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ホンダ・グロム(5MT)

小さくても夢いっぱい 2021.07.18 試乗記 青木 禎之 グローバルで展開される、ホンダの売れっ子オートバイ「グロム」。第3世代へと進化した最新モデルは、小さいながらも楽しさと実用性を兼ね備えた、完成度の高い一台に仕上がっていた。

長所はそのまま、さらにリファイン

新しいホンダ・グロムに乗って、指定された撮影場所へ向かう。朝の通勤時間に当たったためか、会社や仕事場へ向かうであろう二輪車の数が思いのほか多い。一番左の車道で信号待ちをしていると、当初から横にいたライダーに加え後続のバイクが次々と現れて、なんとなく並んで信号が変わるのを待つ。

グリーンシグナル点灯とともに各車一斉にスタート! ミニバイクに乗っている自分も、空冷単気筒を割れんばかりに回して、次のストップまでほかの二輪の一群に交じって抜きつ抜かれつを繰り返し……とまあ、シートにまたがっていて思わずそんな夢想をしてしまうスポーティーな“ゲンニ”こと原付二種バイクが、「Smart City Walker」をうたうグロムである。

2021年3月に、3代目にあたるニューグロムが登場した。スチール製のバックボーンフレームに125ccクラスのエンジンをつり、ぜいたくなフロント倒立フォークとモノサスペンションを組み合わせた構成は従来通り。1200mmのホイールベースや、前120/70R12、後ろ130/70R12のタイヤサイズも変わらない。

一方、製造国であるタイを震源地に世界的な大ヒットとなったことを受け、パワーパックが一新された。エンジンはこれまで以上にロングストローク化され、トランスミッションはギア数が1枚追加されて5段MTとなった。フロントブレーキにABSが装備されたことも新しい。モデルチェンジを機に、環境、安全性能をアップして、次の時代に臨む。価格は旧型より6万円ほど上昇して、38万5000円になった。

原付二種の小型バイク「ホンダ・グロム」。2021年3月に、3世代目にあたる最新型が発売された。
原付二種の小型バイク「ホンダ・グロム」。2021年3月に、3世代目にあたる最新型が発売された。拡大
都会の道を行く新型「グロム」。トランスミッションのギア数は従来の4段から5段に変更された。
都会の道を行く新型「グロム」。トランスミッションのギア数は従来の4段から5段に変更された。拡大
フロントサスペンションは、倒立式のものがおごられる。フェンダーのサイドにロゴが見られる通り、ABSも標準で備わる。
フロントサスペンションは、倒立式のものがおごられる。フェンダーのサイドにロゴが見られる通り、ABSも標準で備わる。拡大
新型「グロム」用には、リアキャリア(2万2000円)や盗難防止アラーム+アタッチメント(計2万1956円)といったオプションが用意される。
新型「グロム」用には、リアキャリア(2万2000円)や盗難防止アラーム+アタッチメント(計2万1956円)といったオプションが用意される。拡大
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自然なポジションでキビキビ

新型グロムの外観上の特徴が、ボルト位置を明示して視覚的に「取り外し可能」を強調したサイドカバーとシュラウドで、実際にカスタムするかどうかはともかく、自分のバイクを「イジりたくてしょうがない」オーナーの人には、その可能性を感じるだけでうれしかろう。現世利益としては、コカしたりブツけたりしてどうにも気になる傷や破損部分が生じた場合に、気軽に交換できるほうが大きいかもしれない。

2人乗りも可能とするシートは、体格の大きなライダーの快適性を上げ、また走行中の姿勢変化をしやすくするため、先代よりグッと天地に厚くフラットになった。シート高は761mmと旧型とほぼ変わらず。見た目より座り心地の硬いクッションに腰を落とすと、ハンドルのグリップ位置が高められているそうで、秘めたスポーティーさとは裏腹に自然と上体を起こしたアップライトな姿勢となる。

ボア×ストローク=52.4×57.9mmから50.0×63.1mmとストロークを伸ばし、圧縮比を9.3から10.0にまで高めた123cc空冷単気筒は、先代比0.2PSアップの10.0PSと、変わらぬ11N・mの最大トルクを、それぞれ250rpm高い7250rpmと5500rpmで発生する。102kgの軽い車体で街乗りするにはまったく十分で、出足のよさに感心し、1段増えたギアを生かした加速を堪能しながら、けれども頻繁なギアチェンジを少々煩わしく感じている怠惰な自分もいる。

あらためてスペックを確認すると、1次減速比は高められているが、ドリブン側スプロケットの丁数(歯数)を増やして結果的にややショートに振っている。新型はロウから4速で加速を受け持ち、トップギアを0.922から0.842に高めてカバーする速度域を広げている。ストップ&ゴーが繰り返される市街地で忙しいわけだ。

カウルやカバーのボルト締結部は、カスタマイズを促すかのようにドレスアップされている。ギア感を強調するディテールともいえる。
カウルやカバーのボルト締結部は、カスタマイズを促すかのようにドレスアップされている。ギア感を強調するディテールともいえる。拡大
フラットで厚みのあるデザインのタンデムシート。ライディングポジションの自由度も高い。
フラットで厚みのあるデザインのタンデムシート。ライディングポジションの自由度も高い。拡大
エンジンは新開発の123cc単気筒。さまざまな低フリクション化技術が注がれている。
エンジンは新開発の123cc単気筒。さまざまな低フリクション化技術が注がれている。拡大
塊感のあるアップマフラー。ヒートガードも備わる。
塊感のあるアップマフラー。ヒートガードも備わる。拡大
絶対的な速度は低くとも、スポーツ走行が満喫できる新型「グロム」。コーナリング時の安定性も大きなセリングポイントとされている。
絶対的な速度は低くとも、スポーツ走行が満喫できる新型「グロム」。コーナリング時の安定性も大きなセリングポイントとされている。拡大
コンパクトな液晶メーターには、燃費やギアポジションも表示される。バックライト付きで輝度の調節も可能。
コンパクトな液晶メーターには、燃費やギアポジションも表示される。バックライト付きで輝度の調節も可能。拡大
初代モデルを連想させる縦目のヘッドランプ。光源はLEDとなっている。
初代モデルを連想させる縦目のヘッドランプ。光源はLEDとなっている。拡大
燃料タンクの容量は6.0リッター。68.5km/リッターというWMTCモード燃費を考慮すると、400km以上の航続距離が見込める。
燃料タンクの容量は6.0リッター。68.5km/リッターというWMTCモード燃費を考慮すると、400km以上の航続距離が見込める。拡大

やんちゃでいながら実用的

スロットルをひねると、ロングストローク化されたシングルシリンダーは「ビョォーン」とやや迫力に欠けるサウンドを発しながら実直に回転を上げていく。6750rpm付近でシフトアップを促すインジケーターが点灯するが、実はそこからピークパワー発生ポイント前後が最も楽しいところ。絶対的には大して速くないのかもしれないが、心情的には“ファンバイク”と侮れない勢いでカッ飛んでいく。

8000rpmから始まるレッドゾーンに飛び込み9000rpmを超えて回ろうとするエンジンを両足に挟んで走っていると、これはイヤでも「スポーツ」したくなる。もちろんホンダもそんな欲求の受け皿として、グロムを用いたワンメイクレースを開催し、オフィシャルにグロムベースのレースベース車を用意している。

個人的には、LEDランプのままヘッドランプが大きくなって、初代を思わせる顔つきになったのが好ましい3代目グロム。タンク容量が、初代から5.5リッター、5.7リッター、そして6リッターと順次拡大していることも見逃せない。最新モデルのカタログ燃費は68.5km/リッター(WMTCモード)という驚異的な数値だから、一回の給油で400kmを超える足の長さを持つ。

クルクルと小回りが利く軽量ボディーを駆ってSmart City Walkerを気取るもよし。むしろ汗をかきながら「スポーツ」にいそしむのもいい。さらには、あえて下道ツーリングマシンとして酷使するのもおもしろい。ホンダ・グロムは、生活の幅と夢が広がるミニバイクだ。

(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)

ホンダ・グロム
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リアまわりは、小ぶりなLEDテールランプなどでシンプルにまとめられている。
リアまわりは、小ぶりなLEDテールランプなどでシンプルにまとめられている。拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=1760×720×1015mm
ホイールベース:1200mm
シート高:761mm
重量:102kg
エンジン:123cc 空冷4ストローク単気筒OHC 2バルブ
最高出力:10PS(7.4kW)/7250rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/5500rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:68.5km/リッター(WMTCモード)/63.5km/リッター(国土交通省届出値)
価格:38万5000円

青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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