいとも思えた。それは、オーテックというブランドが前出のようにプレミアムスポーティーというワードをコンセプトとするのならば、特にプレミアムという部分の演出に際してはそうしたテイストのほうが合致するのではないかと思うからである。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=日産自動車)
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テスト車のデータ
日産ノートAUTECHクロスオーバーFOUR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4110×1700×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1370kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)/2900-1万0341rpm
フロントモーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/0-2900rpm
リアモーター最高出力:68PS(50kW)/4775-1万0024rpm
リアモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775rpm
タイヤ:(前)185/60R16 86H/(後)195/60R16 89H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:23.8km/リッター(WLTCモード/ノートX FOURの参考値)
価格:306万3500円/テスト車=375万5824円
オプション装備:ボディーカラー<オーロラフレアブルーパール(P)/スーパーブラック2トーン、AUTECHクロスオーバー専用色、特別塗装色>(7万7000円)/アダプティブLEDヘッドライトシステム<ハイ&ロービーム+オートレベライザー+シグネチャーLEDポジションランプ付き>(6万6000円)/NissanConnectナビゲーションシステム<地デジ内蔵>+車載通信ユニット<TCU>+ETC2.0<ビルトインタイプ>+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+プロパイロット緊急停止支援システム<SOSコール機能付き>+SOSコール+ステアリングスイッチ<アドバンスドドライブアシストディスプレイ設定、オーディオ、ハンズフリーフォン、プロパイロット>+統合型インターフェイスディスプレイ+USB電源ソケット<Type-A×1、Type-C×1>+ワイヤレス充電器(36万9600円) ※以下、販売店オプション 日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(8万4574円)/AUTECHクロスオーバー専用フロアカーペット<AUTECHエンブレム付き、消臭機能付き>(2万9150円)/AUTECHクロスオーバー専用ラゲッジカーペット<AUTECH刺しゅう付き、消臭機能付き>(1万5400円)/ナンバープレートリム<マットクロム、AUTECHエンブレム付き、フロント用>(4950円)/ナンバープレートリム<マットクロム、AUTECHエンブレム付き、リア用>(4950円)/セキュリティーホイールロック<マックガード社製、AUTECHロゴステッカー付き、専用ポーチ付き>(4万0700円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:843km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)
テスト距離:322.2km
使用燃料:16.7リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.3km/リッター(満タン法)/17.6km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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