【F1 2022】サウジアラビアGP続報:実力伯仲、フェルスタッペンとルクレールのスリリングな戦い
2022.03.28 自動車ニュース![]() |
2022年3月27日(現地時間)、サウジアラビアのジェッダ・コーニッシュ・サーキットで行われたF1世界選手権第2戦サウジアラビアGP。好調フェラーリに、カーナンバー1をつけたレッドブルが牙をむき、レース終盤までスリリングな戦いが展開された。
![]() |
![]() |
フェラーリ躍進の原動力
開幕戦バーレーンGPで華々しく1-2フィニッシュを飾ったフェラーリ。その躍進の原動力となっているのが、強力になったパワーユニットだ。バーレーンGPのトップ6のうち、ハースとアルファ・ロメオを含めた4台がマラネロ製のパワーユニット搭載車であり、スクーデリアを率いるマッティア・ビノット代表も、「メルセデスやホンダ(現RBPT)との間にあった25PSの差をだいぶ縮めたはず」と、控えめながら自信のほどを語っていたぐらいだった。
さかのぼること4年、2018年シーズンのフェラーリ製パワーユニットは、メルセデスから「最強」の称号を取り上げるほどに強さを発揮した一方、あまりのハイパワー化にレギュレーション違反を疑う声も多かった。実際、2020年シーズン前には、FIA(国際自動車連盟)が内々に調査を進めていたことが明かされ、その詳細は非公開だったためうわさされた燃料流量違反があったかどうかは定かではないが、途端に鈍足になった跳ね馬の激変ぶりをみれば、FIAとの間に“何らかの取引”があったことは明白だった。
2020年、フェラーリは前年のコンストラクターズランキング2位から6位に急落。どん底からはい上がるべく、2021年にはシーズン中にターボやバッテリーなどを改良し、マクラーレンからランキング3位の座を奪ったことは記憶に新しい。この流れに乗って、2022年の好ダッシュを決めることができたといえるだろう。
今季の話題は、グラウンド・エフェクトを採り入れたマシンに集まりがちだが、昨季から大きな変更はないパワーユニットにとって、2022年はとても重要な年。バイオエタノールを10%混合した「E10」と呼ばれる燃料の使用が義務づけられたのに加え、パーツごとに段階的に開発が凍結され、基本的にその仕様のまま2025年まで戦わなければならなくなるからだ。
開幕から息つく暇もなく迎えた中東での2戦目は、カレンダー屈指の超高速市街地コースであるジェッダ。2頭の跳ね馬の力強いいななきが、再びサーキットに響き渡ることとなったのか。
![]() |
テロ攻撃に揺れた週末、予選でフェラーリ1-2を阻んだのは……
2021年12月に開催されたばかりのジェッダでの2度目のF1は、荒れ模様のうちに始まった。金曜日、サーキットに近い石油関連施設で爆発が発生。イエメンの反政府勢力フーシ派が、F1のスポンサーとしても知られるサウジアラビアの国有企業、アラムコの施設をドローンで攻撃したという。関係者が集まりその後の対応を協議した結果、レースウイークは続行されることになったが、コース内外に文字どおりの“きな臭さ”が漂ったことは想像に難くない。
コース上でも波乱は続いた。高速のブラインドコーナーが6km以上も続くジェッダでは、安全性向上のためにコース幅拡張などが行われた。しかし、ひとつのミスが大クラッシュにつながる特性はそのまま。予選ではQ1でウィリアムズのニコラス・ラティフィが、またQ2ではハースのミック・シューマッハーがマシンを大破させ赤旗中断となり、両ドライバーは無事だったものの、ハースは1台を欠場させざるを得なくなった。
さらに予選結果も波乱含みだった。マシンが跳ねる“ポーポシング”に悩む王者メルセデスは、ルイス・ハミルトンがまさかのQ1落ちとなる16位、シューマッハーの欠場により繰り上がっても15番グリッドに沈んだ。またアルファタウリの角田裕毅はマシントラブルで出走できず、最後尾となってしまった。
ポール争いも予想外の結末だった。3回のプラクティスすべてでトップだったフェラーリがP1を取るかと思われたが、2台の赤いマシンの上を飛び越して、レッドブルのセルジオ・ペレスが、215戦目にして初めてのポールポジションを奪ってしまったのだ。わずか0.025秒遅れで2位だったのは前戦ウィナーのシャルル・ルクレール、3位はカルロス・サインツJr.。レッドブルのマックス・フェルスタッペンが4位と振るわなかったのも意外だった。
アルピーヌ勢は好調で、エステバン・オコンが5位、メルセデスのジョージ・ラッセルを間に挟み、フェルナンド・アロンソは7位。アルファ・ロメオのバルテリ・ボッタスも前戦に続いてQ3に進み8位、アルファタウリのピエール・ガスリー9位、そして唯一のハースとなったケビン・マグヌッセンは10位というグリッドとなった。
![]() |
セーフティーカーでルクレール逆転
スタート前のレコノサンスラップ中、角田がパワーを失いストップ。シューマッハーのハースに加えアルファタウリの1台も欠き、合計18台が50周のレースに旅立った。抜群の蹴り出しをみせたペレスがトップを守り、2位ルクレール、3位にフェルスタッペン、4位サインツJr.、5位オコン、6位ラッセルと各車順当にスタートを切った。
ペレスが首位を快走し、10周もすると2位ルクレールとの差を2.3秒に広げてきた。フェラーリはルクレールにペースを上げさせ、1.6秒に縮まった時点でアンダーカットを狙い「ピットに入れ」との指示を出した。
この無線に反応したのが、先頭を走るレッドブルだった。ペレスのマシンはピットレーンに向かうと、それを見たフェラーリはルクレールをコースにとどめ、前方をクリアにした。このスクーデリアの陽動作戦が、結果的に奏功することになる。
16周目、ニコラス・ラティフィのウィリアムズがウォールの餌食となったことでバーチャルセーフティーカー、後にセーフティーカーが出され、ルクレールにとってはチャンス到来。暫定トップだったフェラーリは、ポジションを失わずしてタイヤを替えることができたのだ。これで順位は1位ルクレール、2位フェルスタッペン、3位ペレス、4位サインツJr.、5位ラッセルとなった。
21周目にレースが再開し、サインツJr.が3位にポジションアップ。ただしこれは、まだセーフティーカー中だったピットアウト直後にペレスがサインツJr.を抜いてしまったことに起因しており、ペナルティーを恐れたレッドブルが、ペレスに順位を下げるよう指示した結果だった。
![]() |
![]() |
最後まで続いた接近戦を制し、フェルスタッペン勝利
レース中盤、1位ルクレールがファステストラップをたたき出せば、負けじと2位フェルスタッペンが食らいつく展開が続き、両者は1秒台半ばのギャップをキープしていた。
37周目、マクラーレンのダニエル・リカルドが駆動力を失いコース上に止まり、バーチャルセーフティーカー。立て続けにアルピーヌのアロンソもピット入り口手前でストップしてしまい、41周目まで全車スローダウンラップが続いた。
その徐行が明けると、いよいよルクレールとフェルスタッペンの真剣勝負がスタート。1秒以下でピタリと背後につけたレッドブルは、最終コーナーの飛び込みでトップを奪うも、フェラーリがメインストレートで奪還。開幕戦同様、ルクレールはあえてフェルスタッペンを先行させ、その直後にDRSを活用して抜き返した。
このDRSを駆使した戦い方が、勝敗を決めるファクターとなった。47周目、狙いを定め慎重に最終ターンを立ち上がったフェルスタッペンが先頭に立つと、その座を守らんとファステストラップをたたきつけルクレールをけん制。ルクレールとて諦めたわけではなく、0.6秒という僅差でついていき、そして最速タイムをお返しした。後続同士の接触で出たイエローフラッグはフェルスタッペンに有利に働くも、高速の接近戦はチェッカードフラッグが振られるまで続いた。
フェラーリはコーナーで速く、レッドブルはストレートで強さを発揮。実力伯仲の2台の戦いは、フェルスタッペンに軍配が上がった。開幕戦でまさかのノーポイントだっただけに「優勝争いはきつかったけど、ようやくシーズンをスタートできて本当にうれしい」とチャンピオンは笑顔を見せていた。
一方、ルクレールは0.5秒差で惜しくも2位。「やれることはやった。戦略、ピットストップ、そしてチェコ(ペレス)へのダミーのピットコールと、チームとしてよくやったと思う」と清々と負けを認めていた。
実力伯仲のフェラーリとレッドブルに対し、メルセデス勢はラッセル5位、ハミルトン10位と思わぬ苦戦を続けている。冬のテストから間髪入れずに開催された開幕2連戦が終わったが、8冠王者が難題を克服してくるのはいつになるのだろうか。
次戦は3年ぶりとなるオーストラリアGP。決勝は4月10日に行われる。
(文=bg)