【F1 2022】オーストリアGP続報:ルクレール、敵地でつかんだ3カ月ぶりの勝利
2022.07.11 自動車ニュース![]() |
2022年7月10日、オーストリアのレッドブル・リンク(4.318km)で行われたF1世界選手権第11戦オーストリアGP。今シーズン、速くてもなかなか勝利を重ねられなかったシャルル・ルクレールが、敵地で力強い走りを披露しポディウムの頂点に立った。
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2度目の「スプリント」ウイーク、予選ポールはフェルスタッペン
4戦が詰め込まれた多忙極まる7月のF1。全22戦の11戦目にあたるオーストリアGPに、今季2度目となる「スプリント」が実施された。
まずはスプリントのスタート順を決めるための金曜日午後の予選だ。トップ10グリッドを決めるQ3では、メルセデスの2台が相次いでクラッシュしセッションは2回にわたり赤旗中断。残された2分30秒で繰り広げられたポールポジション争いを制したのは、チームのホームであるレッドブル・リンクで強いマックス・フェルスタッペン。今季3回目、通算16回目の予選P1獲得であった。
その後ろにはフェラーリの2台が続き、中断でタイヤを冷やしてしまったシャルル・ルクレールが2位、前戦イギリスGPで初優勝したカルロス・サインツJr.は3位。わずか0.082秒のなかにトップ3台がひしめく混戦だった。
4番手タイムはレッドブルのセルジオ・ペレスが記録したものの、トラックリミットを越えた違反により予選後にタイムが取り消され13番グリッドに降格。代わってメルセデスのジョージ・ラッセルが4番グリッド、アルピーヌのオコンは第2戦サウジアラビアGPに次ぐ5番グリッドに繰り上がった。
その後ろにはケビン・マグヌッセン、そしてイギリスGPで悲願の初得点となったミック・シューマッハーとハースの2台が並び、さらにアルピーヌのフェルナンド・アロンソ、メルセデスのルイス・ハミルトンときて、10番グリッドにはアルファタウリのピエール・ガスリーがつくこととなった。
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フェルスタッペン、スプリントを制す
一周4.3km、コーナー数はカレンダー最少の10というレッドブル・リンクを24周する100kmのスプリント。だがアロンソのアルピーヌが電気系トラブルで走りだせなかったばかりか、ジョウ・グアンユーのアルファ・ロメオも突如エンジンが止まりグリッドにつけなかったことで2回目のフォーメーションラップが行われ、1周減の23周で争われることとなった。
ターン1に真っ先に飛び込んだのはフェルスタッペン。レッドブルにけん制されるかたちとなったルクレールはチームメイトに抜かれ一時は3位に落ちるも程なくして2位を奪還。3位にはサインツJr.が続くこととなった。
2台の赤いマシンは、ともに首位フェルスタッペンを追うよりも、互いに丁々発止とやりあうことになり、7周目には一瞬サインツJr.が前を取ったが再度ルクレールが抜き返すなどして、結果的にはタイヤを使ってしまうことになった。
フェルスタッペンはスプリント2勝目を飾り8点を獲得。以下1点ずつ少ない点数で8位まで入賞となり、2位ルクレール、3位サインツJr.、4位ラッセルと、トップ4台は予選順位のままだった。
8つポジションを上げてきたペレスは5位でフィニッシュ。オコン6位、マグヌッセン7位、そしてハミルトンは8位となりスプリント最後の1点を手にした。残り3周まで必死にハミルトンを抑えていたシューマッハーは惜しくも得点できず9位。そしてアルファ・ロメオのバルテリ・ボッタスが2つ順位を上げて10位に入ったものの、パワーユニット交換とセットアップ変更によりピットレーンスタートとなり、代わってマクラーレンのランド・ノリスが10番グリッドからレースに臨むこととなった。
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フェルスタッペンを抜きルクレールがトップへ
71周のレースでは、スプリントと違ってフェルスタッペンがタイヤのデグラデーションに苦しみ、フェラーリが見違えるような速さでレッドブルに襲いかかった。
スタートでフェルスタッペンがトップ、ルクレールは2位、そしてサインツJr.は一時ラッセルに先行を許すもすぐに3位に戻った。その後、ラッセルとペレスが並んでターンに入り接触。ペレスはコース外にはじき出されて緊急ピットイン、レース序盤のうちにリタイアすることになった。またラッセルは、この一件で5秒加算ペナルティーを受け、結果的に表彰台を逃し4位でゴールすることになる。
1位フェルスタッペンの1秒以内で隙をうかがっていたルクレールは、10周目にレッドブルを抜きにかかったもののチャンピオンも譲らず。しかしその2周後、ルクレールの気迫ある飛び込みで首位は逆転し、赤いマシンが先頭を走ることとなった。
すでにタイヤが思わしくなかったフェルスタッペンは13周目にピットに入り、ミディアムタイヤからハードに交換。フレッシュなタイヤでルクレール、サインツJr.のフェラーリ1-2を追いかけることを選び、実際、紅の編隊とのギャップは見る見る縮まっていった。
27周目、ルクレールがピットに入りハードに換装。翌周サインツJr.もこれにならい、1位フェルスタッペン、2位ルクレール、3位サインツJr.と、スタート時のポジションに戻ったのだが、この日のフェラーリには“抜き返す力”が満ちあふれていた。
新しいハードタイヤで飛ばすルクレールはトップのフェルスタッペンとのギャップをラップごと、コーナーごとに削り取り、33周目には、再び赤いマシンが鮮やかなオーバーテイクで首位を奪った。
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ルクレール、3カ月ぶりの勝利
2位に落ちたフェルスタッペンはあっという間に3秒以上引き離され、3位サインツJr.に背後を脅かされることになる。フェルスタッペンはたまらず2度目のピットストップを行い、再びハードを装着して3位に落ちた。
フェラーリにも2ストップ目が巡り、50周目にルクレールが、次のラップでサインツJr.がタイヤを替えると再度フェルスタッペンがトップに立ったのだが、53周目、猛然と追い上げてきたルクレールがトップを奪還。フェルスタッペンはこの日3度目の屈辱を味わうこととなった。
そのフェルスタッペンから2位の座を奪おうとファステストラップを更新していたサインツJr.は、57周目に突如白煙と炎を上げて痛恨のリタイア。フェラーリは1-2をみすみす逃した。
これでバーチャルセーフティーカーが出て、ルクレール、フェルスタッペンはミディアムタイヤを求めピットへ。この日負けっぱなしのフェルスタッペンは最後の戦いを挑み、またルクレールもマシンのスロットルペダルが戻らなくなるトラブルに見舞われながらも応戦し、最終的には1.5秒差でフェルスタッペンを退けた。
ルクレールにとっては、4月の第3戦オーストラリアGP以来となる久々の勝利。表彰台に上ること自体久しぶりで、5月の第5戦マイアミGP以来なのだから、この間いかに苦戦していたかがうかがえるだろう。
コーナーでも完全に閉じないスロットルに「怖かった」と語るも、「ペースもあったし、いいレースだった。とてもハッピーだね」と喜びと安堵(あんど)の表情を見せたルクレール。レッドブルのお膝元で飾った今季3勝目から、復活の道が始まる予感がしたレースだった。
そして復活といえば、2位フェルスタッペンから40秒近く遅れて3位でゴールしたハミルトンも同じ。フェラーリやレッドブルとの差はまだまだあるものの、3戦連続の3位表彰台は、確かな手応えが感じられるものだった。
次の第12戦フランスGP決勝は、7月24日に行われる。
(文=bg)