ただいま鋭意開発中! ネットの技術展にみるオモシロ自動車テクノロジー
2021.06.14 デイリーコラムサイトに447社が集結
「人とくるまのテクノロジー展2021」。
仏文科出身の文系筆者にとっては、なんだか敷居の高そうなイベントだ。クルマを“くるま”とひらがなにして平易っぽくしてはいるものの、ムズカシそうな印象はさほどぬぐえない。
しかしそれがなんだ! 大好きなクルマは難儀なテクノロジーの塊だ! ということで気張って攻めてみました。毎年恒例、自動車の先端技術に関する展示会へ……。
しかし、2021年はコロナ禍の影響で、1992年の初開催以来、同イベントは初めてのオンライン開催と相成りました。大小447社ものサプライヤー、メーカー、教育機関などがネット上に軒を連ねて(?)出展することになったわけですが、そのなかで筆者の印象に残ったもの4つをピックアップし、紹介しよう。
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いいことずくめのCVT
まずはボッシュの「EV用CVT」が気になった。
「CVT4EV」というネーミング。2016年に他界してしまったプリンスがtoを「2」、forを「4」と歌詞で表していたことを思い出したアナタはきっとアラフィフだろう。それはさておき、日本初出展となるこの新技術CVT4EVは、EV向けに設計したプッシュベルト方式の無段変速機のことを指す。EVにCVTを搭載することで効率がアップ。けん引時やオフロード走行時のトルクが増し、低速域での加速や最高速度の向上が可能になるという。
トルク段差のないCVTと滑らかな加減速ができるEV、それぞれの本来的な特長はしっかり維持しつつ、さらに変速比に幅を持たせることで効率とパフォーマンスのベストバランスを……。ちょっとわかりにくい? もう少しかみ砕くと、CVTの採用によってEVの走行モードをよりフレキシブルに設定できるようになる、ということ。電動パワートレインが最も効率のいいポイントで作動するようにコントロールできるということだ。結果、安価なモーターでも期待以上の性能が、従来サイズのモーターではさらなる航続距離の伸長が見込める。
さらにCVT4EVは、同じデザイン・構成で中型車からスポーツカー、小型商用車までさまざまな車種に対応できるトランスミッションなので、最終減速比やソフトウエアの適合次第ではコンポーネントの共通化ができ、開発・製造コストの低減が期待できる。なんだかとっても優秀なコーディネーターのような、未来のEV専用CVTなのだった。
給電しながら走るが吉
続けていこう。これまでもたびたび、コンセプトカーなどで提案されることのあった「インホイールモーター」だ。ホイールそのものの内側に駆動モーターをおさめてしまうという画期的な発想のインホイールモーターは、複雑なパワートレインを介してホイールを回転させるという一連のプロセスを、「かったるいぜ!」と言わんばかりに一気にジャンプ(短縮)してしまう。
そんな“短絡化の夢”の延長線上にあるのが、今回東京大学と複数の開発研究機関がトライしている「走行中給電技術」を生かした新世代のインホイールモーターだ。この新技術が欲張ったのは、なんと、電気は道路から拾ってしまえ、ということ。ホイールで発電するのではなく、ホイールから“給電”する。まるでルーフ上のパンタグラフから給電しつつ走る電車のようだ。
この走行中給電技術がすごいのは、電車のパンタグラフのように接触で電気をもらうのではなく、非接触で充電できること。街なかを走りながら充電することで航続距離を大幅に伸ばせるだけでなく、モーター、インバーター、受電回路、制御回路をすべてホイール内におさめられるので、車体側のスペースをグッと有効活用できる。ほんと、そのうち車体は“座席と箱”だけになりそう。もちろんインフラの整備には莫大なコストがかかるだろうが、人手を介した「充電」という行為から解放されるこの技術、トータルの効率で考えれば正論ともいえる。
まるでカルガモの親子
先進モビリティ株式会社と豊田通商株式会社が開発している新技術も、先に紹介したインホイールモーターの「なんだか電車みたい」に似たイメージの、オモシロハイテクだ。
「高速道路における後続車無人隊列走行技術」というネーミングがそのまんま示すとおり、ドライバーが運転する先頭のトラックが、無人で走る何台かの後続トラックと通信で連結、“電子的に”けん引して隊列走行するというニューテクノロジーなのだ。無人の後続トラックは有人の先頭トラックの走行軌跡を自動で追いかけ、隊列の車間距離を常に5~10m以内に維持するよう走行するという。
サイクリストの方であれば思い当たる節があるかもしれない。複数の自転車がタテ一列の隊形で走るときに「列車を組む」「トレイン」などというが、アレと同じ発想だ。空気の抵抗を抑えることで得られるその高効率(=ラクチンさ)も容易に想像できるだろう。この後続車無人隊列走行技術も、高コストな燃料費の軽減に貢献するとともに、物流業界の抱えるトラックドライバー不足も解消できる可能性を秘めている。……にしても、2021年2月に新東名高速道路で行われた公道実証のトラック隊列(写真)が、なんだかカルガモ親子みたいでかわいいぞ(笑)。
うまく寝るためのテクノロジー!?
最後は運転中のドヨ~ン。あの“眠気”についての新技術。「インテリアスペースクリエーター」を標榜(ひょうぼう)するトヨタ紡績の、眠気の“いなしテクノロジー”がスゴい。しかも2つも提案されていて、まったく逆のアプローチからなのにはかなり驚いた。
1つ目。「眠気抑制シートシステム」。
文字通りこちらは目を覚めさせるための技術で、まずコンピューターが眠気レベルのセンシング→推定を行い、そのレベルに応じて楽しく快適に眠気を抑制するアクションをドライバーに働きかけ、さらにそれが効果的に行われているかどうかのフィジカルデータもリアルタイムで取得。三位一体の循環システムでお目々をパッチリにするという。
ではどこが“楽しく快適”かというと、「思い入れのある懐かしい音楽」+「音場移動」+「シート振動」の3つをフルに駆使してドライバーに刺激を与え続けるのだ。ここで再びプリンス登場。「パ~プルレイ~ン♪」とかがいきなりスピーカーから流れたら、そりゃもう、一気に目も覚めちゃうわな(笑)。コンピューターとミュージシャンが共闘しながら、寄せては返す波のような眠気を遠く沖合に追いやってくれるこの斬新なメカニズム、明日にでも僕の愛車に搭載してほしい!
2つ目。「自動運転時における短時間睡眠でパフォーマンスを向上させる車室空間開発」。
これはなんと、ドライバーを深い睡眠状態へと落とすための技術。自動運転レベル4以上のクルマへの搭載を前提に、乗員の感覚をマルチモーダルに(複数の手段で)刺激し、短時間仮眠と心地よい覚醒でリフレッシュ効果の両方をもたらす車室空間「Power nap cabin」を共同で企画開発したという。“複数の手段”は、入眠に誘う光・温度・香り、リラックスできるポジション、生体リズムと同調するサウンドなど、あの手この手だ。
単に「短く眠りなさい」というだけでなく、「スッキリ爽やかに目覚めてね!」のおまけ付き。これはスゴすぎる。ここまできたかと思うと同時に、そりゃそうなるよなあ、と妙に感心もした。遠くない将来、乗車と同時に入眠→目覚めたら遠くの目的地、なんてことになるのかもしれない。まるで新幹線……いや、やさしく起こしてくれるのだから新幹線よりうれしいかも。もし目覚まし音声が何種類かのなかから選べるのなら、トヨタ紡績さん。そのうちのひとつは(キューティーハニーや峰不二子の声で知られる)増山江威子さんでお願いします!
以上、ぐるりとオンライン会場を一周しつつ、目に留まった新世代ハイテクのいくつかを目線低くリポートしました。会期は2021年7月30日の金曜日まで。事前登録のみで入場料は無料なので、ぜひ一度のぞいてみてください。
(文=宮崎正行/編集=関 顕也)

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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