ホンダがモビリティーの電動化を核とした次世代戦略を発表 軽EVやスポーツEVを投入
2022.04.12 自動車ニュース![]() |
本田技研工業は2022年4月12日、電動四輪事業を中心に今後の事業戦略を説明する、記者会見を開催した。
モビリティーの電動化とソフトウエア・コネクテッド領域の強化に傾注
ホンダでは、2021年4月に三部敏宏氏がグループの中核となる本田技研工業の社長に就任。八郷隆弘前社長から受け継がれた「既存事業の盤石化」と「新たな成長の仕組み」に関する施策を推し進めるとともに、企業体制の見直しを含む事業変革に取り組んできた。
特に採算性の低かった四輪事業の体質改善が喫緊の課題となっていたが、今回の記者会見では、グローバルモデルの数を2018年比で半分以下に削減したこと(目標:2025年に3分の1)、2018年比で10%削減という四輪生産コストの目標達成にめどがついたことなどを挙げ、効率化が進んでいることをアピール。同時に、モビリティーの電動化や今後の電動四輪事業に関する取り組み、ソフトウエア・コネクテッド領域の施策、これらの事業を支える財務戦略などについて説明がなされた。
【モビリティーの電動化に関する取り組み】
「2050年にホンダの関わるすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルを目指す」という目標へ向け、多面的・多元的なアプローチを推進。四輪車の電動化だけではなく、あらゆるモビリティーに対して交換式バッテリーを提供したり、水素の活用を推進したりと、マーケットの特性や顧客の用途に応じたソリューションを提示していくと説明した。また、それらをつなげるコネクテッドプラットフォームにより、社会全体の利便性や効率性を高めていくことも目指すとしている。
電動事業強化に向けた組織変更も進めており、これまで「二輪」「四輪」「パワープロダクツ」と、製品ごとに分かれていた「電動商品とサービス、バッテリー、エネルギー、モバイルパワーパック、水素」および「ソフトウエア、コネクテッド領域」に関する組織をひとつにまとめ、新たに「事業開発本部」を設立。組織の機動力を高め、製品クロスドメインでのシナジーを強化していくとした。
【四輪電動事業の取り組み】
2020年代の前半をEV(電気自動車)の黎明(れいめい)期、2020年代後半以降をその普及期ととらえ、当面はマーケットごとに個別の戦略をとっていくとした。
特に日本市場においては、2024年前半に商用の軽EVを100万円台で投入し、その後も乗用の軽EVやSUVタイプのEVを適時投入する予定であると発表。軽EV向けのバッテリーをエンビジョンAESCから調達すると発表した。また、かねてゼネラルモーターズ(GM)との協業を進めている北米においては、GM以外にも生産を行う合弁会社の設立を検討中であること、EV専用生産ラインの新設を計画していることを新たに発表。中国における戦略については新しい発表はなく、バッテリー調達においてCATLとの連携をさらに強化していくことと、武漢に加えて広州にもEV専用工場の建設を計画していること、2027年までに10車種のEVを投入することが確認された。
一方で、EVの普及期にあたる2020年代後半には、マーケットごとにばらばらだったニーズがある程度統合されることを見越し、「グローバル視点でベストなEVを展開する」と説明。2026年に、新開発のハードウエアとソフトウエアの両プラットフォームを組み合わせたEV向けプラットフォーム「Honda e:アーキテクチャー」を採用した大型車を投入すると発表した。なお、中・小型車の分野においては、既報のとおりGMとのアライアンスを通じてガソリン車と同レベルの競争力を持つ量販EVを、2027年以降に北米から投入していくとしている。
これらの取り組みを通し、ホンダは2030年までに軽商用からフラッグシップクラスまで、グローバルで30車種のEVを展開。200万台を超える年間生産を計画している。
【全固体電池の開発】
車載の駆動用バッテリーについては、当面の間は液体リチウムイオンバッテリーを地域ごとに異なるサプライヤーから調達するが、2020年代後半以降は、独自の次世代電池の施策を加速させる。特に力を入れているのが全固体電池の開発で、2024年春には約430億円を投資して実証ラインを建設。2020年代後半に投入されるモデルへの採用を目指すとしている。
【ソフトウエア・コネクテッド領域の取り組み】
モビリティーの電動化に際しては、製品単体ではなく、各製品が連鎖してつながることで、より大きな価値を提供することを追求。製品ジャンルの枠を超えたコネクテッドプラットフォームの構築に取り組み、新しい価値を創出していくとしている。
こうした目標を実現するため、バッテリーをはじめとした電動領域とソフトウエア・コネクテッド領域については、外部からの採用も含めて開発能力を大幅に強化。互いにシナジーを発揮できる異業種間の連携や、ベンチャー投資も積極的に行っていくという。
【財務戦略】
既存事業の盤石化と費用削減の取り組みにより事業体質を改善。ネットキャッシュ残高は1.9兆円(2021年度第3四半期末)と健全な水準を確保しており、また以前より中長期目標のひとつとして掲げている「売上高経常利益率7%以上」という数字も、十分に達成できるものとしている。
今後の投資計画としては、既述の将来戦略を実現するべく、10年間で約8兆円を研究開発費として投入。このうち電動化とソフトウエアの領域では、研究開発費に約3.5兆円、投資に約1.5兆円と、約5兆円を投入するとしている。さらに「新領域」や「資源循環」などを含む「新たな成長の仕込み」に対し、約1兆円の投入を予定。スタートアップ企業などに対して年間100億円規模での出資を行うことで、技術・事業の幅を拡大させていくという。
また必要に応じて外部調達を活用するという考えに基づき、2022年3月に総額27.5億ドルのグリーンボンド(債権)を発行。この資金をEVやFCV(燃料電池車)などの開発・製造へあて、「環境負荷ゼロ社会」実現に向けた取り組みを加速すると説明した。
このほかにも、ホンダは今回の記者会見において2つのEVスポーツモデルをグローバルに投入すると発表。詳細な仕様や投入時期については明らかにされていないが、「操る喜びを電動化時代にも継承し、Honda不変のスポーツマインドや、際立つ個性を体現するようなスペシャリティーとフラッグシップ」であると説明している。
(webCG)