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詳しい装備内容が明らかに 新型「フェアレディZ」の狙い目グレードを調査する

2022.05.25 デイリーコラム 佐野 弘宗

平均120万円ほどの値上げだが……

注目の新型「日産フェアレディZ」の正式グレードと価格が、去る2022年4月25日に発表となった。ラインナップそのものは今年初頭に公表済みで、現時点で「NISMO」が用意されない以外は、グレード名ともども、すべて先代最終期のそれと同じ顔ぶれとなっている。6段MT、9段ATとも3グレードずつの構成で、もっとも手ごろな素のフェアレディZと、逆に最上級の「バージョンST」には6段MTと9段ATの両変速機が用意される。そのいっぽうで、中間グレードは変速機によって微妙にキャラ分けされており、MTが「バージョンS」、ATが「バージョンT」となる。

というわけで、ついに全貌が明らかになった新型Zのラインナップと価格は以下のとおりだ。同じグレードなら変速機は問わずに同価格である。MTだからといって安くならないのは、いかにも今どきのクルマっぽい。

  • フェアレディZ(6MT/9AT):524万1500円
  • フェアレディZバージョンT(9ATのみ):568万7000円
  • フェアレディZバージョンS(6MTのみ):606万2300円
  • フェアレディZバージョンST(6MT/9AT):646万2500円

397万9800円~530万8600円(NISMOをのぞく)だった先代最終期と新型の本体価格を同名グレード同士で比較すると、90万円弱の値上げにとどまるバージョンTを別とすれば、平均して120万円強の値上がりということになる。これは日本では“爆上げ”と思われがちだが、クルマ……ましてこの種のスポーツカーとなれば、国産・海外産を問わずに世界商品である。先進運転支援システムや動力性能など、飛躍的にアップグレードした内容を見れば、この程度の値上げは国際的には想定内というほかない。平均所得が一向に上がらない日本経済にとっては悲しい現実だけれど……。

2022年4月25日に価格とグレードラインナップが発表された新型「フェアレディZ」。発売日は6月下旬から同年の夏以降へと変更された。
2022年4月25日に価格とグレードラインナップが発表された新型「フェアレディZ」。発売日は6月下旬から同年の夏以降へと変更された。拡大
最高出力405PSを発生する3リッターV6ツインターボの「VR30DDTT」エンジンは全車共通。
最高出力405PSを発生する3リッターV6ツインターボの「VR30DDTT」エンジンは全車共通。拡大
横浜市の日産グローバル本社に展示されている新型「フェアレディZ」(2022年5月20日現在)。
横浜市の日産グローバル本社に展示されている新型「フェアレディZ」(2022年5月20日現在)。拡大
日産 フェアレディZ の中古車

S+T=ST

それはともかく、新型Zで嬉しいのは基本性能やビジュアル、安全装備などに、グレードによる差がほぼないことだ。車間距離を自動調整する「インテリジェントクルーズコントロール」も、グレードや変速機を問わずに全車標準装備。グレードによって異なるのは、シート(とドアトリム)表皮と電動シート調整の有無、タイヤサイズ(18インチと19インチがある)と、それに伴うブレーキ(上級19インチは前後とも対向ピストンのアルミキャリパーとなる)、そしてメカニカルLSDの有無くらいだ。

また、一部の欧州のライバル車で見られる“オプション地獄”のようなワナがないのも評価したい。メーカーオプションで用意されるのは「BOSEサウンドシステム(8スピーカー)」と「アクティブサウンドコントロール&アクティブノイズコントロール」というパッケージだけで、すべてのグレードで標準装備かオプションで用意される。

フェアレディZのグレード構成の基本となるのは、今回も「S」と「T」である。前者はいわば“スポーツ”で、後者は“ツーリング”を意味する記号と理解すると分かりやすい。「S」がつくグレードには19インチタイヤ(と対向アルミキャリパー)やLSDといった走り系の装備が、対する「T」がつくグレードではレザーコンビの電動シートやBOSEサウンドシステムといった長距離ドライブ向きの安楽装備が標準となる。そして2つの文字を組み合わせた「ST」はどちらの装備もひっくるめたフルトッピング仕様となる。

そのスタイリングと動力性能を気軽に楽しむ向きには、バージョンTが売れ筋になると想定される。同グレードはATに穏やかな18インチタイヤを組み合わせ、シートヒーターやBOSEも標準となる。いっぽうでBOSEと抱き合わせのアクティブサウンドコントロールは豪快なエンジン音を演出する機能である。装備内容を考えると、素のフェアレディZより買い得感が高そうだ。

「バージョンS」は6段MTのみの設定。19インチタイヤやLSDといった走り系のアイテムを標準装備する。
「バージョンS」は6段MTのみの設定。19インチタイヤやLSDといった走り系のアイテムを標準装備する。拡大
「バージョンST」は「バージョンS」と「バージョンT」の魅力を併せ持つ最上級グレード。6段MTと9段ATの両方が設定される。
「バージョンST」は「バージョンS」と「バージョンT」の魅力を併せ持つ最上級グレード。6段MTと9段ATの両方が設定される。拡大

残された時間は長くない

ただ、これほどパワフルな後輪駆動の本格スポーツカーなのだから、それ相応のトラクションとハンドリングを味わうためにもLSDはぜひほしいところだ。というわけで、走りを追求したいエンスーには6MTのみのバージョンSが第一候補となるが、あえてオートマで走りを楽しむなら、LSDがつくのは最上級のバージョンSTだけなので、これを選ぶしかない。これらにはともに大径19インチとアルミ対向キャリパーも自動的につく。

ちなみに、私のような中高年クルマオタクが、足腰が弱る前の最後の回春スポーツカーとして買う場合も、やはり硬派なバージョンSと決め込みたいところだが、中高年だけでなく寒がりの若者にも必須装備であるシートヒーターがT系グレードの電動レザーコンビシートにしか備わらないのが、最大の悩みどころである。MTとシートヒーターの両方が手に入るのは最上級のバージョンSTしかない。

それはともかく、そんな新型Zは予約注文もすでに相当な台数にのぼっていると思われるし、もはや常態化しつつある生産遅れ、さらに今後の騒音や排ガス規制の強化なども考えると、何年間も制限なくオーダーできるとはかぎらない。あまり悠長にかまえていると、いざというときに「買いたいのに買えない」という状況になりかねないことは気に留めておくべきだろう。

(文=佐野弘宗/写真=日産自動車/編集=藤沢 勝)

「バージョンT」「バージョンST」では赤内装(写真)と黒内装から選択可能。
「バージョンT」「バージョンST」では赤内装(写真)と黒内装から選択可能。拡大
「バージョンT」「バージョンST」のシートは本革とスエード調ファブリックのコンビ表皮。その他グレードではファブリック表皮を採用している。
「バージョンT」「バージョンST」のシートは本革とスエード調ファブリックのコンビ表皮。その他グレードではファブリック表皮を採用している。拡大
ダッシュ中央の3連サブメーターは全グレードに標準装備だ。
ダッシュ中央の3連サブメーターは全グレードに標準装備だ。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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