【F1 2022】オーストラリアGP続報:ルクレール&フェラーリの独り舞台 王者はマシンの信頼性に泣く
2022.04.10 自動車ニュース![]() |
2022年4月10日、オーストラリアはメルボルンにあるアルバートパーク・サーキットで行われたF1世界選手権第3戦オーストラリアGP。開幕からの2戦を優勝と2位で終え波に乗るフェラーリ&シャルル・ルクレールが、3年ぶりの同GPで独り舞台を演じた。
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三者三様、3年ぶりのオーストラリアGP
開幕戦として予定されていた2020年のオーストラリアGPが、新型コロナウイルス感染者が出たことで直前に中止されてから2年。世界中で吹き荒れたパンデミックの嵐をくぐり抜け、F1が再びメルボルンに戻ってきた。
この間にコースの一部が改修され、ターン9のシケインが取り除かれたほか、ターン1をはじめいくつかのコーナーは拡幅され、従来のストップ&ゴーの単調なレイアウトから、よりオーバーテイクしやすいように高速化されたのだ。
新装されたアルバートパークでの優勝最有力候補は、今季開幕からの2戦とも絶好調だったフェラーリだ。実際、GPウイークが始まると、バックストレートではひどい“ポーポシング”を起こしマシンが小刻みに跳ねていたものの、「F1-75」はその挙動を許容しながら、中低速コーナーを中心に抜群の速さを見せていた。
俊足の跳ね馬に立ち向かうのは、ストレートや高速コーナーを得意とするレッドブル。しかし、前戦サウジアラビアGPで勝利したマックス・フェルスタッペンは、コース改修の影響からか「RB18」のバランスに苦しみ、タイヤのウォームアップにも手を焼いていた。
フェラーリ、レッドブルから大きく出遅れた8冠王者のメルセデスは、初日から悪戦苦闘。ポーポシングをはじめ今季型「W13」の特性をまだつかみかねており、メルボルンにもあえてアップデートパーツを持ち込まず、走り込みながらマシンの根本の理解に努めざるをえなかった。
三者三様、3年ぶりのオーストラリアGPは、連日記録的な数の大観衆が集まる盛況ぶり。パンデミック中の数々の制限と、鬱々(うつうつ)とした日々からの解放を印象づける、お祭り騒ぎの週末となった。
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3戦連続の一騎打ち、予選ではルクレールがポール
予選では、過去2戦と同様にフェラーリとレッドブルの一騎打ちとなるも、Q3で最速タイムをたたき出したのはルクレール。だが今回は僅差ではなく、2位フェルスタッペンに0.286秒という大きな差をつけ、バーレーンGPに次ぐ今季2回目、通算11回目のポールポジションを獲得した。
レッドブルのセルジオ・ペレスが予選3位。過去2戦で苦しんだマクラーレンは、ランド・ノリスが4位につけ、ルイス・ハミルトン5位、ジョージ・ラッセル6位のメルセデス勢の前からスタートとなった。久々の母国GPに気合十分のダニエル・リカルドはマクラーレンを7位に導き、アルピーヌのエステバン・オコンは8位。フェラーリのカルロス・サインツJr.は、Q3中の赤旗中断でアタックを諦めざるをえず、最後のラップでは冷えたタイヤでミスし、9位に沈んだ。
アルピーヌのフェルナンド・アロンソは、キレのある走りで上位を狙ったものの、油圧系トラブルでギアチェンジできずコースオフし壁にヒット、10番手からスタートすることに。また角田裕毅のアルファタウリは中団勢のなかでもまれ、チームメイトのピエール・ガスリーの2つ後ろ、13位だった。
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ルクレールがフェルスタッペンを率いてリード
過去4回のオーストラリアGPでは、ポールからの勝者はなし──そんなジンクスをものともせず、ルクレールは58周の独り旅に出かけるのだった。
スタートでトップを守り首位快走を続けたルクレールと比べ、もう1台の赤いマシンをドライブするサインツJr.は受難続きだった。9番グリッドから鈍い出だしでポイント圏外にダウン。焦りもあったか、3周目にはコースオフ、スピンを喫してリタイアとなってしまった。
グラベルにつかまったフェラーリを救出するため、バーチャルセーフティーカー、程なくしてセーフティーカーが出動し6周目まで先導。レースが再開すると、1位ルクレールと、スタートから2位をキープするフェルスタッペンの力の差がいよいよ明らかになりはじめ、15周目を過ぎるころにはルクレールのリードは6秒にもなっていた。
フェルスタッペンの左フロントタイヤはグレーニング(タイヤの“ささくれ”による一時的なパフォーマンス低下)が起きておりペースが上がらない。レッドブルは19周目にフェルスタッペンをピットに呼び、ミディアムタイヤからハードにチェンジ。スタートで出遅れるも3位を取り戻していたペレスも、21周目にハードに履き替えた。
先頭のルクレールはといえば、スタートタイヤのミディアムでまだ快調に飛ばし、23周目にタイヤ交換を済ませると、1位を譲ることなくコースに戻った。
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2010年以来のグランドスラム、ルクレール完勝
優勝争いに絡む気配はまったくなかったものの、善戦したのはメルセデス勢だった。ハミルトンはスタートで3位にジャンプアップ、ラッセルも5位に駒を進め、両車ともレースではペレスと接近戦を演じるまでパフォーマンスを上げてきていたのだ。
シルバーアローの2台で明暗が分かれたのが、セーフティーカーのタイミングだった。24周目、過去2戦をコロナ感染で欠場していたセバスチャン・ベッテルのアストンマーティンがクラッシュし、セーフティーカーが再び出動すると、まだタイヤ交換をしていなかったラッセルがピットに入り3位に上昇。既にピットストップ済みだったハミルトンは6位に落ちてしまった。
1位ルクレール、2位フェルスタッペン、3位ラッセル、そしてタイヤ無交換の4位アロンソ、5位ペレス、6位ハミルトンといった順位で27周目にグリーンフラッグが振られると、フェルスタッペンがルクレールの横に並んでターン1を目指すも、フェラーリが首位をキープ。この日トップ2台が最も接近した瞬間だったが、跳ね馬の走りに一切ほころびはなく、ルクレールは再び着々とリードタイムを増やしていった。
2位でよしとすることもできたフェルスタッペンに、開幕戦に続きまたも悪夢が訪れた。39周目、「変な液体の匂いがするぞ!」と無線で叫ぶワールドチャンピオンに、チームはマシンを止めろと指示を出し、3戦目にして2度目のリタイアが決まったのだ。
ライバル不在のルクレールは、最後の仕上げにとばかりに「ファステストラップ狙いにいこうぜ」とチームをあおり、その案に乗り気でないピットをよそに、最終周に最速タイムを記録。ポール・トゥ・ウィン、ファステストラップ、そして全周リードと、フェラーリにとっては2010年以来となる「グランドスラム」を達成し、さらにルクレールのポイントリードは34点にまで拡大した。
フェルスタッペンの脱落で2位をつかんだペレスだったが、チームの状況からすれば、その表情は浮かないものにならざるをえなかった。
メルセデス移籍後初の表彰台となる3位で終えたラッセルは、これでドライバーズランキング2位に上昇。さらにハミルトンも4位でゴールしたことで、苦戦中のシルバーアローは、なんとフェラーリに次ぐコンストラクターズランキング2位につけている。
こうした予想外の展開も、レッドブルの信頼性のなさからくるもの。2位走行中に2回リタイアしたフェルスタッペンが取りこぼしたポイントは実に36点。フェルスタッペンのランキングは6位である。仮に速さでフェラーリに勝てたとしても、完走できなければ意味はないのだ。
次の第4戦はイモラでのエミリアロマーニャGP。決勝は4月24日に行われる。
(文=bg)