日産ノート オーラG FOURレザーエディション(4WD)
真正面から考えよう 2021.11.15 試乗記 「日産ノート オーラ」は、新型「ノート」の内外装を仕立て直して小さな高級車を目指した新しいコンパクトカーだ。パワーユニットも強化したというその走りは果たしてプレミアムか!? 最上級グレードの4WDモデル=最高額モデルを試してみた。「上質」とはいえない乗り心地
いつものように箱根方面を目指して走りだしてすぐ、自宅近くの世田谷線の踏切で驚いた。ダシン、ドシンという直接的なショックはここ何年も経験したことのない強烈さ。寝ぼけていた身体がいっぺんで目が覚めてしまったのはありがたいとしても、この乗り心地はいかがなものだろうか。ノート派生の上級モデルであるオーラは、上質をうたうプレミアムコンパクトという触れ込みのはずなのだが、これでは新型ノートのほうがまだしも、と感じたほどである。東名高速に乗るとまあまあ落ち着いたものの、その代わりに気になったのは盛大なロードノイズである。
ガソリンエンジンは発電に専念し、駆動はモーターによるシリーズハイブリッドたる「e-POWER」だから一般的な内燃エンジン車よりも風切り音やロードノイズが目立つ傾向にあるとはいえ、ライバル車と比べても明らかにボリュームが大きい。しかもこのオーラはこのクラスとしてはぜいたくにも遮音性に優れたアコースティックガラスをフロントのサイドウィンドウに採用、遮音材などもおごってあるにもかかわらず、である。いかにコンパクトカーとはいえ、舗装状態によってはびっくりするほど大きなザーッというロードノイズが侵入してくる。ハッチバックは普通後方からのノイズが気になるものだが、オーラの場合はフロントの下まわりから聞こえるようだ。二重ガラスとはいえずいぶんと薄いものだったから、限界があるのだろうが、それにしても路面状態が良好な部類の東名高速でこのレベルでは、と早々に気が重くなったのは事実である。
見た目はOK?
ざっくりとした言い方を許してもらえば、オーラはノートのワイドボディー仕様である。全幅はノート比+40mmの1735mmで3ナンバー仕様となるが、それは専用ボディーパネルによるものでホイールベースなどの基本ディメンションに差はなく、室内空間にも違いはない。ホイールはオーラ専用デザインの17インチにサイズアップされており、5本スポークデザインの樹脂カバー付きアルミホイールを見て、おや、もしかして? と思ったがやはり4本スタッドに変わりはなかった。「G FOURレザーエディション」は、その名の通りリアアクスルにもモーターを搭載する電動4WDモデルで、レザーシートが標準装備されるオーラの最上級グレードとなる。
インストゥルメントパネルは12.3インチに大型化されたメーターディスプレイ(ノートは7インチ)を除けばノート同様。いっぽうでインテリアの仕立ては上質感の演出に努力していることが見て取れる。ウッド調パネルは、木目の手触りを再現したいわゆるオープンポア風で、ざっくりしたツイード調のファブリックのインテリアトリムとともになかなか良い印象だが、助手席側のセンターコンソール部分はファブリックトリムが省かれているところなど、絞るところはきっちり絞るという姿勢もうかがえる。
BOSEと共同開発したという「パーソナルプラスサウンドシステム」もオーラのトピックのひとつだ。前席ヘッドレストに2個のスピーカーを内蔵し、センタースクリーンで計8個のスピーカーからの音響バランスを調整できるというものだが、ヘッドレストスピーカーを強調するように設定するとまるでヘッドホンをつけているような感じで、特に効果的とは思えなかった。これも盛大なロードノイズを覆い隠そうとする狙いだろうかと勘繰ってしまうほど、まさしくギミックというものではないだろうか。しかもこのサウンドシステムは個別に選択できないパッケージオプションのアイテムだ。ADAS系安全装備からオーディオまでをひとからげにしてひと声40万円余りというのは、あまりにもざっくりとした設定である。G FOURレザーエディションの車両価格は約300万円(ノートの4WDモデル「X FOUR」と比べるとおよそ50万円高)、となると実際の乗り出し価格は400万円台になろう。人に聞かれると口が重くなるレベルである。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
場合によってはパワフル
ノート オーラのエンジンは、ノートと同じく最高出力82PS/6000rpmと最大トルク103N・m/4800rpmを発生する1.2リッター3気筒。そこで発電された電力で駆動するフロントモーターの最高出力/最大トルクは136PS/300N・m、リアモーターは68PS/100N・mというスペックだ。ちなみにノートの4WDモデルはフロントモーターが116PS/280N・mで、リアモーターは同一だ。
FWDモデルに比べると100kg余り車重は増えているのだが、発進加速や中間加速はなかなかパワフルで、料金所からのスタートダッシュでは予想以上にモリモリとスピードが乗っていく。また初代ノートと比べてはるかに強力になったリアモーターによる4WDの恩恵で、直進性も優秀で頼りない挙動を見せない。
ただし、きつい上りの山道や上り坂が続く高速道路などでは途端に元気がなくなってしまうのはどうしたものか。パワーアップしたモーターを搭載しているとはいえ、その力強さを維持できないのはやはりバッテリー容量が限られているe-POWERの宿命ということなのかもしれない。
パワートレインの刷新が急務
乗り心地は時にはっきりとラフであり、ロードノイズなども洗練されてはいないが、その代わりというべきか、山道での挙動は頼もしく安定しており、ボディーにもしっかりした剛性感があるおかげで、ハンドリングには安心感がある。
もっとも前述のように上り坂では元気がなくなるので痛快というには程遠いが、ごく普通のペースで走るぶんには軽快である。とはいえ本体価格でほぼ300万円のコンパクトカーとしては、当然という見方もできる。さらにごく一般的なガソリンエンジン車に対して実用燃費の優位性が小さいこと、特に高速道路を普通のペースで走ってもあまり数字が伸びないことも日産e-POWERの弱点だ。
発電役に徹するエンジンが専用設計ではないとしても、せいぜい15km/リッター程度の燃費(WLTCモード値は22.7km/リッター)では、「e-POWERです」と自慢するほどのこともない。手持ちのエンジンやモーターをやりくりするのもそろそろ限界ということだろう。上質なコンパクトを目指すなら、コスメティクスだけでなく、中身から正攻法で一新することが求められているのではないだろうか。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
日産ノート オーラG FOURレザーエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1735×1525mm
ホイールベース:2580mm
車重:1370kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター最高出力:136PS(100kW)/3183-8500rpm
フロントモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm
リアモーター最高出力:68PS(50kW)/4775-1万0024rpm
リアモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(ブリヂストン・トランザT005 A)
燃費:22.7km/リッター(WLTCモード)
価格:295万7900円/テスト車=360万0656円
オプション装備:特別塗装色<ガーネットレッド×スーパーブラック>(8万2500円)/クリアビューパッケージ<ワイパーデアイサー、リアLEDフォグランプ>(2万2000円)/ステアリングスイッチ+統合型インターフェイスディスプレイ+USB電源ソケット<タイプA×2、タイプC×1>+ワイヤレス充電器+Nissan Connectナビゲーションシステム<地デジ内蔵>+Nissan Connect専用車載通信ユニット+BOSEパーソナルプラスサウンドシステム<8スピーカー、パーソナルスペースコントロール>+ETC2.0ユニット+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+プロパイロット緊急停止支援システム+SOSコール(40万1500円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水 12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面>(1万0285円)/日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(7万2571円)/フロアカーペット<プレミアム:消臭機能付き>(2万9700円)/トノカバー(2万4200円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2488km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:301.4km
使用燃料:20.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.8km/リッター(満タン法)/15.8km/リッター(車載燃費計計測値)
![]() |

高平 高輝
-
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】 2025.10.10 今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。
-
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】 2025.10.9 24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。
-
日産リーフB7 X(FWD)/リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2025.10.8 量産電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」がついにフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、従来モデルとはなにが違い、BEVとしてどうすごいのか? 「BEVにまつわるユーザーの懸念を徹底的に払拭した」という、新型リーフの実力に触れた。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ クーペ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.7 アストンマーティンが世に問うた、V12エンジンを搭載したグランドツアラー/スポーツカー「ヴァンキッシュ」。クルマを取り巻く環境が厳しくなるなかにあってなお、美と走りを追求したフラッグシップクーペが至った高みを垣間見た。
-
ルノー・カングー(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.6 「ルノー・カングー」のマイナーチェンジモデルが日本に上陸。最も象徴的なのはラインナップの整理によって無塗装の黒いバンパーが選べなくなったことだ。これを喪失とみるか、あるいは洗練とみるか。カングーの立ち位置も時代とともに移り変わっていく。
-
NEW
マツダ・ロードスターS(後編)
2025.10.12ミスター・スバル 辰己英治の目利き長年にわたりスバル車の走りを鍛えてきた辰己英治氏。彼が今回試乗するのが、最新型の「マツダ・ロードスター」だ。初代「NA型」に触れて感動し、最新モデルの試乗も楽しみにしていたという辰己氏の、ND型に対する評価はどのようなものとなったのか? -
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】
2025.10.11試乗記新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。 -
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか?
2025.10.10デイリーコラム満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。 -
ホンダ・アコードe:HEV Honda SENSING 360+(FF)【試乗記】
2025.10.10試乗記今や貴重な4ドアセダン「ホンダ・アコード」に、より高度な運転支援機能を備えた「Honda SENSING 360+」の搭載車が登場。注目のハンズオフ走行機能や車線変更支援機能の使用感はどのようなものか? 実際に公道で使って確かめた。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか?