新車販売ランキングを席巻! 最新トヨタ車に外れがない理由
2021.09.01 デイリーコラム水も漏らさぬSUVラインナップ
2020年、トヨタの日本国内の登録車販売台数は147万台あまり。そのシェアはとうとう50%を突破しました。
まぁ去年のことを思い出せば、誰もが予想しなかったコロナ禍で生活環境からガラリと変わってしまった、その最中の数字ですから多少のブレはあるのかも……と思いきや、今年も7月までの時点でトヨタの販売は前年比13.2%増と、登録車メーカー中でトップの伸びとなっています。車名別販売台数のトップ10を見ても8台がトヨタと、独禁法への抵触も心配になる勢いです。もっとも、トヨタが増大した理由の一端には、軽自動車に注力する一方で登録車のラインナップが形骸化した日産やホンダの日本市場戦略にあるような気もしますが。
対すればトヨタの日本における商品戦略は見事に隙なしです。例えば売れ筋のSUV&クロカン系を見てもBセグメント~Dセグメントまでをびっちりとカバー、それ以上のセグメントはコマーシャルビークル系のアーキテクチャーが調達できることもあって、国内においては「ランクル」シリーズからダブルキャブの「ハイラックス」まで用意するなど唯一無二の存在となっています。さらにそれ以下のセグメントさえ完全子会社のダイハツとの協業で網羅する徹底ぶりです。そのクルマ「ライズ」は今年上半期の販売ランキングで6位に、そして5位には販売店網の熱望でディスコン回避となった「ハリアー」がしっかり入っています。ちなみにこのカテゴリー、現状は日産もホンダも2車種しか投入できていません。
市場活性化で新たな国民車を創出
そのダイハツ協業案件で、今やトヨタの国内販売に欠くことができないのが今年上半期2位の販売台数を誇る「ルーミー」です。販売チャンネルの一本化に伴い「タンク」と統合されたという経緯があるとはいえ、1位の「ヤリス」の数が「ヤリス クロス」との合算であること、そしてルーミーの側には兄弟車の「ダイハツ・トール」「スバル・ジャスティ」がいることから、その辺を足し引きしてみると単一形状では日本で最も売れている登録車といえるかもしれません。
言わずと知れたルーミーのネタ元、スズキの「ソリオ」は軽の開発や販売を通じて得た日本の道路や車庫の事情に徹底的に合わせ込んだサイズにして、乗車定員5人という登録車の利を生かしたトールワゴンです。当初は「ワゴンR」のワイド版的な位置づけでしたが、後席スライドドアを得た2010年以降の世代は、まさに大衆のかゆいところに手が届く実直の権化として、唯我独尊の市場を切り開いてきました。
そこをダイハツの開発力とトヨタの販売力でもってごっそり根こそぎ……と思いきや、ソリオのほうも販売はまったく衰えていません。気づけばトヨタグループの参戦によって、5ナンバーハイトワゴンは年に20万台近くが売れる新国民車的カテゴリーに拡大していました。スズキさんもさぞプンスカかと思いきや、今や会社的にトヨタがご親戚です。そして多くのお客さんにしてみれば、もはやルーミーとソリオのすみ分けは「どん兵衛」と「赤いきつね」くらい些細(ささい)なものであって、欲しいのはカップ麺なんだからどっちでもいいよ……というようなことなのかもしれません。
当然のことを当然に
そして忘れてはならないのが、上半期3位の「アルファード」の存在です。「マークX」は終了、「クラウン」にも不穏なうわさが立ち込めるなか、かつてのハイソカー的な嗜好(しこう)や中大型セダン的な需要はあらかたこのクルマに集約されているような気がします。日本人の思い描くぜいたくな日本車のど真ん中がこれ……と思うとクルマ好きとしては目まいがしますが、1万台に届こうかという月販台数を見るとぐうの音も出ません。なんならマツダの全販売台数をアルファードだけで稼ごうかという勢いです。
登場から7年目にして再びアルファード爆弾が大さく裂。その最大の理由はやはり販売チャンネル一本化の流れです。2019年あたりから優劣が目に見えてきたアルファードと「ヴェルファイア」の販売台数は、2020年春の全店全品取り扱い開始以降、加速度的にアルファードの側に傾きました。車種統合による合理化を図りたいトヨタ本体もこの機とばかりにアルファードの販売に注力、ヴェルファイアの幕引きにかかります。現在、ウェブサイトで確認できるヴェルファイアのグレード展開は金色目玉の限定車のみ。販売現場も、もうそっち側は積極的に薦めていないのでしょう。この6月、ついにヴェルファイアの販売台数はベスト50圏外に落っこちてしまいました。
人気のカテゴリーにはニューモデル攻勢で畳みかけ、ヒットの芽が出そうなところにはすかさず一票を投じ、圧倒的物量で市場を席巻したらあとは売れ筋死に筋をゆっくり選別……と。言葉にすれば乱暴ですが、これ、商売の常套(じょうとう)です。つまりトヨタは当然のことを当然にやっているだけで、むしろ日産やホンダの無策ぶりに目がいってしまいます。ちなみにこの2社の登録車の国内シェアはおのおの10%程度。今後の日本市場がより面白くなるか否かは、このふがいなさを両社がどう判断しているかにかかっているのではないでしょうか。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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