【F1 2022】エミリア・ロマーニャGP続報:レッドブルが敵地で完勝、フェラーリは地元で完敗
2022.04.25 自動車ニュース![]() |
2022年4月24日、イタリアのイモラにあるアウトドローモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリで行われたF1世界選手権第4戦エミリア・ロマーニャGP。今季絶好調のフェラーリの地元凱旋(がいせん)は、最大のライバルであるレッドブルに打ち負かされるという厳しい結果に終わった。
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「スプリント予選」改め「スプリント」へ
2021年にイギリスGP、イタリアGP、サンパウロGPで試験導入された「スプリント予選」は、さまざまな意見を集約して改変され、その名を「スプリント」として今季も引き継がれた。
レース距離の3分の1にあたる100kmを、タイヤ交換義務なしで走るという基本はそのままだが、土曜日に行われるスプリントは「予選」ではなくなり、金曜日のノックアウト方式の予選でポールポジションが決まることになった。つまりスプリントの結果次第では「正式なポールシッターが最後尾から日曜日のレースに臨む」ということもありうるのである。
さらに昨季はスプリント1位に3点、2位2点、3位1点と付与されたポイントも変わり、スプリント勝者への8点を最高に8位まで入賞圏が拡大。一方で、当初は6レースまで広げたいとしていたF1側のもくろみは、チーム間で意見が合わず、結局イモラでのエミリア・ロマーニャGPを皮切りに、オーストリアGP、サンパウロGPの3レースに落ち着くこととなった。
今シーズン最初のスプリントに向けた金曜日の予選は雨が絡み、5回も赤旗が出る荒れ模様。ウォールの餌食となったドライバーのなかには、2024年まで契約延長が決まったばかり、フェラーリのカルロス・サインツJr.も含まれていた。また苦戦が続くメルセデスは、ジョージ・ラッセル11位、ルイス・ハミルトン13位と、2012年日本GP以来となる2台そろってのQ2敗退の憂き目にあった。
ポールポジションを獲得したのは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンで、今季初、通算14回目のポール。ポイントリーダーとしてイタリアに乗り込んだ好調フェラーリのシャルル・ルクレールは、赤旗にも邪魔され2位となった。
赤旗を出すきっかけをつくりながらも上位に食い込んだ幸運なドライバーもおり、マクラーレンのランド・ノリスは最後にコースオフしながらも3位、ハースのケビン・マグヌッセンは4位につけた。
以下、5位フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)、6位ダニエル・リカルド(マクラーレン)、7位セルジオ・ペレス(レッドブル)、8位バルテリ・ボッタス(アルファ・ロメオ)、9位セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)と並び、Q2でクラッシュしたサインツJr.は10番グリッドからスプリントをスタートすることとなった。
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白熱のスプリント、ラスト2周でフェルスタッペンが首位奪還
昨年までのスプリント予選は、オープニングラップ以外では順位変動が少なく、いまひとつ盛り上がりに欠けたところもあったが、新世代のグラウンドエフェクトカーでの争いとなった今年の初戦は、トップ2台が火花を散らすエキサイティングな戦いが見られた。
フェルスタッペンはスタートでホイールスピンが多く2位に落ち、代わってルクレールがトップに。オープニングラップ中にピエール・ガスリーのアルファタウリと、ジョウ・グアンユーのアルファ・ロメオが接触したことでセーフティーカー。5周目の再開からしばらくは、フェラーリがレッドブルを1秒台に従えて周回を重ねた。
ところが終盤になると、快走の跳ね馬のペースが鈍る。反時計回りのイモラ、特に右フロントタイヤのグレーニング(ささくれ)に苦しみだしたルクレールに、カーナンバー1をつけたフェルスタッペンが襲いかかり、残り2周、レッドブルがトップ奪還に成功したのだった。
タイヤに泣いたルクレールは2位。予選で7位と出遅れたペレスは、追い抜きを繰り返してスプリントで3位となり、また前日のクラッシュに落胆したサインツJr.も10位から4位まで挽回。レッドブルとフェラーリが交互に並ぶグリッドになった。
中団勢のトップはマクラーレンで、ノリス5位、リカルド6位。スタートでの遅れを巻き返したボッタスは7位、マグヌッセンはミディアムタイヤの選択が裏目に出て順位を落とし8位でゴールし、ここまでがポイント獲得となった。
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スタートでレッドブル1-2、フェラーリはサインツJr.を早々に欠く
レース前に降った雨で所々ぬれた路面となり、全車浅い溝のインターミディエイトタイヤを履いて、63周のレースに向かった。
スタートで首位をキープしたフェルスタッペンに続いたのは僚友ペレス。レッドブルは早々に1-2フォーメーションを築いたことで、フェラーリに対し終始有利に戦うことができた。一方のフェラーリはといえば、ルクレールがノリスにも抜かれ4位、サインツJr.はリカルドと接触、コースオフしリタイアと、早々から受難続きとなる。
サインツJr.のマシンを片づけるためセーフティーカーが入り、5周目にレース再開。1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ノリス、4位ルクレール、5位マグヌッセン、そして6位には11番手スタートのジョージ・ラッセルが上がっていた。ペレス、ノリスという壁に守られたフェルスタッペンはファステストラップでリードを広げる一方、遅れたルクレールも8周目にノリスをオーバーテイクし、3位に上がってきた。
予報では雨が降るとされていた時間になっても雨粒は落ちてこない。インターミディエイトタイヤは徐々にパフォーマンスを落とし、ドライタイヤへのスイッチが気になり始めた19周目、ペレス、ラッセル、マグヌッセンら多くがミディアムタイヤに履き替えだし、翌周にはフェルスタッペン、ルクレールもその動きにならった。
タイヤ交換後の上位陣は、1位フェルスタッペン、2位ペレス、3位ルクレール、4位ノリス、5位ラッセル。このころからペレスの背後にルクレールがピタリとつけるが、ペレスの巧みな防戦にフェラーリは前を取ることができずにいた。
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フェルスタッペン完勝、ルクレール痛恨のミスで6位
レースは折り返しを過ぎ、トップをひた走るフェルスタッペンは2位ペレスに対して10秒リード、3位ルクレールはペレスの2秒後方をキープしていた。各車これ以上のタイヤ交換は見込んでおらず、したがってドライバーにはタイヤマネジメントという足枷(あしかせ)がかけられていたのだ。
そんな膠着(こうちゃく)状態を打ち破ろうと、50周目にフェラーリが2度目のタイヤ交換に打って出た。ソフトタイヤを与えられたルクレールがコースに戻ると、直後にノリスに抜かれてしまったものの、再び抜き返して3位。それを見たレッドブルも、51周目にペレス、続いてフェルスタッペンがそれぞれソフトを装着して、盤石の1-2を堅持した。
このままの順位でチェッカードフラッグを受けるかと思われた54周目、ルクレールがシケインでまさかのスピンを喫し壁に軽く接触。タイヤとノーズ交換のため予定外のピットインを強いられることになり、一気に9位までポジションを下げた。「欲張りすぎの代償を払うことになった」とは、レース後のルクレールの反省の言葉だが、6位まで挽回できたものの、レース前の40点もの大量リードが大きく減ってしまう、手痛い失敗だったことは言うまでもない。
ライバルの脱落をよそに、フェルスタッペンはペレスを16秒後方に従えて余裕のゴール。スプリントを制し、ファステストラップも記録したことで、この週末だけで34点も獲得したフェルスタッペンは、ドライバーズランキングでルクレールの27点差、2位に躍進。またレッドブルは、ターボハイブリッド規定下で通算2度目の1-2フィニッシュを達成し、コンストラクターズランキングでもフェラーリに11点差まで詰め寄ることができた。
イモラで2年連続3位表彰台となったノリスの後ろでは、メルセデスで力走したラッセルが4位入賞。同じマシンをドライブしながら、このレースをポイント圏外の13位で終えたルイス・ハミルトンとの歴然とした差に、ハイブリッド時代を席巻してきた王者の苦悩が見てとれた。
第5戦は初開催となるアメリカのマイアミGP。決勝は5月8日に行われる。
(文=bg)