ホンダCB1300スーパーボルドールSP(6MT)
これからもよろしく! 2021.09.08 試乗記 1.3リッターもの排気量を持つ大型4気筒エンジンを搭載した「ホンダCB1300」。排ガス規制による危機を乗り越え、“CB”のフラッグシップはどのようなバイクに進化を遂げたのか? ハーフカウルの「スーパーボルドール」で確かめた。“電スロ化”で排ガス規制に対応
「ユーロ5」の排ガス規制が迫り、対応に苦しむマシンが少しずつ姿を消している。そんななかにあって、ホンダのビッグネイキッド「CB1300スーパーフォア/スーパーボルドール」は、発売から18年が経過しているにもかかわらず、スロットル・バイ・ワイヤの装備で見事に新規制をクリア。さらにパワーモードの切り替え機能やオン/オフ可能なトラクションコントロールを装備し、排気系の変更でパワーフィーリングや排気音を見直すなど、さまざまな点で改良が加えられた。
テスターは過去に何度か、CB1300(特にカウルレスのスーパーフォアのほう)の購入を検討したことがある。ストリートでの運動性を追求したマシンづくりにほれ込んでいたからだ。そんなこともあって、今回の試乗は興味津々。いったいどんなマシンになったのだろうかと期待に胸をふくらませてマシンを走らせることになった。
一番気になっていたのは、スロットル・バイ・ワイヤの装着でエンジンのフィーリングがどう変化しているのかということだったが、ストレートに言ってしまうと、あまり変わっていない。旧モデルに乗っている人が新型に乗っても、バイ・ワイヤになったことに気がつかないかもしれない。
当初からのコンセプトを守り続けていることに安心した反面、進化を遂げているのかもしれないという期待もあって、若干拍子抜けしたところもあった。それは特に、低回転での扱いやすさの部分である。
このエンジンはレスポンスが鋭く、スロットルを開けると気持ちよくタコメーターの針が跳ね上がる。振動も少なくとてもスムーズに回り、全域においてパワフルで、とても乗りやすい。ただ、低速走行時にはスロットルの開閉に対する反応の鋭さから、乱暴な操作をすると走りがギクシャクしてしまうことがある。この傾向が強いのは2000rpmから3000rpm付近で、渋滞しているときやストリートをノンビリ走っているときに多用する回転域なのだ。
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ビッグバイクを操る醍醐味
この特性はリニアなスロットルレスポンスを追求した結果だ。CB1300は、もともと日本のストリートにおける実用的な速度域でも楽しく走れるよう考えられている。ビッグバイクの大きく重い車体を、低速・低回転域でもキビキビ走らせるためには、体重移動やハンドル操作だけでなく、エンジンのトルクが重要だ。例えば、超低速域で意識的に車体のバランスを崩してバンクさせるようなときは、狙ったところでリアタイヤに駆動力をかけてやるとマシンがバランスしてクルッと旋回する。ビッグバイクだからこそできるライディングである。大きな車体を自由自在に操るためには、スロットル操作に対して間髪入れずにエンジンが反応してくれなければならない。
この改良型も当初のコンセプトをキープしているわけだが、最近はスロットルの開け始めのツキを穏やかにしているバイクも増えている。そういうバイクからCB1300に乗り換えると、最初はどうしても低速でギクシャクしてしまう。ビッグバイクビキナーならなおのことだ。
モードセレクターが追加されたので、レインモードならこの特性も穏やかになっているのかと思いきや、低速域でのレスポンスに関してはあまり変化がない。というか、レイン、スタンダード、スポーツとモードを切り替えても、大きな違いが感じられない。
何やら厳しいことを書いているように思われるかもしれないが、実を言えばテスターは新型の味つけに関しては好印象を持っている。レスポンスの鋭さも、久しぶりに乗ると最初はギクシャクしてしまいそうになるが、少し走れば体が操作を覚えてきて気にならなくなる。スロットル開け始めのレスポンスを極端に穏やかにしているマシンの場合は逆だ。乗り始めたときはいいのだけれど、思い切ってマシンを動かしたいと思ったとき、ここのレスポンスがダルになっていると逆に操作が難しくなることもあるし、操る楽しさがスポイルされているような気分になるのである。だからCB1300にあらためて乗ってみるとヤッパリ楽しいバイクだなと思う。ただ、せっかくモードセレクターをつけたのだから、レインモードで低速の鋭さをもう少しおさえても良かったのではないかと考えてしまうのである。
実用速度域でもキビキビと走らせられるCB1300だが、エンジンが元気な割に、高速道路を100km/hで巡航していてもせかされている感じがしない点も好感の持てるところ。ゆっくり走りたいときにはジェントルに。欲しいときには、右手の動きひとつでマシンを思いのままに加速させられる。ビッグバイクを操る醍醐味(だいごみ)ここにあり、という感じである。
ちなみに、このモデルから新しい4in1方式となった排気系によって、排気音はかなり元気になった。走行時は静かだが、始動時の音量は大きく、最初にエンジンをかけたときは、その迫力に「アフターマーケットパーツが装着されているのか?」と驚いたほどだった。
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魅力はエンジンだけにあらず
ストリートにおけるハンドリングは相変わらず素晴らしい。バンクさせたときのフロントまわりの動きが自然で、バイクを寝かすとスッと自然な舵角がつく。パワーをかければリアタイヤに駆動力がかかって気持ちよく旋回していく。テスターの周囲にもCB1300が登場したとき、そのハンドリングにほれ込んだという友人が何人かいたのだが、その走りがさらに熟成されている感じを受ける。
こう感じたのは、今回試乗した「SP」モデルでは前後にオーリンズのサスペンションが装備されていたことも影響しているのだろう。従来のサスペンションも性能的にはまったく不満のないレベルだったが、SPモデルの足まわりの動きは高品位で実にしなやか。フロントブレーキにもブレンボのモノブロックをラジアルマウントしているが、その利きにも感動。キャリパーの変形が少ないから、レバーを握ったぶんだけ確実に減速してくれる。上質なサスとブレーキのフィーリングは、非常に気持ちがいい。
加えてスーパーボルドールでは、大型のフロントカウルが備わるために前まわりに安定感があり、CB1300本来の軽快さにビッグバイクらしいどっしりとした乗り味が追加されている印象。このカウルの防風効果は高く、高速道路での長時間の移動も苦にならない。
改良型のCB1300にしばらく乗っていて感じたのは、今回の変更でも、これまで受け継がれてきた美点がまったく損なわれていないことだ。走りが大きく進化したという感じではないが、確実に熟成されている。価格は若干上がってしまったが、排ガス対策などを考えればしかたのないこと。この素晴らしいマシンが、これからもまだしばらくラインナップされていくことに感謝したい。
(文=後藤 武/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2200×825×1215mm
ホイールベース:1520mm
シート高:790mm
重量:272kg
エンジン:1284cc 水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:113PS(83kW)/7750rpm
最大トルク:112N・m(11.4kgf・m)/6250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:17.2km/リッター(WMTCモード)/28.0km/リッター(国土交通省届出値)
価格:204万6000円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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